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【中国ウォッチ(9)】 米中首脳会談、4月下旬の一帯一路サミット後か

3/15(金) 11:32配信

ニュースソクラ

中国が失敗恐れ開催に慎重 次期外相に親ロ派が有力

 3月5日から16日まで、北京では年に一度の全国人民代表大会(国会に相当)が開かれているが、先週末の8日、会場の人民大会堂に衝撃が走った。現場で取材中の中国経済紙記者が証言する。

 「地方から来た代表(国会議員に相当)たちは連日、いかに地方経済が破綻に陥っているかを、切々と訴えています。だが中国中央テレビは、『経済バラ色』のようなことを語る大臣や高官たちの公式会見ばかり報道する。

 そんな中、8日に中国税関総署が、2月の貿易統計を発表したのです。中国の貿易総額は、前年同月比で13・8%も低い2663億5670万ドルでした。特に輸出は、前年同期比20・7%減の1352億3720万ドル! いくら春節(旧正月)があったとはいえ、2割も減少するなんて、これは明らかに中国経済の危機的状況を表しています。中国では貿易統計だけは、相手国にも統計があるだけに、正確なのです」

 中国の貿易額が減少している最大の原因は、貿易戦争を続ける最大の貿易相手国、アメリカとの貿易が、急速にしぼんでいることだ。今年1月~2月で、アメリカとの貿易額は、前年同期比19・9%減の764億7910万ドル。内訳は、輸出が14・1%減の592億9510万ドル、輸入が35・1%減の171億8410万ドルである。中国の経済紙記者が続ける。

 「中国経済悪化の大きな原因が、アメリカとの貿易戦争にあるのは明白なので、国民は一刻も早いアメリカとの和解を求めています。しかし、貿易戦争を最終決着させるための習近平主席とトランプ大統領との中米首脳会談の日程が、一向に出て来ないのです。こちらでは、『ハノイの決裂』の余波という見方が強まっています」

 3月8日、アメリカ国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は、FOXテレビの番組で、米中首脳会談に言及し、「フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘で、3月下旬か4月上旬にあるかもしれない」と語った。

 だが、北京は沈黙を続けている。中国経済紙記者が続ける。

 「周知のように2月28日、ハノイでトランプ大統領と金正恩委員長の米朝首脳会談が決裂に終わりました。しかしながら、同様に習近平主席が訪米して、『フロリダの決裂』はできません。仮にもしそのような事態になれば、習近平政権の威信は一気に地に堕ち、『中南海』(北京の政治の中心地)で政局になるでしょう。

 つまり中国指導部は、習近平主席のメンツを最優先で考えているのです。習主席の訪米は、習主席の威信を高める『4月のイベント』の後にしようということでしょう」

 「4月のイベント」とは、4月下旬に北京で開催を予定している「第2回『一帯一路』国際協力サミットフォーラム」のことだ。これは2017年5月に第1回を開き、日本からは二階俊博幹事長や今井尚哉首相首席秘書官らが参加したが、およそ2年ぶりに2回目を開く。3月8日に、年に一度の記者会見を行った王毅外相は、こう説明している。

 「第2回『一帯一路』国際協力サミットフォーラムは、今年北京で行う外交のハイライトであり、世界が注目する国際イベントだ。習近平主席が開幕式で基調講演を行い、首脳会議も主催する。他に高位級会議や分科会、ビジネス活動なども行われる。

 今回のフォーラムの特長は3点ある。第一に、格がさらに上がるということだ。出席が予定される国家元首や政府首脳の人数は、明らかに前回を上回るだろう。第二に、規模がさらに大きくなる。100以上の国から数千人の各界の代表が集まる予定だ。第三に、活動内容がさらに豊富になることだ。12の分科会に分かれ、初めての企業家大会を、商工界のマッチングのために行う。 

 今回のフォーラムのテーマは、『一帯一路を共に作り、美しい未来を切り拓く』。『一帯一路』の協力による発展を、質の高いものにしていく。われわれは開放された協力を堅持し、経済のグローバル化を支持する。経済のグローバリズムを維持、保護し、手を携えて開放型の世界経済を構築するのだ」

 このように、『一帯一路』で改めて世界を北京に引きつけ、米トランプ政権にプレッシャーをかける。その上で米中首脳会談に臨んだ方が、米中貿易戦争を解決するのに有利だと考えているのだ。

 話は少しそれるが、北京では王毅外相の交代説が、にわかに飛び交っている。北京の西側外交関係者が語る。

 「王毅外相は、5年の任期を終えた昨年3月に交代する予定でしたが、異例の留任を果たし、かつ国務委員という外相より一級上のポストも兼任するようになりました。それで、これまた異例のことですが、今回の全国人民代表大会で外相を下り、国務委員に専念するのではとの噂が出ているのです。

 次期外相の呼び声が高いのが、楽玉成副部長です。江蘇省出身の55歳で、外交部ではロシアンスクールで、駐ロシア大使館公使を経て、駐カザフスタン大使、駐インド大使を歴任。プーチン大統領やメドベージェフ首相、ラブロフ外相らロシア首脳と緊密な関係を築いています。何より、中国外交部の2大巨頭である楊潔チ中央政治局委員(前外相)と王毅外相の両方と、関係が良好なのがポイントです」

 もしも楽玉成新外相が誕生したら、中国はますますロシアとの関係を緊密にし、アメリカに対抗していくという構図になることは間違いない。

 ちなみに、米中貿易戦争は今年の全国人民代表大会のホットな話題の一つになっていて、大臣クラスの会見でも、必ず関連の質問が出る。例えば、3月9日には、「中国のライトハイザー」と呼ばれる王受文・商務部副部長は、こう述べた。

 「中米が互いに関税を増加しあうのは、双方にとってよいことはない。昨年12月1日から今日まで3か月余りで、3回の閣僚級貿易協議を開いており、いくつかの重要な問題について、すでに実質的な進展を見ている。現在、双方の経済貿易代表団が、昼夜を問わず全力で連絡を取り合い、交渉している最中だ。両国の国家元首が確定した交渉の原則と方向に沿って成果を上げ、中米貿易を正常な軌道に戻そうとしているのだ。

 現在、全国人民代表大会で審議している『外商投資法』は、およそ中国企業に適用されるあらゆる優遇政策が、外資企業も受けられるというものだ。この法律によって、外資系企業は、中国企業と同様、公平に政府の入札に参加できるようになる」

 重ねて言うが、今年の全国人民代表大会は、各所に「トランプの影」を感じる独特の雰囲気に包まれている。

■右田 早希(ジャーナリスト)
25年以上にわたって中国・朝鮮半島を取材し、中国・韓国の政官財に知己多い。中国・東アジアの政治・経済・外交に精通。著書に『AIIB不参加の代償』(ベスト新書、2015年)

最終更新:3/15(金) 11:32
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