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HRD Sakura連載「テストベンチは面白い!」第3回:継承される“1馬力への厳しい目”

3/18(月) 18:37配信

motorsport.com 日本版

受け継がれる伝統

 HRD Sakuraには複数(詳細な数は機密事項とのこと)のテストベンチがあるが、自身の担当ベンチが割り当てられ、テストだけでなく設備のメンテナンスまで任される。そして、自分たちのベンチの精度は「100%」だと自負しているという。

 佐伯LPLによると、そういった情熱は昔から変わらず受け継がれてきたものだという。

「他のメーカーさんはどういうふうにしているかは分かりませんが、うち(ホンダ)の場合は1回担当したベンチは基本的には長く(その人が)使いますね」

「多分、HRD Sakuraの中でみんなが(それぞれの担当ベンチの精度は)100%だと思っているはずです。自分が担当しているベンチで0.5馬力でも0.3馬力でも(正確に)評価してやるぜ! という意気込みで使っていると思います。それは昔から変わらないかなぁ……」

「私たちの時のダイナモって、本当に重りを載せているようなダイナモでした。ちょっと時間が空くと、想定される馬力の重りを載せて針の位置を見て『よし、今日もズレていない』というのを必ず確認していました」

「朝一番でチェックしたら、どのくらいズレるのか? 昼はどうなんだ? 夏場、冬場はどうだ? というのは、時間がある度に確認していました」

「そうでないと、1馬力、2馬力の評価というのはできないです。当時の600馬力、700馬力の中の1馬力というのは、ほんのわずか(の差でズレてくるもの)なんですよね。でも、そこで判断ミスはしたくないので、自分たちのベンチは相当大事にしています」

テストベンチの精度

 確実なテストを行うために、設備の精度と信頼性を担保するのも、テストベンチ担当の仕事……。この想いは、しっかりと河合にも継承され、今度は彼の手から次の世代に継承されようとしている。

「(テストベンチは)“エンジンの性能を上げる”、“エンジンの信頼性を伸ばす” 仕様を決めるだけではなくて、ちゃんとしたテストができる設備にするのも、ひとつ大事なことです」

「もちろん仕事なので、(自分の担当ベンチを)他の人に使われたくないとは思いません。逆に他の人が使った時に、使いやすいベンチにしておきたいなと思っています。結局、この仕事はひとりじゃないですし、ひとりでできることは本当に限られています。協力してやらなきゃいけないので、他の人に嫌々貸すとかではなくて、普通に使ってもらいます」

「その時に“使いやすいベンチだな”と思ってもらえれば、それがその人が(本来)使っているベンチにも波及していきます。そうなるとHRD Sakura自体が良くなっていくと思うので、それを心がけています」

 だからこそ、河合は普段仕事では妥協することなく、時には同僚にも厳しく指摘をすることもあるという。

「そのために、自分以外のところで設備に対して甘いところがあったりすると、口すっぱくキツい言い方をすることもあります。もちろん同じベンチで組んでいる相方にも言いますね」

「そうやっていくうちに信頼関係もできてきますし、言わなくてもやってくれる……という関係になっていきます。だから、相方というかパートナーの存在というはすごく大事です」

「信頼できるパートナーと、信頼できる自分のベンチで(テストを)やるから、効率の良いテストと確実な結果が出せます」

 私たちが普段から何気なく使っている「1馬力、2馬力」という単語。こうして言葉として口にするのは簡単だが、その出力を正確に評価するために、実際にはこれだけ手間暇がかけられ、そして熱意が込められているのだ。

 そうして出来上がったエンジンが、2019シーズンもいよいよ始動しようとしている……(第4回へ続く)

吉田知弘, 田中健一

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最終更新:3/18(月) 18:37
motorsport.com 日本版

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