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『時をかける少女』はなぜ、愛されているのか

3/12(火) 6:31配信

dmenu映画

筒井康隆が1965年から翌1966年に執筆した小説『時をかける少女』は、これまでに何度も映像化されている。その最初は1972年のTVドラマ「タイム・トラベラー」(NHK)。以降、約10年おきに、その世代にふさわしい女性アイドルを主演に起用して、コンスタントにドラマ化されている。

一方、映画化作品はこれまでに4本。そのいずれもが、映画としてまったく違う個性を発揮しており、筒井によるSFジュブナイル(筒井によれば「元祖ラノベ」とのこと)の奥深さを体感させてくれる。ここでは、4つの映画『時をかける少女』にスポットを当ててみたい。

大林宣彦監督版(1983年):叙情性あふれるラブストーリー

まず、筒井のこの小説があらためて脚光を浴びるきっかけになったのが、大林宣彦監督による1983年の作品だ。前年、薬師丸ひろ子に続く映画アイドルとしてデビューしていた原田知世は本作で映画初主演を果たし、自ら歌った主題歌も大ヒット。一躍、ブレイクを果たした。

大林監督は女優を輝かせる名手であり、『時をかける少女』も優れたアイドル映画なのだが、そこには留まらない普遍性のある映画的魅力が充満している。未来からやってきた転校生と出逢ったことから、タイムリープを体験することになった女子高生の物語。設定こそSFだが、学園ドラマでもあり、少女の内面を見つめたラブストーリーでもある。

大林監督はもともと実験映画出身であり、ギミック性高めの映像テクニシャン。ときにそのクセの強さは、作品によっては好き嫌いを招くことにもなるが、本作では監督の故郷、尾道を舞台にしていることもあり、すべてが叙情性へと昇華した。

不気味な描写も、おどろおどろしいムードもあるのだが、そうしたホラー・テイストは、可憐な原田知世の像と、尾道の観る者の深層心理を愛撫する「憧憬としての場所」効果によって中和され、むしろスパイスとして機能している。

この現象は、かなりの個性派である作家、筒井康隆があえて少年少女向けのジュブナイルを手がけ大成功を収めた経緯に、結果的には重なるものがある。

大林監督にはやはり尾道を舞台にした『転校生』(このタイトルは『時をかける少女』のキーマンである未来からの使者の「予告」だったのかもしれない)という名作があるが、映画愛が強い作品のため、『時をかける少女』ほどの一般性はない。

『時をかける少女』にはなんと言っても、誰でも楽しめる「間口の広さ」がある。本作で「土曜日の実験室」「ラベンダーの香り」という呪文めいたフレーズの虜になった少年少女(現在は中高年)はかなりの人数だった。

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最終更新:3/12(火) 6:31
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