ここから本文です

『逆転裁判』巧舟×筋肉弁護士 小林航太、異色の対談が実現! 「民事の『逆転裁判』ってできると思います?」(巧)

3/16(土) 9:02配信

ファミ通.com

文・取材:堅田ヒカル

「僕が弁護士を志したのは、『逆転裁判』がきっかけなんですよ」(小林)

 いまをときめく“筋肉弁護士”、小林航太。NHK『みんなで筋肉体操』に出演し、筋肉のすばらしさを啓蒙する人物であり、筋骨隆々のキャラクターに扮する有名コスプレイヤーでもあり、現役バリバリの弁護士である彼が法曹界入りを目指したきっかけは、『逆転裁判』だった。

 今回、その小林弁護士と、『逆転裁判』シリーズ生みの親である巧舟氏の対談が実現。裁判のこぼれ話から巧舟氏のゲームづくりに懸ける信念、果ては“トレーニングが続かないんだけどどうすればいい?”など、さまざまな話題に及んだ対談の模様を余すところなくお届けする。


『逆転裁判』をきっかけに法曹の道を歩んだ弁護士 憧れは成歩堂龍一


――おふたりは、お会いするのは初めてですよね。


巧ええ。じつは、僕そもそも弁護士の方に直にお会いするのは初めてなんですよ。

小林ええっ、弁護士が主人公のゲームを作っているのに!?

巧恥ずかしながら(笑)。

小林じつは、僕が「弁護士になろう」と思ったのは中学生のころにプレイした『逆転裁判』がきっかけでして、あれがなかったら弁護士・小林航太はいなかったとも言えるかもしれません。


――という方を目の前にして、巧さんはどのようなご感想をお持ちですか?


巧責任感に打ち震えますね(笑)。

一同 (笑)。

巧作り手として、本当にうれしいです。もともとは「弁護士のゲームを作ろう!」というつもりだったわけではなく、「新しいミステリーのゲームを作りたい!」というのが出発点で、そこから最終的に生まれたのが『逆転裁判』だったので、少し不思議な感じがしますね。

 作っていくうちに、やっぱり“熱い主人公の王道の物語が一番おもしろいだろう”となっていったわけですが、そうして作ったゲームが誰かの心に火をつけることができたら、それが弁護士じゃなくても、それはすばらしいことで、作り手としては最高に幸せなことじゃないかなと思います。小林さんは、『逆転裁判』とはどうやって出会ったのですか?

小林最初に知った入口が、ゲームソフトそのものではなく、公式サイトにあった1話の冒頭を遊べる体験版で。「あ、こういうゲームがあるんだ、おもしろい!」と思って、購入しました。


――すごくエポックメイキングで、「このゲームはいままでなかったな」という新鮮さがありましたよね。


小林ウソやムジュンを暴いていくあの気持ちよさは、なかったですよね。


――ゲームを紹介する“証言のムジュンを見つけて、嘘を暴く”という説明を読んでも「つまりどういうことなの?」ってなるのですが……


小林遊んでみるとすごくおもしろい。逆に、これは遊んでみないとわからないゲームですよね。

巧そうなんですよ。当時、企画のプレゼンはすんなり行きませんでしたね(笑)。弁護士のゲームとなると、「法律の知識が必要なんじゃないか」とか、「お堅いゲームになるんじゃないか」とか、そういう意見が多かったです。


――以前、好きなキャラクターは成歩堂龍一だとお伺いしましたが。


小林やはり、僕の人生を決めた弁護士ですからね(笑)。それに、華宮霧緒や……


小林『蘇る逆転』の巌徒海慈も好きですねえ。体格もいいし、キャラクターもいいし、格好いいオジサマですよね。


――前髪をくるくるしながら、口癖が「最近どう? 泳いでる?」っていう。


巧そんな感じでしたね。裁判長と知り合いなんですよね、「チョーさん」なんて呼んだりして。


――「泳いでる?」というのは、イメージとしては、海とかじゃなくて「ジムのプール行ってる?」という意味かなと思っていました。体格もいいですし。彼は中年太りとかしないように鍛えているんだろうなと。


巧巌徒さんは、なんとなくテレビ局のプロデューサーみたいなイメージだったと思います。ちょっと軽めなおじさんで、でも、怖い。個人的には、革手袋をはめた手で拍手する音がすごく好きですね。


――現実の裁判長はどんな感じの方が多いんですか? 年齢など。


小林真ん中に座る方は、やっぱりある程度キャリアを積んでいる方なので、おじさんやおばさんが多いですけど、見た目はふつうですよ(笑)。裁判官は定年退職もありますから。


――裁判官と検事は公務員なので定年がありますけど、弁護士は基本はない?


小林基本はないです。死ぬまでやってもいいですよ。

巧へえ。それはおもしろいですね。おじいちゃんの弁護士なんて楽しそうですね。耳が遠いフリをして、都合が悪くなると「え、なんですか?」みたいな(笑)。

小林「大丈夫かな?」というおじいちゃんもたまにいらっしゃいますけど(笑)。
『みんなで筋肉体操』を観る


――巧さんは『みんなで筋肉体操』をご覧になったことがないとのことなので、せっかくですしYoutubeで公開されているものを観てみましょうか。




※『みんなで筋肉体操』……2018年と2019年に放送されたトレーニング番組。小林弁護士を始め、俳優の武田真治氏や庭師の村雨辰次氏といった個性的な出演者、「筋肉は裏切らない」という合言葉が話題を呼んだ。1番組5分の短い時間ながら十分に筋肉を追い込める過酷なトレーニングを行う。これまで放送された8回分はすべてYoutubeで公開中。


巧おおすごい、颯爽としてますね!

江城きれいな腕立てのポーズだなぁ。


――番組出演の最初のオファーって、どのような経緯で?


小林Twitterでディレクターからダイレクトメッセージ(DM)が来たんですよ。イタズラかと思いますよね。

巧(笑)。突然「NHKですけど」ですか? すごいなあ。やっぱり、コスプレをやってて弁護士で筋肉で、その三つ巴のキャラクターがポイントになって声がかかったのかなあ。

江城(腕立て伏せ動画を観つつ)膝ついてもいいんや! 膝ついてもいいとは思わなかった。

巧武田真治さんとはもう、友人なんですか?

小林だいぶ仲良くなりましたよ。

巧ですよね。おもしろいなあ。


――出演されている皆さんも、『筋肉体操』のトレーニングをやったらキツイと感じるんですか?


小林キツイですよ。


――(笑)。


巧ごまかしがきかないし(笑)。

小林第1シーズンのときは、NHKもこんなに話題になると思っていなくて、事前の練習もなく、収録当日集まって、4回まとめて撮ってという感じでした。

巧始めるときはここまで広がると思っていなかったのかな。いったいどういうコンセプトで始めたんだろう(笑)。

小林『みんなの体操』の筋トレ版ですかね。もともとディレクターさんが、筋トレを広めたいという思いがあって。


※『みんなの体操』……NHKで放送されている体操番組。年齢・性別・障がいの有無を問わず、すべての人々が楽しく安心してできる体操です。1999年、国連の“国際高齢者年”にちなみ、“ユニバーサルデザイン”という考えかたのもと考案されました(NHK公式チャンネルの説明文より抜粋)。


巧なるほど。


――“筋肉は裏切らない”という名フレーズは、その番組のディレクターの発案で?


小林らしいですね。


――では、ディレクターさんも、ムキムキな?


小林全然そんなことないですよ(笑)

巧なんだ(笑)。小林さんは、これで『紅白歌合戦』も出られたんですよね。

小林出たんですよ。“天童よしみさんが歌うバックで筋トレをする”というわけのわからないことをします。


――歌っているうしろで筋トレするわ、武田真治さんはこの格好でサックス吹いてるわ、もうお祭り騒ぎで、めちゃくちゃおもしろかったです。


巧がんばってゲームを作っても、たぶん紅白出られませんからねぇ。

江城確かに(笑)。


――こういう番組を1シーズン4回やって、それが第2シーズンまであったという。


小林第3シーズンがあるかどうかはわからないのですが……。


――評判もよかったですし、ぜひまた見たいし、体験したいですね。


巧そうですよね。せっかくですから、トレーニングについてお伺いしたいんですが、おなかを引っ込めるには、やっぱり腹筋を鍛えるといいんですか?

小林おなかを引っ込めるには、むしろ食事制限とかそっちの方ですね。

巧ああ~、そっちか……。



――『みんなで筋肉体操』をご覧になって、ご感想はいかがですか。


巧無理ですね(笑)。ゲームクリエイターは、世界でもっとも虚弱な種族ですから(笑)。風邪のシーズンとか、ひとりセキこむと、隣へ順番にパタパタ倒れていくリアルバイオハザードの世界が展開するという……。


――でも、けっこうゲーム業界の方で、ジムに行って鍛えている方いらっしゃいませんか?


江城僕行っていますよ。

巧どの業界も、歳をとってくると筋肉の必要を感じるようになるんですよ。「このままじゃワシは死ぬんじゃないか」って。

一同 (笑)。
「トレーニングを長続きさせるコツは?」(巧)

巧トレーニングを始めてもなかなか続かないのですけど、長続きのコツってありますか?

小林目標なく続けるのは難しいかなと思います。ちなみに、どうしてトレーニングをやろうと思ったのでしょうか。


巧おなかが……。

小林たとえばいまだと、これから夏まで4~5ヵ月あるじゃないですか。だから、「この時期に海に行くぞ」と、いまから決めちゃって、そこまでがんばるんですよ。

巧なるほど、目標ですか。

小林お盆の時期、いまから5ヵ月くらい先に海に行くつもりでいて、それまでどうやって体重を落としていくか、おなかを引っ込ませていくか……と逆算して考えて始めるというのがまず大事かなと思います。そして、徐々に始めていけば習慣化していくので。

巧……するかなあ(笑)。

一同 (笑)。

小林目的を定めて、目的に向かっていくのが大事かなと思います。僕もやっぱり、例えばコンテストに出ようというときと、そうではないときで、トレーニングの身の入れかたもぜんぜん変わるので。

巧だって弁護と両立されているんですもんね。

小林そうですね、正直言ってけっこうしんどいですね(笑)。
小林弁護士が筋トレとコスプレにハマったワケ


――筋トレを始められたのは、コスプレしたいキャラクターがあったからということでしたよね。


小林大学在学中にコスプレのためににハマって、一度『ジョジョの奇妙な冒険』のカーズのコスプレをしたんですけど、ひょろかったので、情けねえなと思って。

巧なんと、カーズ!


――カーズのコスプレをやるために、筋肉を相当仕上げていきたかったと。


小林そのときやったカーズと、司法試験受かったあとにやったカーズとで、全然体の太さが違うんです。同じキャラクターのはずなのに、ふた回りくらい違います(笑)。


――先日はTwitterで“『逆転裁判』合わせ”(同じ作品で統一して多人数でコスプレをすること)のお写真も上げてらっしゃいましたよね。





小林ええ、このあいだ、法廷とかがある撮影スタジオで、20人くらいいろいろなキャラクターを集めて撮りました。

巧それはみなさん『逆転裁判』関係ですか?

小林『逆転裁判』です。

巧へえー、見たかったなあ。


――真宵ちゃんから千尋さんから、いろいろなコスプレの方が集まっていましたよね。


巧真宵ちゃんが5人くらいいたりするのかな。それとも、みんなばらばら?

小林ひとり1キャラで。

巧なんと、それはすごいですね。

小林それくらい人数集めないと、スタジオ代が馬鹿にならないというのもあって(笑)。


――なるほど。『逆転裁判』で20人以上集まるというと、中にはけっこうマニアックなキャラクターもいたんじゃないですか。


小林小中大(こなかまさる)とかもいましたよ(笑)。

巧小中……(笑)。

小林トノサマンもいましたからね。

巧おお、すごい!


※“トノサマン”については以下の関連記事もチェック!


『逆転裁判』シリーズでおなじみ“大江戸戦士トノサマン”の番組OP風動画が公開! 一度聴いたら忘れられない名曲をその目に!
https://www.famitsu.com/news/201902/06171584.html

小林そういう着ぐるみみたいなコスプレを作れる人がいて、トノサマンとヒメサマンのペアとか。着ぐるみになってくると、作るところがメインみたいなところはありますね。

巧へえ、おもしろいですね(笑)。


――脱いだら、荷星三郎(にぼしさぶろう/トノサマンの中に入るスーツアクター)のコスプレしていたかもしれないですよね。


小林本当にそれでやっていました。

一同 へえー!

巧キャラクターが作り手から巣立っていった感じがしますね。
『逆転裁判』みんなガタイがいい伝説

小林ところで、『逆転裁判』に出てくるキャラクターって、みんなガタイがいいですよね? とくになるほどくんと御剣がすごいじゃないですか。

巧とくに、御剣の胸板が。


――あえてそうしたんですか?


巧当時のデザイナーさんの大好物が筋肉だったのかな。

小林そうなんですね。

巧とくにデザインの指定はなく、自然とそうなっていましたね(笑)。筋肉の話になりましたが、小林さんは弁護士試験の勉強しながら、筋トレもしていたんですか?

小林そうです。息抜きにちょうどよかったのと、弁護士になるための勉強って、大学を卒業した後にさらに3年かけてロースクールというのを卒業して、そうして司法試験を受かって初めて結果として意味があるわけじゃないですか。

 そんな先が見えないような生活の中に比べると、筋トレってわりと短期間で結果が出るんです。たとえば3ヵ月もやれば、体ってぜんぜん見違えたりするので、短いスパンでの成功体験が、先の見えない勉強生活の中でいい刺激になっていたというか。

巧小林さんの記事を見て、“筋肉とコスプレと法曹の三足の草鞋を履く”って書いてあって、法曹がみっつ目に来てる! って思いました(笑)。

小林「お前の本業はなんなんだ」とよく言われますね。

巧時間がいくらあっても足りませんね(笑)。

小林無理やり捻出する感じですね。

巧1回のトレーニングは、どれくらいやるものですか?

小林僕は、1時間半くらいやりますね。いま、ゴールドジムに通っているのですが、職場を選ぶときも、近くにジムがあるところにしようと思って決めました。だから、仕事が終わったあと、歩いてゴールドジムに行けるんですよ。

巧弁護が終わってから行くんですか?

小林平日は弁護が終わって、大体20~21時ごろには事務所を出て、トレーニングをして、帰ってご飯を食べて寝る……みたいな生活ですね。

巧『逆転裁判』を遊べないじゃないですか!

小林そうなんですよ(笑)。

巧けっこうゲームを遊ばれるとお聞きしました。

小林はい、ゲームはするんですけど、最近は時間がなくて……。けっこうPCでゲームをやるので、時間をがっつり使って、FPSをやったりとか、そういうタイプです。だから、最近の新しいゲームを触れていないんですよ。『Apex Legends』とか『Anthem(アンセム)』とかもやりたいんですけど。


「現実の裁判所でおもしろかったところは?」(小林)

小林『逆転裁判』制作にあたって、裁判所にも通われたと聞きましたが、実際の裁判でおもしろいと思った点と、逆につまらないと思ったところはありますか? というか、現実の裁判は「つまらない」と感じたと思うんですよ。

巧「つまらない」というのはあれですけど、弁護士が「異議あり!」と言わなかったり、ドラマや映画の“法廷モノ”とは違うじゃないですか。

小林だいぶ違いますよね。

巧法廷の作りもシンプルで、裁判長の木槌も「静粛に!」もないのは、ちょっとガッカリしました(笑)。

小林なるほど。

巧チームのみんなで裁判を見に行ったとき、最初は軽めのものから始めようということで、たまたまのぞいたのが“わいせつ物陳列罪”の判決だったんですよね。これはかなりインパクトがありました。

一同 (笑)。

巧「被告人は、被害者の左背後から接近して、右手をさしのべてどうのこうの……」みたいな感じで、ものすごく詳しく大真面目に述べ立てるんですよ。被告人はうなだれて聞いてるんですけど、その背中を見て「はあ、この人が……」みたいな。

江城確かに、ちょっと恥ずかしいな(笑)。

巧それを、なんの関わりもない我々が並んで見ているという。


――裁判は公開の原則があって誰でも傍聴できるものですが、初めての経験ですから、ちょっと戸惑いますよね(笑)。


巧デザイナーが、参考資料にするために、法廷画のようにスケッチをしてみたり。チームの結束が固まりましたね。そういう思い出はありますね。

小林数は少ないのですが“裁判員裁判”だと、裁判員にわかりやすく事件を伝えるために、どちらもパワーポイントを使ったり、いろいろな図とか写真とか動画とか使ったりして、それこそ『逆転裁判』のような雰囲気もありますよ。


――裁判員裁判の場合、法曹関係者ではない、一般の方である裁判員にわかりやすくするために、いろいろ工夫を凝らされていると。


巧なるほどなあ。


――小林さんは、裁判員裁判の事件を扱うことは?


小林まだまったくないです。


――もしそういうお鉢が回ってきたときは。


小林もうがんばるしかないですね。

巧パワーポイントの資料に成歩堂龍一が顔を出してたりして

小林……いいのかな?(笑)

巧物議は醸すと思いますよ。


――裁判員にわかりやすく説明するためにも、ひとつの手段としてありかもしれませんね(笑)。


小林けっこうみんなしゃべりかたの勉強をしたりとか、そういうこともしています。

巧弁護士さんって、師匠はいるんですか?


江城千尋さんみたいな(笑)

小林刑事弁護で有名な人たちは、師匠じゃないですけど、その人についていくみたいな感じでやっている方が多いですね。僕は民事が主なのですが。




「民事の裁判ってゲームになると思いますか?」(巧)

巧小林弁護士には、御剣怜侍のような、“ライバル検事”はいるんですか?


小林いないですね。まだ数えるほどしか刑事事件をやっていないので。


――裁判で戦う相手が、検事ではなくて、弁護士なんですね。


巧民事だと“弁護士対弁護士”ですよね。民事の裁判ってゲームになると思いますか?

小林民事の裁判は、それこそおもしろいところが尋問くらいしかないですね。民事の裁判って本当に地味で、法廷のやりとりって、基本的に書類のやりとりだけなので。

巧へえ。それは裁判長が資料を見るんですか?

小林一回の期日から、つぎの期日までひと月くらい空くんですよ。その間に、お互い反論の書面とか主張の書面とかを出して。

巧おお、そこは書面なんだ。

小林書面を出したあとに、実際につぎの裁判をやる前に書面のやりとりは済んでいるんですけど、正式に提出する手続きを裁判でするんですよ。

巧じゃあ、傍聴人は意味がわからないんじゃないですか?

小林何やっているかまったくわからないですよ。

巧書類……。

小林ただ、証人尋問となると、刑事事件と同じく弁護士が質問して答えて、交代で相手方の弁護士が質問して答えてみたいなやり取りがあるので、そこはちょっと『逆転裁判』っぽいかもしれません。

巧じつは一度、民事版の『逆転裁判』を作れないかなと思って、漫画やドラマをまとめて見てみたんですけど、なんだか生々しいんですよね。決着が“示談金を割引きしてもらいました!”とか、“和解が成立しました!”とか、ちょっとスッキリしないというか……。


――ゲームっぽく、白黒ハッキリつく展開はあまりないかもしれませんね。


小林そうなんですよ。裁判所って和解で終わらせたがるところがあって。実際、地方裁判所で判決が出たとしても、控訴されて高裁に持っていかれたりするじゃないですか。でも、和解という形で裁判を終わらせれば、事件は片付くし、ひっくり返ることもないし。

江城なるほどなあ。

巧そういうことなんですね。

小林だからあんまり判決を書きたがらないですね。

巧民事裁判は事件がなんとなく生々しいですよね。

江城遺産相続とか。

小林不倫とか。

巧だから、けっきょくやめちゃいました。


――相当ゲーム性を変えないといけないですよね。スコア制とか。何億ふんだくったみたいな。


巧江城さん向きの世界ですね。

江城なんでやねん(笑)。
「異議あり!」誕生秘話

小林なるほどくんの「異議あり!」って、ポーズも含め、どのように思いついたのですか? 指をさすって、けっこう攻撃的なポーズじゃないですか。あれだけ迫力のある指さしは、ほかでは喪黒福造(もぐろふくぞう)くらいしか見ないですよ。

一同 (笑)。

巧たしかに(笑)。特に意識することもなく「異議あり!」というセリフを書いたんですけど、その当初から、チームのみんなの中にはあのポーズのイメージはありましたね。おっしゃる通り、あれは本当に便利というか、なかなかキャッチーなポーズだなと思いますね。何かあったらあのポーズ(笑)。


――「待った!」と「異議あり!」、「くらえ!」のみっつを決め台詞にしたのは、何か理由とか、それ以外の候補もあったのでしょうか。


巧「異議あり!」は当然として、ほかにも一応用意しておこうということで、深く考えずに「待った!」と「くらえ!」を作ったんですけど、そのときはどう使おうか、全然決まっていなかったんですよ。

 その後、「くらえ!」と叫んで、証拠品がグルグル回って裁判長に突っ込んでいく演出を作っていたんですけど、ほかのチームの人にあそんでもらったら、「なにこれ!」と驚かれて。たしかに、証拠品を提出するときに「くらえ」とは言わないですからね。そのときまで、ぼくたちはそんなことを考えず、大マジメに作っていたので、「そうかそうか、確かに変だね」と気づいたという。

 その後、「ちょっと!」なんてパターンも増えましたね。

江城「ちょっと!」は『レイトンVS逆転裁判』と『大逆転裁判』シリーズで使ったな。

巧「そこだ!」もありましたね。

江城『逆転裁判4』の“みぬく”で。

巧ああ、そうそう(笑)。

小林完全にもう『逆転裁判』の影響で、「異議あり!」のイメージはこれという感じになっちゃいましたから(指をさしながら)。

巧やっぱり「異議あり!」は“こう”ですよね(指をさしながら)。

小林「異議あり!」って、尋問中に相手方がやっちゃいけない尋問をしているときに、止めるとき使うんですよ。だから、とっさにやらなきゃいけないというのと、基本的に発言者が立つという暗黙のルールがあるので、立ちながら「異議あり!」という動きになるんです。だから、そのときの意味合いとしてはどちらかと言うと、「待った!」の方なんですよね。

巧そのとき、机を叩いたりはしないんですか? しませんよね。

小林叩いたりは……しませんね。

巧恫喝ですもんね。


――恫喝(笑)。


巧本当に『逆転裁判』の裁判はイメージの世界ですね。


――やはりゲームである以上は、あれくらい派手にやってくれないと……。


巧決めポーズは本当に大事だなと思いましたね、いまとなると。

江城実際に、ロゴのシルエットになっているからね。


「失敗って、結構、チャンスでもあるんですよね」(巧)

小林最近見たインタビューで、巧さんは大きな失敗をしてもそれを成功に変えるということをくり返してきたと拝見しました。何か“失敗をプラスに変えるコツ”みたいなものってあるのですか?

巧失敗……。ゲームを作っていて、いつも思うのですが、失敗とかピンチってけっこうチャンスなんですよね。シナリオの見落としとか致命的なミスを指摘されると、ピンチなんですけど、そこをカバーするアイデア次第で、逆に物語が広がって、おもしろくなったりするんですよ。これは、毎回絶対に起こりますね。

 その経験から、致命的なことが起きても、それは、もう一段階飛躍するチャンスでもあることは間違いないと思います。ゲームの“企画”や“シナリオ”って、言ってみれば自由なもので、アイデア次第でどうにでも変えられるじゃないですか。だから、「これはチャンスなんだ」と信じることですかね。

 弁護士だと、そこまで自由がきくものではないと思いますけど、物作りは基本的に、土台は自由じゃないですか。もちろん制限はありますけど、その制限も、工夫しだいで新しい発想が生まれて、やっぱり飛躍するチャンスになる。そこが作り手の腕の見せ所ですよね。


――ものすごくいいお話じゃないですか。そういう考えをお持ちになったのは、ゲームづくりの実務というか、経験を経て?


巧そうですね。『逆転裁判』も、何度か制作中止の危機がありました。企画書の段階でダメになりかけたりとか、「ゲームシステムがわかりにくい」と言われたり。でも、だからこそ、最終的にシンプルなシステムが生まれたわけです。諦めずに考えることですかね。ゲームづくりはそれがとくに大切だと思います。
「生みの親に会ったような気分でした(笑)」(小林)


――では最後に、小林さんに本日の感想じゃないですけど、巧さんにお会いして、いかがだったか、少し聞かせてていただければ。


小林いやもう、僕の生みの親に会ったような気分でしたね(笑)

巧(笑)。

小林これまでにも、インタビューはいろいろ受けましたが、その中でもかなり緊張しました。昨日から、「どうしよう」とそわそわしていたので、実際にお話してみてやっぱりおもしろい方で、本当にお会いできてよかったです。


――巧さんは、本日の対談はいかがでしたか?


巧これまでいろんな方とお話する機会がありましたが、こんなパターンは初めてです(笑)。

江城実際の弁護士の人とね。

巧はい。おかげさまで弁護士の方と会うこともできたし、よかったです。ぼくたちが作ったものから何かを受け取っていただいて、その方とお話しして、今度はぼくたちもエネルギーをもらった気がします。ありがとうございました。

小林ありがとうございました!


――何か事件に巻き込まれたときは、小林弁護士に。


巧おお。ぜひ、お願いします(笑)。

小林いつでも言っていただければ。

巧頼りにしています。

江城すごいいいね。

小林喜んで。



小林弁護士の『逆転裁判』インタビューは下記の関連記事をチェック!


「『逆裁』が実務に役立つこともあるんです」――弁護士を志したきっかけは『逆転裁判』だった!? 話題の“筋肉弁護士”にモリモリインタビュー!
https://www.famitsu.com/news/201903/01172506.html
おまけ 小林弁護士の筋肉カット

最終更新:3/16(土) 9:02
ファミ通.com

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事