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春待つ動物園 休園日の裏側をリポート 秋田・大森山動物園

3/14(木) 17:04配信

毎日新聞

 東北・秋田にも春が訪れた。秋田市の大森山動物園が3月16日に通常開園するのだ。雪国の秋田では厳冬期になると日中ふぶくことも珍しくない。積雪と寒さから、厳冬期の大森山動物園は休園日が多くなる。記者はそんな休園中の冬の動物園を取材する機会に恵まれた。動画と写真を交えリポートしたい。【森口沙織/秋田支局】

【動画で見る】休園中の秋田・大森山動物園の舞台裏

 ◇雪国ならではの変則的な開園スケジュール

 大森山動物園は1973年に開園した秋田市の公立動物園だ。2月末時点でアミメキリンやアフリカゾウなど97種574点の動物が飼育されている。特徴的なのが、やや変則的な開園スケジュール。園が日本海沿岸部の標高約65メートルの丘にあるため、冬になると、海側から直接風雪が吹き付ける。そのため、12月に入ると1月上旬までは完全に約1カ月間休園し、そのあとは土日祝日のみの開園に切り替わる。2月下旬から3月中旬まで再び休園し、3月中旬からは12月まで無休で開園する。私は12月中旬と3月上旬に計4日間、休園中の園を取材した。

 ◇休園中、キリンやゾウは健康維持の訓練に汗

 雪が積もって来園客のいない園はかなり静かだった。時折遠くから動物の鳴き声が聞こえてくる。昨年12月、飼育員の柴田典弘さん(45)に案内され、アミメキリンの「カンタ」(雄、8歳)と「リンリン」(雌、13歳)のいるキリン舎を訪れた。

 暖房のきいたキリン舎で柴田さんが細かく切ったリンゴを与えながら、笛や手を使って合図を送ると、リンリンは用意した台に足を乗せたり、体を柴田さんの方に寄せたりして応えた。これは、採血や伸びたひづめを削るといった動物の健康に欠かせない作業を、スムーズに行うための訓練だという。

 柴田さんは「キリンはデリケート。来場者がいない休園中に集中してトレーニングを行うのです」。また同園は休園中もオルゴールのBGMが流れ続けている。日々業務にいそしむ職員がものさみしくならないように、との気遣いの意味もあるというが、キリンにとっても大事なものだという。

 神経質なキリンは普段と同じBGMが流れ続けていることがリラックスにつながるという。BGMが止まる夜間は、キリン舎では小さくラジオを流し続ける。風の音や鳥のさえずりが常に聞こえる自然界の環境にできるだけ近づける工夫という。

 トレーニングをするのはアフリカゾウも一緒だ。キリン舎の隣に位置するゾウ舎では、飼育員の西方理さん(44)の「回れ」「右(足)」などという声に、ゾウの「リリー」(雌、推定30歳)が大きな体を器用に操り、その場で回転したり、右足を上げたりしていた。

 昨年3月に来園したユキヒョウの「リヒト」(雄、2歳)は、昨年秋ごろからよく似た訓練をはじめ、同園の猛獣類ではじめて麻酔なしのワクチン接種と採血に成功したという。このほかアシカも毎日同じような訓練に励んでいるという。



 ◇カピバラは風呂に入ると健康に

 日本海からの風を受ける同園は真冬には日中でも氷点下となる。南米などの暖かな水辺に生息するカピバラは寒さが苦手。秋田市に本格的な降雪が始まった12月上旬、見物客のいないカピバラの「湯っこ」(風呂)が開催された。湯っこはカピバラがお湯につかる姿が愛らしいとのことから同園の人気イベントで、春の開園以降も、ゴールデンウイークごろまで毎日行われる予定だ。

 獣医師の飼育員、小川裕子さん(42)によると、湯につからせると血行も良くなり、体の汚れもとれカピバラの健康にも良いのだという。約20度に設定された屋内から、屋外展示場へと通じる窓が開くと、カピバラたちはゆっくりと外へ出て、積もった雪を踏みしめながらいそいそとお湯に向かった。体の汚れが流れ出たのか、みるみるうちにお湯は真っ茶色になった。

 ◇休園中に集中工事

 通常開園まで1週間を切った3月11日。同園の事務所「ミルヴェ館」の周辺では、道路の舗装工事がピークを迎えていた。園長補佐の三浦匡哉さん(47)によると、道路に水たまりができるようになり、開園後に来場者の不便にならないように工事を決めたという。休園期間は園内の施設や道路、展示場の修理などにも充てる大事な時間だという。

 三浦さんによると、この休園中に約30の展示場で、老朽化した動物の立ち台や小屋を修理したり、清掃したりしたという。「環境を整えて開園したときに、お客さんにより楽しんでもらいたい」と話す。

 同園を訪れた人たちを楽しませるものの一つが、園内の展示場に掲示されている飼育員手製の看板だ。動物にまつわる知識を紹介し、年度ごとにテーマが変わる。今年のテーマは「苦労した話」。3月、事務所で黙々と看板作りをしていたのは、チンパンジーの飼育員、斎藤勇さん(58)。紙に書いた原案をもとに、発泡スチロールの板に鉛筆で下書きをし、色ペンで清書していく。何を書くかは各飼育員に任され、斎藤さんは「(看板は)歩きながら見るから、あまり情報を詰めすぎてもだめ。ぱっと見て、『へえ~』と思ってもらえるものを、と心がけている。これが毎年一苦労なんだ」と話す。看板の文字には子どもも理解できるよう、全ての漢字に読み仮名がふってあった。

 ◇一冬過ごしたリリーとだいすけ、恋に発展か?

 春は動物の新たな命が生まれる季節でもある。同園が待望しているのは、アフリカゾウの赤ちゃんの誕生だ。日本動物園水族館協会によると、加盟施設のうち、ピークの85年に69頭いたアフリカゾウは、2017年末時点で30頭に。繁殖例は84年から13件しかないという。野生で絶滅の危機にあるアフリカゾウは、ワシントン条約で取引が厳しく制限されており、同協会は11年の試算で、30年には国内のアフリカゾウは7頭にまで減ると予測している。

 昨秋、大森山動物園は仙台市の八木山動物公園との間で雌どうしを交換して繁殖を狙う「ブリーディング・ローン」に踏み切った。八木山動物公園からリリーを大森山動物園に迎え、代わりに雌の「花子」(推定30歳)を送り出したのだ。大森山動物園で、花子と雄の「だいすけ」(推定30歳)は約30年間、暮らしたが、子どもは生まれなかった。

 柵で区切られてはいたものの、同じゾウ舎で初めて冬を一緒に過ごしたリリーとだいすけ。この3月、ゾウ舎の掃除の間、2頭は雪が解けた屋外展示場に出されると一緒に干し草を食べたり、時折鼻を伸ばして相手を確かめ合ったりしていた。三浦さんは「開園すれば、壁を隔てない屋外で一緒に過ごす時間が多くなる。(ゾウの繁殖は)簡単ではないが、見守っていきたい」と期待を募らせる。

 大森山動物園は3月16日に通常開園し、12月までは無休。開園時間は午前9時~午後4時半(入園は午後4時まで)。16日は午前8時50分からオープニングセレモニーが行われ、女優で、同園名誉園長の高木美保さんらがあいさつを行う予定。先着50組には缶バッジやクリアファイルなど園のオリジナルグッズのプレゼントがある。

最終更新:3/14(木) 17:10
毎日新聞

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