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木村拓哉が司令塔、二宮和也がフォワード、その真意を『検察側の罪人』の原田眞人監督が語る

2/19(火) 17:30配信

Movie Walker

木村拓哉と二宮和也が、互いの正義を懸けて対立する熱き検察官を演じ、話題となった映画『検察側の罪人』のBlu-ray&DVDが、2月20日(水)よりリリースされる。メガホンをとったのは、『関ヶ原』(17)など、骨太な演出に定評がある原田眞人監督だ。舞台挨拶で「サッカーで言えば、木村さんが司令塔でボランチ、二宮くんがフォワード」と表現していたが、その真意とは?原田監督に単独インタビューし、2人との現場を振り返ってもらった。

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原作は、「犯人に告ぐ」などで知られる雫井脩介の同名小説。木村が演じるのは、主人公のエリート検察官・最上毅で、二宮は最上をリスペクトする新人検察官・沖野啓一郎に扮した。2人はある老夫婦殺人事件を担当するが、最上は複数の容疑者たちの中から、過去に因縁のある松倉重生(酒向芳)に的を絞り、強引に自白させようとする。沖野はそんな最上の行き過ぎたやり方に反発していく。

■ 木村拓哉=司令塔、二宮和也=フォワード、その意味とは?

まずは原田監督がサッカーのポジションに例えた木村たちの特性について、もう少し聞いてみることに。原田監督は、木村と二宮というタイプの違う役者が競演したからこそ、良い化学反応が生まれたと話す。

「木村さんは視野が広く、常に作品全体のバランスを見て、サジェスチョンをしてくるタイプ。そういう意味で司令塔だなと。つまり、木村さんは考えに考え抜いて、そのなかで生まれたアドリブを出してくる。でも、二宮くんは違う。彼は感性が良くて天才肌。現場でぱっと思いついたことをやるので、何回もリハーサルをするよりも、現場でぽんと出てきたものを使うほうがいい。2人は経験値の違いもあるけど、それぞれ特徴があっておもしろかったです」。

確証もないのに、松倉を執拗に追い詰めていく最上。沖野が最上に指示され、松倉に自白させようとする取り調べのシーンには息を呑む緊迫感がある。沖野はいきなり豹変し松倉に暴言を浴びせる。「リハーサルは、沖野がキレる直前までのシーンしかやりませんでした。そこで一旦止めて、その後、すぐ本番としてカメラを回しました。一連の流れで撮ると、そこでアドリブもいくつか出てきますから。二宮くんは、そういう瞬間力のある演技がいいです」。

今回の事件ではなく、最上と因縁のある過去の事件について、無神経な供述を始める松倉。その発言を別室で聞いていた最上は、鬼のような形相を浮かべて部屋を飛び出していく。そのタイミングは、原田監督が思っていたよりも早かったそうだ。「あの時、最上の感情の高まりからすれば、出て行かざるを得なかったのかなと。あのシーンは本人もものすごく構えてやっていたと思うけど、目が半分開いてないかのような表情をしたんです。ああいうところは、いままでにない“木村拓哉”だったんじゃないかと。彼はサービス精神旺盛だから、すべてのことをやろうとする。もちろん、なにもやらないほうがいい場合もあるけど、周りから期待され、そこに応えなきゃといけないとも思っている。そこが見ていて楽しかったです。今度はどんなことをやってくれるのかなと思って」。

撮影後、原田監督は改めて、木村の言葉の選び方について感心したそうだ。それは単にボキャブラリーが多いという意味ではないようで、「彼のインタビュー記事をあとから読んだ時、彼にはライターのような発想力があると思いました。例え話や比喩、暗喩を巧みに使っていて、非常に興味深い。

現場での彼はもちろん、撮影後の彼を見て、ますます好きになりました」とうれしそうに話してくれた。

木村と二宮は、カメラが回ってない時の過ごし方も全く対照的だったという。「木村さんは常に最上としてすごしていますが、二宮くんは本番直前までゲームをやっていて、本番になると、パッとそのキャラクターになれる。その切り替えには舌を巻きますし、柔軟性もすごい。そこは『駆込み女と駆出し男』での戸田恵梨香と満島ひかりにも言えたことで、満島は何か月もその役を背負っていくけど、戸田は現場でも直前までゲームをやっていた。その違いがおもしろいというか、違ったほうがおもしろい。同じ画面にいると、ケミストリーが生まれ、お互いに刺激し合えるから」。

■ 「本当の映画監督は殺されても死なない」という持論

基本的に自分が作りたい作品の構想を練り、自ら脚本を手掛けてメガホンをとる、というのが原田流の映画スタイルだ。とはいえ、原田監督が手掛ける映画は硬派な社会派ドラマが主流で、製作に難航するケースも少なくはない。なかには莫大な予算がかかる重厚な時代劇もあり、何度も頓挫しそうになりながら、ようやく形にできたプロジェクトも多い。

「木村さんにしても二宮くんにしても、役がおもしろければ、役者さんはついてきてくれます。僕は作品を作りながら、そういう人間関係も構築してきたつもりです。できればこのあと、30年くらいはそうやって映画を作っていきたいと思う。そうなると、100歳になっちゃうか。マノエル・ド・オリヴェイラみたいに」と、ここで破顔一笑する原田監督。ポルトガル出身のマノエル・ド・オリヴェイラは享年106歳で大往生した監督だが、晩年もコンスタントに映画を撮り続け、105歳で『レステロの老人』(14)を第71回ヴェネチア映画祭に出品していた。

現在69歳の原田監督だが「映画を撮るうえで、難しいシーンを面倒くさいからカットしようかなと考えるようになったらおしまいだなと。敢えて大変なシーンにもトライしていかないといけない」と、まだまだ監督としてのバイタリティは健在だ。

とはいえ、産みの苦しみも伴うのが映画作り。自分が望む映画を作ろうと思い立ってから、幾多の困難を乗り越えていくために必要な鋼のメンタルを、監督はどうやって維持しているのか。原田監督は「僕は基本的に楽天的で、なんとかなるだろうと思っています。いままで何度もヤバい状況を経験してきましたから」と、穏やかな笑みを浮かべる。そして、もう一つ、監督の心の支えとなっているのは、映画監督としての先達の生き様だと教えてくれた。

「一流の映画人たちの体験談や失敗談が英語本でたくさん出ているので、僕はそれを読んでいます。エリア・カザンやウィリアム・ゴールドマンなど、彼らの失敗談ほど勇気づけられるものはないです。一流の人がいかにして失敗を乗り越えてきたか。あの人もこんなんに大変だったのだから、自分も頑張ろうと思えます。翻訳されているものもありますが、英語で読むと、一層ニュアンスがわかっていいんです」。

さらに、原田監督は「本当の映画監督は殺されても死なない」という持論を述べる。「自分が作りたい映画の脚本を書き、監督もする映画監督で、自殺した人は基本的にはいないと思っている。もし、いたとしても、僕はそれは本当の映画監督じゃないってことだと思う。自分が作りたいものがある場合、絶対に自分で自分を殺したりはしない。『死にたい』という発想を持った段階で違うと思う」。

また、原田監督もいつか自伝を書きたいとのこと。実は、『突入せよ!「あさま山荘」事件』(02)の時に、ブログを書いていたことがあるそうだ。「でも、いろいろ書いたらそこで反発をくらったんです。いろいろなものを乗り越えていくために情報集めは必要だけど、リアルタイムで書いちゃいけないなと思いました(苦笑)。だから100歳になる寸前にいろいろなことを書き、後世の方々の参考にしてもらいたい」。

自伝を書く前に、ぜひ新たな野心作の脚本を書いてほしい、とせつに願うところだが、実際、すでに新作の準備中で多忙を極めているという原田監督。まだ作品の詳細は解禁前ということで、今後の発表が待ち遠しい。

最後に、『検察官の罪人』についてこうアピール。「日本人は法廷ものが好きですが、検察官を主役にした名作は1本もなかったと思います。今回、木村さんとニノと一緒になって、20年も30年も残る作品を作ったつもりなので、撮影の裏話も含めて楽しんでほしい」。(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

最終更新:2/19(火) 17:30
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