ここから本文です

トヨタ2029 電動化を最適化する 寺師副社長インタビュー(2)

3/15(金) 20:55配信

THE PAGE

“『トヨタはEV出してないんでしょ?』と言う批判に対してどう答えるのか”

寺師:なかなか広く理解していただくのが難しいんです。そこを諦めずに、常に分かりやすく説明しなきゃいけないというのと同時に、「とはいってもトヨタはEV出してないんでしょ?」と言う批判に対してどう答えるのかっていうのも考えていかなくてはなりません。

 まず電動化、ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)の話が今一番クローズアップされます。もともとゼロ・エミッション・ビークルっていうのはカリフォルニア州で大気汚染がひどかったころにやっぱり「光化学スモッグなどの原因となる大気汚染物質を減らしてきれいにしようよ」っていうところから始まり、後から温暖化の問題が加わってきてCO2が問題の中心になりました。だから当然CO2を下げていくのと同時に、やっぱり本来の大気汚染の問題も一緒に考えてクルマを成り立たせなきゃいけない。本当のZEVってのはそういうことです。

池田:つまり公害と温暖化という2つの問題が、実はそれぞれ別にある。この両方を同時に解決していかなきゃいけないっていうことですね。

寺師:ええ。最終的にはどちらもゼロエミッションのクルマが100%になればいいと思います。けれど、現実的にはそれがなかなか普及していかないのはなぜかっていうのをまずわれわれはしっかり認識しなきゃいけないと思うんですよね。去年、欧州委員会がオフィシャルに公表した2017年の自動車メーカー各社のCO2排出量の実績値を見ると、トヨタが一番少なくトップなんです。縦軸にCO2のグラム数、横軸に車両重量。他社は現在の規制を示す線ギリギリです。しかも今後この規制がどんどん厳しくなって行きます。

池田:なるほど。そうですね。

寺師:17年の実績でトヨタが排出削減の達成率が一番いい。それ以外のメーカーは規制値ぎりぎりと。これが何を示しているか、結構思い切って言っちゃうと、EVを持っている会社の達成率はいいわけではないってことですよね。

池田:トヨタは「EV出遅れ」って言われている会社ですからね。

寺師:そうです。僕たちはEVを1台も売ってないんです。それなのに一番達成率が良い。結局、最終的にクルマをチョイスするのはお客さまですから、「お客さまにとって今買いたいクルマは何か?」の結果がこのデータだと思うんですよ。もちろんEVを提供する企業責任はあるので、トヨタもこれから出していきますけれども、やっぱりマジョリティー、多くのお客さまが今買いたいと思うクルマは、HVのような、特別なインフラが要らずに通常どおり使えるクルマで、そういうクルマの評価が現実に高いことを示しているのではないかと。

 例えば、トヨタの今のこのポジション、HVをEVに換算すると20%弱ぐらいEVを売っているのと同じ実力なんですよ。もちろん、将来規制値がもっともっとこの下まで、最終的にはもう2050年には80%、90%下げようとするとなると当然ゼロエミッションのクルマは必要なんで、どんどんやっていかなきゃいけないんですけど、当面お客さまに選ばれる一番現実的な答えはまずはHVではないかっていうふうに思っていまして。

池田:つまりどんなに高性能な環境車をつくっても、それがカタログに載っているだけで売れなければ現実の環境には貢献できないと。だから売れて実際に道路を走っているクルマがいかに環境にいいかが重要ということなんですね。それがトヨタが言って来た「普及してこそがエコ」だと。

寺師:ええ。決してEVやFCVを否定しているわけではなく、それらのクルマはお客さまに買いたいって言っていただくところまで行くのにもう少し時間が掛かるので、それは企業の責任として魅力を上げる様に努力はしていきますけれども、その間、やはり幾つかのステップがあるんではないかと。

池田:仮にすごく魅力的なEVをつくっても、お客さんがこの値段なら買ってもいいっていうラインが原価より低いとものすごい値引きをして売らなきゃならないですものね。

寺師:そう。もう1つは、EVに乗りたい、買いたいと思う人を増やすためはどういうことをやると増えるんだろうか。当然価格の話もあるし、充電とかの頻度もあるので、まだまだちょっとそういう人をマジョリティーにするのには時間が掛かるんだろうなっていう感じはしますよね。

池田:確か今年EVが世界累計で300万台になるかっていうようなデータが出てたと思うんですけど、トヨタはHVをもう累計で1200万台近く売ってますよね?

寺師:いや、もう1300万台を超えました。

池田:それだけ普及しているということがやっぱりすごいということなんですね。だからこそCO2排出量削減の成績が1位だと。

寺師:別にこれを取ってどうだと言うつもりはないんですけど、やっぱりお客さまが選ぶときの判断基準に照らすと、今のEVではまだちょっと多くの人に選んでいただくものになってない。選んでいただける様になるまでに時間が掛かりそうだと。もちろん一生懸命電池性能向上とか、コストダウンとかはやっていかなきゃいけない。それはEVだけじゃなくFCVも同じですけど、乗り越えるまで無策というわけにはいきません。当面はHVでやっていくことで貢献できるのではないかって思うんですよね。

2/4ページ

最終更新:3/16(土) 13:59
THE PAGE

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事