ここから本文です

「AI人材がいません」「とりあえず事例ください」 困った依頼主は“本気度”が足りない AIベンチャーの本音

3/6(水) 7:00配信

ITmedia NEWS

 「日本企業のAI活用について物申す!」――AIベンチャー Shannon Lab代表取締役の田中潤さんとAIベンチャーで働くマスクド・アナライズさんで、AI開発の“リアル”に迫る本対談。

AI開発者であり数学研究者の田中潤さん

 前回の記事では、「依頼主に時間を奪われるAIベンチャーの苦悩」「失敗を恐れすぎる大企業」「怪しいAIベンチャーの見破り方」について語っていただきました。

 後編となる本記事のテーマは「AI人材不足に嘆くなら世界に目を向けよう」「すごい技術=ビジネスになるわけではない」「他社の成功事例をまねても意味がない」です。2019年以降のAI開発の在り方や、どういった点に注目してAI導入を進めていくべきかが分かる内容になっていると思います。

AI人材不足に悩むなら「世界に目を向けよう」

―― 日本では、AIベンダーとユーザー企業共に「AI人材不足」といわれ、各社が激しい人材獲得競争を繰り広げています。優秀なAI人材を迎えるには、給与面での優遇なども必要になっているようです。AIを学べる大学の学部や大学院も増えていますが、まだ供給が追い付いていない状況です。

田中 アメリカや中国、インドなどではここ2~3年でAI 関係の学部が新設され、大学でAIを学んだ人材が増え続けて供給過多になってきています。自著の「誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性」を書いた2017年ごろに「新卒で年収1500万円クラス」と表現していた世界のトップ校出身のAI人材が、いまでは年収700~800万円くらいの感覚です。そういった海外の人材を採用すればいい。ここ2年で状況が大きく変わってきています。

マスクド 海外のAI人材を日本企業で採用するのはハードルが高くないですか?

田中 人事部が、エンジニアや研究者のスキルについて分からないことが問題なんじゃないですかね? 「GitHub」(世界中の開発者がプログラムのコードを保存、公開しているWebサービス)にアップされているソースコードを見れば実力は分かります。

マスクド 採用面接でエンジニアがOKを出したのに、人事が技術的な所を分かっていなくて面接を落とされてしまった人の話も聞きます。AI人材を採用する体制が整っていない。

田中 世界に目を向けると良い人材はたくさんいますし、日本市場で小さなパイを奪い合う必要はないと思いますよ。

マスクド しかし、日本企業が社内の規定を無視してそういった新しい人材に高額な報酬を出せるでしょうか。

田中 トップ中のトップ人材はいまだに高給ですが、トップ校出身で新卒800万円だとどうでしょう。良い人材はいると思いますよ。弊社ではGitHubで見つけた海外の優秀な学生に声を掛けて月10万円~ぐらいで手伝ってもらっていますよ。いままで遠隔で手伝ってくれていたトップ校のインド人の子が弊社に来ますし、ジェフリー・ヒントン教授(世界的に著名なディープラーニングの研究者)に学んでいた学生が手伝ってくれていたこともあります。

マスクド 世界に目を向けないと損ですね。

―― ところで、「AI人材」といわれる人にはどのような能力が求められるのでしょうか。

マスクド ビジネス系人材と技術系人材の橋渡しをする必要があるので、数学だけじゃなく国語力も欠かせないでしょう。求められるハードルはとても高いので、給料が高くて当たり前なんですよね。弊社も複数名のチームを組んで対応していて、苦手なところは得意な人に任せるようにして、ようやく回せてます。

田中  AIってディープラーニングという技術がすごいと思われてますけど、GitHubを見たらコードは大体ありますし、(コードの内容が)分からなかったら本人に聞けばいい。それよりもビジネス化に関していえば、ディープラーニングで学習させるデータの質の方が精度への影響は大きいですよ。

 最先端技術は研究レベルで1%の精度を競っている場合が多い。現状を踏まえると、そういった部分は海外のオープンソースに頼み、日本ではデータの前処理に力を入れた方が現実的だと思います。

マスクド どれほどデータが大事だと言っても、アルゴリズムだディープラーニングだと言ってる人はいますね。プログラムで物が動くという旧来の情シス発想の人は多い。

田中 そうですね。例えばTwitterで投稿された文章をAIで解析することを考えてみましょう。そこに辞書にない顔文字が入っているとうまく文章を認識できないので、文章から顔文字を取り除くか、顔文字を学習データとして登録するかしないといけません。

 でも学習データを作るのが大変で、どのように顔文字と定義するかを決めないといけない。いかにして顔文字を顔文字として認識するアルゴリズムを考えるかは、それだけで1つの研究になります。前処理は最先端技術ではないですが、こういった細かいアルゴリズムの複合体で、ディープラーニングにデータを読み込ませるためにはすごく重要で精度に大きく影響します。前処理で自動化できない部分に関しては、手作業でデータを精製することもあります。

 ディープラーニンングの新しい技術は、論文が発表された数カ月後にGitHubに上がってたりするので、それを使えばいいと思います。

マスクド 結局、求める能力って突き詰めれば「目利き」になっちゃうんですよね。AIに限らず、特定の状況でどういう選択肢を取るのが最適かを考える上で、どれだけ引き出しがあるか。それがすごく大事なんです。

 例えば手書き文字の解析で言うと、田中さんであれば全ての手書き文字に対応できるようにするにはどうしたら良いか研究目線でアプローチをするでしょう。僕であればビジネス目線で「業務フロー自体を変えてはどうか」とアプローチをすると思います。

1/4ページ

最終更新:3/6(水) 7:00
ITmedia NEWS

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事