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モンゴルの深刻な大気汚染、家族もバラバラに

3/16(土) 12:33配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【3月16日 AFP】世界一寒い首都、モンゴルのウランバートルでは、多くの人々が氷点下40度にまで気温が下がる厳しい寒さをしのぐために石炭やプラスチックを燃やしている。だが、こうして得られる暖かさには大きな代償が伴う──危険な汚染だ。ウランバートルの大気は子どもが呼吸するには毒性が高すぎるレベルに達しており、親たちは子どもを地方に避難させる以外に選択の余地がほとんどない状況に陥っている。

 この集団脱出は、アジアの大半の都市地域にとって未来への厳しい警告となっている。褐色の空をバックに汚染防止マスクをした市民たちの光景は人類終末の世界ではなく日常となりつつある。

 ウランバートルは、インドのニューデリー、バングラデシュのダッカ、アフガニスタンのカブール、中国の北京などとともに世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つとされる。発育不良や慢性疾患、場合によっては死亡などの悲惨な結果が、特に子どもに対してもたらされると専門家らが警告しているにもかかわらず、世界保健機関(WHO)が勧告する大気の質に関する汚染の基準値を常態的に上回っている。

 エルデネ・バト・ナランチメグ(Erdene-Bat Naranchimeg)さんは、娘のアミナちゃんが生まれてからほぼずっと病気と闘ってきたのをなすすべもなく見守ってきた。アミナちゃんはスモッグで息が詰まりそうなウランバートルの大気の影響で、免疫系に障害が生じている。

 ナランチメグさんは、AFPの取材に「私たちはこれまでずっと入退院を繰り返してきた」と語り、アミナちゃんは2歳の時に2回肺炎にかかり、一連の抗生物質治療を数回受けなければならなかったと付け加えた。

 冬季の気温がほぼ居住に適しないレベルにまで落ち込む都市の、特に地方の労働者らが生活の向上を求めて移住してきた地区では、これは特異なケースではない。

「ゲル」として知られる伝統的なテント型住居が何列も連なるこの地区では、石炭やその他手に入る可燃物なら何でも燃やして暖を取る。この燃焼で生じる濃い黒煙がもくもくと立ち上り、周辺の地域を覆うため、数メートル先も見えにくくなるほど視界が悪くなる。

 その影響か、どの病院も患者であふれており、幼い子どもたちは体が弱く、普通の風邪が命にかかわる病気に発展する恐れすらある。

■出生異常

 状況があまりに悪いため、唯一の選択肢は、都市部ではなく空気がきれいな地域に娘を移すことだと、医師らはナランチメグさんに伝えた。

 現在5歳になり、すくすくと成長しているアミナちゃんは、ウランバートルから135キロ離れたボルヌールソム(Bornuur Sum)村で祖父母と暮らしている。

「娘はここで暮らし始めてからずっと健康でいる」と話すナランチメグさんは毎週、往復3時間かけて娘に会いに行っているという。そして、「最初の数か月はとても苦しかった」「娘とはよく電話で話しては泣いていたものだ」とこれまでのことを振り返った。

 ウランバートルに住む多くの親たちと同様に、ナランチメグさんは地方部への転居が自分の子どもを守る唯一の手段だと感じている。

 ウランバートルでは1月、有害な微小粒子状物質「PM2.5」の大気中濃度が1立方メートル当たり3320マイクログラムに達した。これはWHOが安全とみなす値の133倍に相当する。

 PM2.5は大人にとっても恐ろしい影響をもたらすが、子どもはさらに大きな危険にさらされる。その理由の一つに、子どもは呼吸のペースが速く、より多くの空気と汚染物質を取り込むことが挙げられる。

 また、子どもは大人より体が小さく、一部の汚染物質が集まる地面により近い上、肺、脳や他の主要な臓器がまだ発達段階にあるため、大人より損傷を受けやすい。

 PM2.5への長期暴露の影響は、持続感染症やぜんそくから、肺や脳の発達の遅れにまで及ぶ。

 これらの危険は子宮にも及ぶ。ガスや微粒子が母親の血流や胎盤に入り込み、流産や出生異常、低出生体重などを引き起こす可能性があるからだ。これらの問題が子どものその後の人生に影響を与えることも考えられる。

 研究者らは現在、たばこの煙への暴露といった汚染が、次の世代の健康にも影響を与え得るのかどうかについて調査を進めている。

■「ものすごく不安」

 大気汚染の最も明白な影響は呼吸器系疾患である一方、汚れた空気によって子どもがその後の人生で糖尿病や循環器疾患を発症する危険性が高くなることが、研究で示唆されている。また、WHOは大気汚染と白血病や行動障害との関連性を指摘している。

 スモッグが持続的に発生していることで、都市部の人々の間では緊張が生じている。富裕地区に住む人々が、大気汚染はゲルの住民らのせいだとして、テント地区の撤去を求めているのだ。だが、ゲルの住民らは石炭しか買う余裕がないと訴えている。

 この問題に対処するため、地方自治体は2017年に国内での移動に制限を設けた。また5月には、石炭の燃焼に対する禁止措置が施行される。だが、これらの措置が今後、状況を改善するほど十分な効力を発揮するかどうかは不明だ。

 ナランチメグさんにとって大気汚染は、さらに子どもをもうけるかどうかを考えさせるほどの深刻な問題となっている。

「私は今、もう一度出産することに大きな不安を感じている。妊娠は危険を伴う上、これだけの汚染の中で生まれてくる子どもがどうなるかも不安だ」

 2018年12月~2019年2月撮影。 (c)AFPBB News

最終更新:3/21(木) 2:24
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