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V6三宅「羅生門」盛況も 歌舞伎座“ジャニーズファン集め”の難関

3/9(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 市川海老蔵がジャニーズのV6の三宅健を相手役に招いた、六本木歌舞伎「羅生門」が上演中だ。演出は映画監督の三池崇史。

 もともと歌舞伎は女性客が圧倒的に多いが、今回は95%以上が女性で、男性は私を含めて数えるほどしかいない。三宅健のファンで客席の大半が占められていた。松竹とジャニーズは、滝沢歌舞伎を通して蜜月にある。ともに「男だけの舞台」なので、親和性があるといえばある。

 歌舞伎公演に歌舞伎役者ではない俳優が出ることはいくらでも前例がある。コクーン歌舞伎には笹野高史が欠かせない存在だ。笹野は演技力を必要とされての出演だが、三宅健は集客力を期待しての起用で、これは見事に成功。

 だが、この「羅生門」をきっかけにして、三宅ファンに歌舞伎座へも足を運んでほしいと考えているとしたら、それは無理と思う。

 タイトルが示すように、芥川龍之介の短編を原作としているが、設定を借りただけで、ストーリーはオリジナル。黒澤明の映画とも関係がない。

 海老蔵が「市川海老蔵」として普段着で登場するシーンもあり、三宅健とアドリブで掛け合う。一種のファンサービスでもあるが、この演劇全体が、どこからが虚構なのか、分からないメタフィクションの構造になっている。

 六本木歌舞伎は海老蔵が「新しい歌舞伎」を模索するなかで始めたプロジェクトのひとつで、ずっと三池崇史と組んできた。1作目は宮藤官九郎が脚本を書き中村獅童が共演し、これもメタフィクション的要素があった。2作目はリリー・フランキーが脚本を書いた「座頭市」で、寺島しのぶが共演した。女優が出る点では歌舞伎らしくなかったが、きわめて正統な演劇だった。

 第3弾「羅生門」はというと、見ている間は楽しい。だが何も残らない。そういうのを目指しているのだろうから、それはそれでいい。それぞれの見せ場もたっぷりとある。

「人間のエゴ」がテーマだと海老蔵はプログラムにある対談で語っているが、そういうテーマ性は何も感じなかった。その設定自体がメタフィクションの一部なのかもしれない。

(作家・中川右介)

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