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「平成炎上史」よみがえるイラク人質事件 いけにえ求めた自己責任論 「ルールや規則」の権威で叩く人たち

3/20(水) 7:00配信

withnews

平成という時代を振り返るとき、「炎上」という言葉とともに頻発するキーワードがある。その一つ「自己責任」が顕在化するのは2004年の「イラク日本人人質事件」だった。自殺者が最多の3万4427人に達した翌年、「失われた10年」の直後。「自己責任」という「生贄(いけにえ)」を求めたのは、他でもない不安定な立場に追いやられた若者たちでもあった。(評論家、著述家・真鍋厚)

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「殺されても仕方がない」

昨年10月、フリージャーナリストの安田純平さんが、40か月にわたるシリアでの監禁生活から解放され、無事帰国した。

その後巻き起こったネット上でのバッシングはまだ記憶に新しい。「金儲けのために日本に迷惑をかけるな」「自作自演だろう」などと攻撃的なコメントが相次いだ。

批判的な意見の主なものをまとめると、「国の忠告を無視して危険地帯に赴いたのだから、国が助けに行く必要はないし殺されても仕方がない」である。

バックパッカーの青年斬首に「自業自得」

このような言説は、2004年の「イラク日本人人質事件」において、一部の政治家やマスコミなどの煽りを受けて急速に拡大した。

間を置かずして日本人のバックパッカーの青年が拉致され、斬首された事件では、ネット上で「自業自得」「勝手に死ね」などの投稿が後を絶たず、いわゆる「自己責任論」は「どこか突き放したような冷酷さ」を増していった。

これは歴史的な視点から見ると、とても興味深い現象だ。

「臣民的価値観の残存」の影響

筆者は以前、このような「自己責任論」の噴出について、「自己責任論」という見方自体が間違いで、「臣民的価値観の残存」が影響しているのではないかと推測した。

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恐らくこれは「自己責任論」なんかではない。〝お上〟の意に反した言動を取るものは「非国民」であり、国家はこのような連中から日本国民としての諸権利を奪っても構わないとする、「臣民的メンタリティ」のなせる業と考えるのが自然だ。かつての天皇制国家はすでに消滅したのだから「臣民」は存在しなのだが、未だ「臣民的価値観」が思考・行動に影響を及ぼしているという意味で、エルヴェ・ル・ブラーズとエマニュエル・トッドのいい方(『不均衡という病 フランスの変容 1980-2010』石崎晴己訳、藤原書店)に倣(なら)えば「ゾンビ臣民」と評することができるだろう。この「ゾンビ臣民」は相当に根深いものであると認めざるを得ない。――真鍋厚『不寛容という不安』(彩流社)


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誤解のないように言い添えておくと、この場合の「ゾンビ」は、ホラー映画でお馴染みのキャラクターのことではなく、アンデッド(undead=死に切っていない)ということを表現している。

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最終更新:3/20(水) 7:52
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