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【点描・永田町】安倍首相は「猛獣使い」か「ポチ」か~ノーベル平和賞「推薦」の波紋~

3/10(日) 19:02配信

時事通信

 トランプ米大統領が安倍晋三首相からノーベル平和賞に推薦されたと自慢したことが、内外に波紋を広げている。

【図解】内閣支持率の推移

 国会では野党が「恥さらし」などと首相を批判し、与党から「米国べったり」との不満も漏れる。国際社会でも首相とトランプ氏の親密な関係は有名だが、今回の推薦騒動で「やはりトランプ大統領の“ポチ”(愛犬)だった」とも揶揄(やゆ)されている。

 その一方で、「安倍流の強(したた)かな“猛獣使い”外交」と評価する向きもあり、永田町でも格好の話題となっている。

 事の発端は、トランプ氏が2月15日の記者会見で「安倍首相からノーベル平和賞に推薦された」と口を滑らせたこと。

 首相からの推薦状に「日本を代表して謹んであなたを推薦する」と書かれていたと、得意満面で説明した。欧米メデイアはこのニュースに飛びつき、週末を迎えていた日本政界にもざわめきが広がった。

 首相は週明け18日の国会審議で野党側から真偽を質(ただ)されると、「ノーベル委員会は推薦者と被推薦者を50年間は明らかにしないので、コメントは差し控えたい」とした上で、「事実ではないと言っているのではない」と、間接的な表現で推薦を認めた。

 野党側は中距離核戦力(INF)全廃条約破棄などのトランプ外交を指摘して、「恥ずかしいほどの対米追従で国益を損なう」などと激しく攻撃した。

 首相は「(大統領は)北朝鮮の核・ミサイル問題の解決に向けて果断に対応している」と反論するとともに、野党側の口を極めたトランプ批判には、「米国は日本にとって唯一の同盟国であり、一定の敬意は払うべきだ」などと声を荒らげた。

 政府側では、河野太郎外相が19日の記者会見で「米朝のプロセスがさらに進み、北朝鮮が非核化、ミサイル放棄を実現した場合には、トランプ氏は平和賞に値するのではないか」と首相を擁護してみせた。

 ただ、自民党内では「国際社会では、日本がトランプ氏にいいように利用されていると受け止められかねない」(長老)との外交上の懸念も相次ぐなど波紋は収まらない。

 昨年6月の歴史的な米朝首脳会談の前後から、トランプ氏はたびたび「ノーベル平和賞」に言及している。今回の発言も、「お得意の自慢話の延長線上にある」(外務省幹部)とみる向きは多い。

 外務省筋によれば、米朝首脳会談後に米側から「推薦してほしい」との打診があり、首相がそれに応じて推薦状を送ったというのが経緯とされる。ちなみに、ノーベル賞の推薦は各国元首や国会議員、大学教授、受賞経験者らに資格があり、毎年2月が締め切りとなっている。

 首相の推薦理由について、トランプ氏は記者会見の中で「日本の領土を飛び越えるようなミサイルが発射されていたが、今は突如として日本人は安心を実感しているからだ」と解説した。

 これには、安倍政権に批判的な大手紙が、コラムで「ノーベル賞級のお追従」と首相の対応を非難した。しかし、首相支持派とされる別の全国紙は「日本の国益のために、同盟関係にある超大国の力を徹底的に利用するのは当然」と擁護するなど、国内メディアの反応も分かれている。

 外交専門家からは、貿易交渉などで日米関係が厳しさを増していることを踏まえ、「日米両首脳の極めて親密な関係が、危機を防ぐ最大の武器」(経済産業省幹部)との声も出る。

 首相サイドも「首相は自由貿易など重要な外交戦略でトランプ氏と異なる立場を堅持しており、追従などしていない」と反論する。

 確かに今回の騒ぎは「首相の国際的な存在感を示した」(官邸筋)ことにもなり、「ばつは悪いが、安倍外交の強かさは評価される」(自民長老)との冷静な見方も広がる。

(政治ジャーナリスト・泉 宏)

〔時事通信社「地方行政」3月4日号より〕

最終更新:3/10(日) 19:02
時事通信

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