ここから本文です

HRD Sakura連載「テストベンチは面白い!」第3回:継承される“1馬力への厳しい目”

3/18(月) 18:37配信

motorsport.com 日本版

 “テストベンチは面白い”と語るホンダのスーパーGT/スーパーフォーミュラのラージプロジェクトリーダーを務める佐伯昌浩氏。その面白さを紐解くべく、我々はホンダの協力を得てHRD Sakuraに訪問した。

【ギャラリー】HRD Sakura訪問! テストベンチは面白い

 これまでの2回では、改めてテストベンチの役割と、実際に行なっていること、その極意に至るまでを紹介してきた。

ドライバーとの”共感”

 こうしてテストを繰り返して、ようやくエンジンが完成。次はサーキットでの実走行になる。しかし、テストベンチで理想通りの性能が出せていたとしても、サーキットに持っていって「思い通りにいかない」こともよくある。

「やっぱりサーキットでは、ベンチとは違って計測しきれない部分があります。そういう、サーキットで起きていることを同じようにベンチで再現するという部分の楽しさというか面白さはあります」

 そう語るのは、佐伯LPLとともに今回取材に応じてくれた入社10年目の河合康平氏。テストベンチで主にスーパーGT用のエンジンを担当している。時にはサーキットに行って、自身が開発に携わったエンジンが現場でどのように機能しているのかをチェックしたり、実際にドライバーに意見を聞くこともあるという。

「『ここにトルクの谷がある』とか『ターボラグがある』という意見が、ドライバーさんたちから出てきます。それをテストベンチで検証します」

「現場で起きたことをベンチで再現して、そこから改善するのが僕たちの仕事なです。再現して改善して、それをドライバーさんにサーキットで実際に試してもらって、『ちゃんと良くなったね』という答えをもらえるのか、違っていれば『こうじゃない』という意見が出てきますから、それを持ち帰って再現テストを行って……その繰り返しになります」

「それでも、ドライバーさんが言っていたことがテストベンチ上で再現できたり、ドライバーさんと感覚を共有できるというところが楽しいですね」

テストベンチの”設備”にかける想い

 そうしたドライバーからの細かな要望にも応えるために、テストベンチというのは非常に重要な存在。それゆえに設備へのこだわりも並々ならぬものがあり、代々継承される“テストベンチ魂”がホンダにはある。

 それが、“設備の精度”だ。

 取材を進めていくうち、ふと佐伯LPLはこんなことをつぶやいた。

「今の計測器はちゃんとしていて、羨ましいですよ。私たちの時代は、エンジンの中で空気がこうなって圧縮されて、燃え方はこうで、排ガスはこうで……全て妄想の中でテストをやっていました」

「ポートとかインマニ(インテークマニホールド)の形状をみて、『この形状だと空気は相当剥離しているだろうから、ここをこう直してみようか』と、感覚でやっていた部分もありました」

「それを検証したり、どう判断するのかというのを当時は自分たちで色々やっていましたが、今はみんなCFD(計算流体力学)をかけているし、燃焼圧力とかも全部見ながらテストをやっているんで、結果として判断しやすくなっています。ただ逆に膨大なデータが取れるんで、それの処理に本当に苦労しているというのも、逆の見方からすればありますね」(佐伯LPL)

 現在のテストベンチはエンジンの燃焼状態を見るためのセンサーが大量に取り付けられ、モニター室に映し出される計器類のデータ数も数十種類ある。一見、これらのセンサーを使ってより精度の高いテストができそうだが、矛盾したことが起きることもあるという。

「エンジンの燃焼状態を見るために付けているセンサー等が大量にあるので、燃焼を良くしたい・早く燃焼させたいという部分では上手くいっているように見えながら、実は出力になっていないということがあったりした時にけっこう悩ましいことになっている部分はあります。もしかすると……と、計測器の問題も疑います」

 しかし、そこがテストベンチ担当の腕の見せ所なのだと、現在のテストベンチ担当である河合は語る。

「佐伯さんがおっしゃる通りで、計測器の問題なのか、本当の結果なのか、よく悩みます。ですが、それぞれの担当者に担当のテストベンチが割り当てられています。完全にその人専用というわけではないですけど、主に僕が担当している設備というのがあって、そこでちゃんと信頼できるテストができる設備にしているかというところも、僕らの腕の見せ所です」

1/2ページ

最終更新:3/18(月) 18:37
motorsport.com 日本版

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事