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島尾敏雄「魚雷艇学生」の心、淡々と【あの名作その時代シリーズ】

3/12(火) 17:00配信 有料

西日本新聞

特攻艇「震洋」の格納壕。その面前には、青い海と新緑の木々が広がっていた=鹿児島県・加計呂麻島の呑之浦

 生ぬるい風がほおをなでた。木々の新緑が群青色の水面に深い影を映している。鹿児島県加計呂麻島・呑之浦(のみのうら)。奄美大島の南端、古仁屋(こにや)港を出発して十五分。船は静寂を縫うようにその入り江に入っていった。

 あまりに原初的な光景に胸がざわつく。「ここで百八十人以上の兵隊たちが戦闘の準備をしていたなんて、考えられない」。海上タクシーという名の舟に同乗してくれた、同県瀬戸内町立図書館長の澤佳男さん(57)は、そうつぶやいた。

 五メートルほどの特攻艇「震洋(しんよう)」。ベニヤ張りの木の葉のようなモーターボートは、先端に炸薬(さくやく)を詰め敵艦を囲むようにぶつかり、散る。非人間的なこの舟を五十隻ほど集めた部隊、第十八震洋隊が、ここ呑之浦にあった。隊長は島尾敏雄。十二の格納壕が、波打ち際に深く暗い口をぽっかり開けている。 本文:2,424文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:3/12(火) 19:00
西日本新聞