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【マンションが危ない(16)】 空家急増で悲鳴 引き取り手がいない

3/14(木) 12:31配信

ニュースソクラ

しわ寄せは管理組合に

 マンションのスラム化への引き金は、空室の増加だ。

 今年の夏ごろまでに5年に一度の「住宅・土地統計調査」(総務省)が発表される。おそらく、前回2013年の調査データよりも、さらに空き家率は上がっているだろう。どんな数値が出てくるか、空恐ろしい。所有者が高齢になって転居、もしくは亡くなったあとも売却や賃貸されない空き家が急増している。

 前回の調査で、空き家総数820万戸、空き家率13・5%と発表され、大反響が起きた。それで「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」の制定へと結びつくのだが、「人口減少・超高齢化」が根底に横たわっているので空き家対策は容易ではない。社会保障の持続性が危機的なように、住宅を親から子へ、子から孫へと住み継ぐのに赤信号が灯る。

 では、分譲マンションの空き家(空室)に焦点を絞ろう。

 マンションの空室率(三か月以上空室となっている戸数の割合)は、国交省データでは2・4%。低く感じられるが、完成年次別にみると、1974年以前に竣工したマンションでは空室率10%超の物件が増えている。69年以前になると15%超の物件が増加しており、築後40年が空室化の境目のようだ。

 築後40年超のマンションは、2017年末現在、全国に72万9000戸あり、10年後に185万戸、20年後は352万戸へと増える。いまは空室が目立たなくても、建物の老朽化と、住民の高齢化という「ふたつの老い」が追い打ちをかけ、誰も住まない、灯の消えた住戸がマンションを蝕むのは明らかだ。

 マンションの空室問題は、一戸建てとは異なる難しさをはらんでいる。相続人が離れて暮らしていて、相続したマンションの立地が悪い、つまり資産価値が低いと厄介だ。売却や賃貸に出すには住戸のリニューアルが不可欠だが、なかなか進まない。お金をかけて手を入れても設定できる家賃や、売買価格が安くて採算に合わず、住戸は不良資産へ。相続人は、使わない住戸によけいな出費はしたくない。管理費や修繕積立金の滞納が始まるのである。

 相続人と連絡がとれれば、まだいいほうだ。

 単身世帯で親類縁者がどこにいるか分からず、管理組合に「緊急連絡先なし」と伝えている人が亡くなるとまわりは頭を抱え込む。

 大阪府下の団地の元理事が、苦労に苦労を重ねて空室状態の相続住戸を競売した経緯を、こう語る。

 「そこは夫婦世帯で子どもはいませんでした。ご主人が亡くなったときに奥さんに名義変更していればよかったけど、そのまま。奥さんも亡くなり、相続人がいない。親戚を探し回って、ご主人の甥っ子が管理すると言ったが、遠方で管理費も、修繕積立金も払わず、差し押さえでも何でもしてくれ、と。相続放棄です。そこからご主人側の親類にひとりずつ当たって相続放棄してもらい、奥さん側も潰していったら、一人行方不明者がいた。その人がもしも現れていたらどうだったか……。行方不明のままでね。何十万円も払って家庭裁判所に相続財産管理人の弁護士を選んでもらい、交渉を重ねて空室を競売にかけた。競売価格は520万円で管理費、積立金の滞納分は回収できましたが、7年かかりましたよ」

 ひと口に相続放棄といっても、簡単ではない。相続人が多すぎて、やっさもっさとやり合って話がまとまらず、宙ぶらりんで放置されてしまうこともある。

 「7年もかけて処理できたのは、定年退職して時間があったからです」と元理事長。彼は元銀行員で会計の処理や、財産の管理に通じていた。シルバー人材の力を発揮したのだ。

 単身世帯で「天涯孤独」を貫いた人が遺した住戸の処分も大変だ。

 管理組合団体の幹部は、次のように言う。

 「一般人では調べ尽くせない来歴の故人もいるんです。本当に誰一人、連絡が取れない人は、もう役所に頼むしかない。結局は警察ですよね。警察は独自の情報網で係累を探し出してくるけど、遠い地方や外国に住んでいて、そっちで処分してくれ、という縁者が多い。最後は競売になりますが、相続財産管理人を選んで、交渉して、あちこち走り回って……管理組合にかかる負担は大きいですよ」

 マンションの空室問題は、旧日本住宅公団(現UR都市機構)や大小さまざまな不動産会社、建設会社が「土地利用の高度化」「都心居住」といった国策のもとに住戸供給を続けた結果、生じている。社会の構造的問題に起因するのだが、その空室の受け皿は管理組合しかない。

 一戸建て空き家なら「空き家法」を適用し、倒壊の危険があれば自治体が「特定空き家」に指定して所有者(相続人)を探しだし、指導、勧告できる。所有者が解体の命令に従わなければ「行政執行」で除去できる。相続人不明の空き家の場合は、財産管理人を置いて「略式代執行」で除去可能だ。敷地は売却できる。

 ところが、マンションは、全室空き家になり、前回コラムで紹介した野洲市のマンションのように廃虚にならなければ、空き家法は適用されない。仮に半分以上が空室になっても、住民が住んでいれば管理組合が空室問題に対処しなくてはならないのだ。

 マンション管理の根本方針を定めた「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」の指針は「マンションを社会資産として」保全し、管理するよう示している。マンションを社会資産と位置づけながら、構造的な空室問題の受け皿は管理組合しかない。しわ寄せは、すべて住民へ。これは制度的な不備、空白ではないか。

 このままマンションの空室問題を放置したら、団塊世代の超高齢化にともなって相続物件がどっと溢れたとき、大騒動になるのではないだろうか。

最終更新:3/14(木) 12:31
ニュースソクラ

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