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乳がんの幹細胞が、分裂して倍増する仕組みを発見

3/15(金) 15:00配信

サイエンスポータル

 生涯のうちに「がん」を患う日本人は、2人に1人の割合だといわれる。 最も多いのは大腸がんで、胃がん、肺がんがこれに続く。しかし、女性に限った場合、最も多いのは「乳がん」だ。 乳がんに限らず、がんの生存率は「分子標的薬」など新しいタイプの薬の進歩により、著しく向上している。分子標的薬は、がん細胞が作りだす異常なタンパク質を狙って、その働きを効果的に抑える薬だ。しかし、「トリプルネガティブ」とよばれるタイプの乳がんでは、標的となるような分子が見つかっておらず、今のところ最適とよべる薬が存在しない。そのような乳がんも視野に、治療に役立つ分子の発見に取り組んでいるのが、金沢大学の後藤典子教授らの研究グループだ。乳がん細胞が増える新たな仕組みをこのほど解明し、米国の科学論文誌「PNAS」で発表した。

がん幹細胞の対称性分裂が、がんの悪性化を招く

 がんは遺伝子の病気だ。だからといって「遺伝する」病気という意味ではなく、たいていのがんは、生まれてから起こった遺伝子の変化の蓄積が原因となって発生する。がん細胞の親玉ともいえるのが「がん幹細胞」だ。がん幹細胞は分裂して「がん細胞」を生み出す。がん細胞は分裂と増殖を無限に繰り返して大きな塊となり、やがてまわりの組織や臓器の働きを妨げてしまう。ただし、がん幹細胞の分裂によって「がん細胞」ばかりができていては、親玉が枯渇してしまう。だから、分裂によってできる2つの細胞のうち、がん細胞になるのは片方だけで、もう一方は新たな「がん幹細胞」になるのがふつうだ。このようなタイプの分裂のことを「非対称性分裂」という。

 ところが、分裂した細胞が両方とも「がん幹細胞」になる場合がある。このような「対称性分裂」が起こると、がんの親玉が加速度に増えるため悪性化しやすい。

 後藤さんらのグループは、乳がん幹細胞の人工培養に成功した経験をもとに、対称性分裂のメカニズムの解明に乗り出した。体内のがん幹細胞は、周りの正常な血液細胞や免疫細胞を巧みに操り、自分自身が生き延びるために最適な条件を備えた「ニッチ」と呼ばれる環境を作っている。ニッチについては、今もわからない点が多い。乳がん幹細胞の最適な生存条件を見つけるために後藤さんらは検討を重ね、その結果、乳がん幹細胞の生存には「炎症」にかかわる分子が重要であることがわかった。

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最終更新:3/15(金) 15:01
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