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小学生から始めるLGBT教育…こんなときどうする?

3/7(木) 9:45配信

リセマム

 近年話題にのぼることが多い「LGBT」に関するさまざまな問題や議論。入試の出願書類から男女の記入欄をなくした地方自治体についてニュースとなったことも記憶に新しい。

 日本の小学校では「LGBT」に関する知識やダイバーシティ教育についてどのように子どもたちに教え取り組んでいるのだろうか。大阪市内の小学校で首席(主幹教諭)を務める川村幸久氏に学校でできる配慮と保護者へのアドバイスを聞いた。

目次
◆LGBTって?
◆少しでも気になることがある場合は
◆学校への相談例
・トイレに不安がある場合
・体育の授業(水泳学習含む)やその更衣に不安がある場合
・健康診断やその更衣に不安がある場合
・宿泊行事に不安がある場合
・そのほか、学校生活でのさまざまな場面で不安がある場合
◆保護者の方へ
・子どものカミングアウトに関して
・相談窓口


LGBTって?

 近頃、LGBTという言葉が、新聞やテレビなどのメディアでも多く取り上げられるようになり、この言葉を一度も聞いたことがないという人は少なくなってきたのではないでしょうか。LGBTは、「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の略で性的少数者(セクシャルマイノリティ) を表す言葉のひとつとして使われています。性的少数者は、LGBTの4つのいずれかに属することだけをいうのではなく、「男女どちらにも恋愛感情を抱かない」「自分自身の性を決められない」「自分自身の性が分からない」なども指しています。

 一般的に、自分の性に対する違和感を覚えるようになるのは思春期が多いと言われていますが、すでに小学校低・中学年の児童期に同性の友達との違いに違和感を覚えるようになることも多いようです。これまでの学校教育の中では、便宜上、外見上の男女を前提に、授業や行事が進められてきましたが、性的志向を理由にいじめを受けて不登校傾向になるという事案が起きているということがわかり、小学校現場では、LGBTや多様な性に対する教育機会を行うために「性の多様性を考える研修」「習慣・常識を見直す研修」が多く行われるようになってきました。

少しでも気になることがある場合は

 子どもたちの小学校入学・進級時のストレス・不安感が、不登校傾向を引き起こす要因の一つであるということが「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(文部科学省)」から明らかにされているように、4月、5月のお子さんのようすを見ていて「いつもと何か違うな」「なぜか、急に学校に行きたがらないようになったな」などと少しでも感じることがあれば、お子さんのようすを見つつ、ご家庭できちんと話を聞く場・機会をもつようにしてください。もしかしたら、「スカートを履きたくない」「日記や作文を書く際に、“私”と書くことに抵抗を感じる」「体育でみんなと一緒に着替えることに抵抗を感じる」など、性別違和の兆候が見られたことやそのトラブルが原因かもしれません。

 保護者の方だけでの判断が難しい場合は、学校や専門機関に相談するようにしてください。「このようなことで、学校に相談してもいいのかな?」と思わないでください。「子どもが安心して、楽しく学校生活を送ることができるようにする」ことが第一です。子どもは毎日の生活の中の大半を学校で過ごすのですから、保護者の方にとっては、どんな些細だなと思うことでも、子どもにとっては深く心を傷つけていることかもしれません。担任の先生には言いにくい場合は、ほかの学年の先生や、これまでに担任をもっていただいた先生、養護教諭、教務主任の先生、管理職に相談することもできます。

学校への相談例

 次に挙げていることは学校の実態・子どものようすなどによるもので一概にすべてのことを配慮してもらえる、検討してもらえるとは限りませんが、子どもの不安を取り除くために相談する価値があることだと思います。


トイレに不安がある場合

・トイレの1つを「子ども教職員も誰でも使うことができるトイレ」に変更してもらえないか
・体調不良や特別な事情がある場合は、教職員用のトイレを使用することができるようにしてもらえないか
・休み時間にトイレに行きにくい場合は、給食の準備時間や特別教室に移動するタイミングなど、ほかの友達と違う時間に先生の許可を得て、トイレに行くことができないか(※)
・休み時間にトイレに行くことができなくて、授業中どうしてもトイレに行きたくなった場合、先生に許可を得てトイレにいくことができないか(※)
・車いすやオストメイトを使用する子どもも使用するユニバーサルデザインを取り入れたトイレを、誰もが使うことができるようにしてもらえないか
(※ただし、先生の許可なしにトイレに行くことは安全面で許可できないと考えられます)




体育の授業(水泳学習含む)やその更衣に不安がある場合

・学校指定の水着に、ラッシュガードなどの露出が少ないものを選択できるようにしてもらえないか
・学校指定の水着ではなくても、デザインや性能等、一定の基準がクリアしていれば着用を認めてもらえないか
・体操服や体育帽子を男子・女子で区別しないようにしてもらえないか
・教室での更衣に抵抗がある場合は、保健室または個室で着替えてもよいことにしてもらえないか(場合によっては、トイレで着替えるのも可)




健康診断やその更衣に不安がある場合

・たとえ男子だけ、女子だけでも、上半身が裸になる診察は、パーテーションで区切ったり、個室にするなどの配慮をしてもらうことはできないか
・発育測定は、体操服を着用して男女混合で行うことはできないか
・上半身が裸になる時間をできるだけ短くするように工夫してもらえないか
・身長や体重等を読み上げないで、記録してもらうことはできないか
・学校での発育測定を受診しにくい場合は、別の医療機関で同様の検診を受けることを認めてもらえないか
・学級での発育測定を受診しにくい場合は、ほかの誰もいない時間帯の検診を実施してもらうことはできないか




宿泊行事に不安がある場合

・友達と一緒にお風呂に入りたくない場合は、時間をずらし、1人では入れるようにしてもらえないか
・希望者には先生の部屋のシャワーなど個室のシャワーの使用を許可してもらえないか(生理中の子どもと同じように対応する)
・友達と一緒の部屋で寝ることができない場合は、救護室や先生の管理している部屋で寝ることを許可してもらえないか
・友達と一緒の部屋で寝ることができない場合は、事前に誰と同じ部屋だったら安心できるということを確認し、配慮してもらうことはできないか




そのほか、学校生活でのさまざまな場面で不安がある場合

・学校便りや学年便りでLGBTの情報(正しい理解について・相談窓口)を発信してもらうことはできないか
・LGBTの子どもに対して、学校で配慮可能な事項を整理し、入学説明会や学級懇談会などで全保護者に発信してもらうことはできないか
・学級代表や委員会、クラブ、運動会の応援団等を決めるときに、男子2名、女子2名というような決め方ではなく、学級で4名募集というように、男女の比率を決めないで実施してもらうことはできないか
・男子も女子も、同じ敬称で呼ぶようにしてもらうことはできないか(「さん」等)
・体操服で登校可能にしてもらうことはできないか
・LGBTのことを正しく理解する取組みや学習を全学年で実施してもらうことはできないか
・LGBT関連の本を学級や図書室においてもらうことはできないか
・LGBT関連の本を保護者の方に向けての研修会をPTAなどから開催してもらうことはできないか
・歌いたいパートを男子、女子で決めずに、希望を尊重してもらうことはできないか
・卒業式の呼びかけのセリフを決める際に、男子、女子で決めずに、希望を尊重してもらうことはできないか
・日記や作文の際には、男子は「僕は…」、女子は「私は…」ではなく、個人の書き方を尊重してもらうことはできないか



保護者の方へ

 今回は、性別違和の兆候が見られたことに対する学校で配慮できる(検討してもらえる)可能性があるものを場面ごとに紹介しました。私たち、現場の教員としては、保護者の方に相談してもらえることは非常にありがたいと感じるはずです。担任ひとりでは、100%子どものことを理解することができないからです。万が一、子どもが「担任の先生には内緒にしておいて欲しい、言いたくない」という場合でも、周りの先生方に相談しておくことが望ましいでしょう。

 全国の小学校の中では、現状では、学校で取り組むことができていないことが場合によってはあるかもしれません。しかし、先生たちも保護者の方から相談を受ければ、真摯に受け止め、可能な限り、すぐに改善の方向に動くはずです。

 子どものカミングアウトに関しては、

・子ども自身が発する言葉を大切にし、最後まで聞く
・正しい知識を伝える
・今の小学校という規模のことではなく、世界での現状を伝える
・勝手にセクシュアリティを決めない
・相談してくれてありがとうという感謝の気持ちを伝える
・誰がこのことを知っているのか、誰には保護者から話(相談)をしてもよいか
・困っていること、変えて欲しいことがないか
・専門機関の連絡先を伝える

ということを心掛けて、聞くようにしましょう。

 また、学校に相談する前に、専門機関に相談するのも一つの手かもしれません。下記の相談窓口は、全国共通のものですが、自治体相談窓口がある都道府県もあるようです。誰もが自分(私)らしく生きること、互いの違いを認め合える学校を目指して、不安に感じていることを抱え込まず、まずは第一歩を、動き始めてみませんか。

<相談窓口>

◆文部科学省 24時間子供SOS相談ダイヤル
電話番号:0120-07-8310
受付時間:24時間
 子どもたちが全国どこからでも、深夜・休日を含めて、24時間いつでもSOSをより簡単に相談することができるよう、全都道府県および指定都市教育委員会で実施。原則として、電話をかけた所在地の教育委員会の相談窓口に接続される。

◆法務省 全国共通人権相談ダイヤル(みんなの人権110番)
電話番号:0570-003-110
受付時間:平日午前8時30分から午後5時15分
 差別や虐待、パワーハラスメントなど、さまざまな人権問題についての相談を受け付けている。電話は、最寄りの法務局地方法務局につながる(インターネットによる相談も可)

川村 幸久(かわむら ゆきひさ)
平成15年 大阪教育大学卒業。大阪市学校教育研究会体育部体つくり運動領域部所属、全国小学校体育研究 連盟 事務局次長。大阪市内の2学校での教諭経験を経たのち、平成20年4月1日に大阪市堀江小学校へ着任。平成28年度からは、同小学校にて主幹教諭にあたる「首席」を務めている。小学館「三教育技術」や明治図書「楽しい体育の授業」での執筆経験をもつ。平成30年度からは一年間、小学館「三教育技術」学級経営のコーナーの監修・執筆を務める。

<参考文献>
・先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら/遠藤まめた(合同出版)
・LGBTってなんだろう?--からだの性・こころの性・好きになる性/藥師実芳・笹原千奈未・古堂達也・小川奈津己(合同出版)
・LGBTの子どもに寄り添うための本: カミングアウトから始まる日常に向き合うQ&A/ダニエル オウェンズ=リード・クリスティン ルッソ・ 金成希 訳(白桃書房)

《リセマム 川村幸久》

最終更新:3/7(木) 9:45
リセマム

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