ここから本文です

働き方改革で残業が減らない理由 ちっとも進まない「経営者改革」

3/8(金) 7:30配信

ITmedia ビジネスオンライン

 政府が進める「働き方改革」が「働かせ方改革」になっていると、常々公言してきましたが、そのひずみがあちこちで表面化し始めたように感じています。

【笑顔で生き生きと働く女性】

 経営者対象の講演会では「生産性向上」という言葉がまるで呪文のように繰り返され、働く人たちからは「残業が減らない」「持ち帰り残業が増えた」「賃金が上がらない」「非正規には恩恵なし」「女性が育児で辞めなくなったのはいいことだけど、女性たちに甘えが出てきた」「雇用延長で働かないおじさんが増えた」など、聞こえてくるのは不満ばかりです。

 「部下に残業させられないから、結局、私が負担することになってしまいました。正直、しんどいです」

 もともと残業代がつかない管理職の人から、こういったぼやきを聞くことも増えてきました。

 2月に公開された日本能率協会のアンケート調査でも、7割の人が「働き方改革実感なし」と回答。年齢別では、20代が61.5%であるのに対し、40代は69.0%、50代では75.0%と、年齢が高いほど否定的な意見が増えていました。

 もちろん中には「働き方改革、最高!!」とご満悦の人もいるかもしれません。しかしながら、何のための働き方改革なのか? 働き方改革のゴールとは何なのか? それらが周知の事実として共有されない限り、ひずみが生じて当たり前です。

 そもそも「働き方改革」とは、働く人一人一人が「生き生きと働ける社会」、一人一人が「能力を発揮できる社会」、一人一人が「仕事って、いいね! と思える働き方ができる社会」になることで、人間の付加価値が引き出され、結果として「生産性」が高まること。

 ところが実際には、「長時間労働の削減」が働き方改革の代名詞になってしまいました。

「長時間労働削減」は働き方改革ではない

 もちろん生き生きと働くには、心身ともに健康であることが必要不可欠です。朝から晩まで仕事、仕事で、睡眠時間もままならない状態では、体も心も壊れます。どんなにやる気にあふれる人でも、どんなに仕事好きの人でも、人は人。「生き物」である以上、休息は必要不可欠です。

 「長時間労働の削減」は働き方改革ではなく、法律の問題。1日8時間、週40時間を定めた「労働基準法」を機能させるべく、36協定を見直し、インターバル規制を入れ、罰則を徹底し、そもそもの労働基準法の目的に立ち返ればオッケー。

 敗戦後の日本で、「労働者は奴隷ではない」という世界基準のメッセージを真摯(しんし)に受け止め、それまでの1日10時間労働を8時間労働に短縮し、「世界と同じように働く人たちを保護しなきゃ」と先人たちが知恵を絞り考え、成立させた72年前(1947年)に立ち戻ればいいだけのお話です。

 労働基準法の第1章第1条には、次のように書かれています。「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」

 それにもかかわらず、日本の企業経営者は違反、違反、違反を繰り返してきました。その間、何人もの人たちが大切な命を奪われました。

 有給休暇の世界基準は「まとめて取る」ことで、国際労働機関(ILO)は、原則として有給休暇の分割取得を認めていない。この話は以前書きましたが、敗戦の焼け野原で戦後復興中の日本がそのまま受け入れるのは非現実的だったため、「やむにやまれぬ事情で、1日単位の分割取得というおかしな制度をあえて導入した」敗戦後の制度を、今なお、「当たり前のように続けている」のです。(関連記事:「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景)

1/3ページ

最終更新:3/8(金) 7:30
ITmedia ビジネスオンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事