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山中の廃校、そば店で活況 土日祝日だけ営業「もみの木庵」 /大多喜

3/18(月) 11:25配信

千葉日報オンライン

 千葉・大多喜町の景勝地、養老渓谷と麻綿原高原にほど近い場所にある旧老川小学校会所分校。児童の姿が消えたレトロな校舎は、地域活性化を願う住民の手でそば店「もみの木庵」に生まれ変わった。休日になると打ち立てを求める観光客でにぎわう。

 会所地区は第2次大戦後の入植地。分校は1947年5月に開校し、50年に木造平屋建て463平方メートルの校舎が完成した。全校児童数は61年の37人をピークに平均20~30人が通ったが年々減少。2000年度は11人で、翌年3月に54年の歴史に幕を下ろした。

 農業が主産業の地区。閉校後、分校跡地活用へ住民が農産物の直売や花の栽培体験などに乗り出したが、手応えはいまひとつ。並行して当時の副知事が、得意としていたそば打ちを個人的に住民へ指導した。房総半島内陸部にある地区は寒暖の差があり、そば栽培に好適。地区有志が腕を磨いて04年にそば屋をオープンした。スタッフに勤め人が多いため、土日祝日のみの営業。名前は校舎周辺に広がるモミの木の森にちなんだ。

 創業前、校舎内の床は傾き、テーブルもなかった。予算は少なく、運営委員会会長の佐藤雄隆さん(71)は「全部自分たちで改装しましたよ」と振り返る。三つある教室の床を全部張り直し、テーブルも木材で自作。道具もなく、そば包丁は鉄板を加工、麺棒は手すりを素材にしてそろえた。

 一方で、教室の黒板や時間割表、廊下の壁にも貼ってあった習字や絵といった学習成果は廃校時のまま。佐藤さんは「学校の面影や歴史を地域の遺産として残したい」と狙いを語る。教室の天井にある染みを指さして「私が雑巾を投げた跡」と苦笑しながら回想し、「愛着のある母校が廃れる姿は見ていられない」と力を込める。

 使用するそばは近くの1・8ヘクタールの畑で育て、営業日の朝からそばを打って出来たてを提供する。子どもたちの夏休みの時期と麻綿原高原にアジサイが咲く6~8月、新そばの収穫と養老渓谷が紅葉する11、12月がハイシーズン。これまでで最高一日約240人から注文を受けたといい、「10人ほどのスタッフでは手が回らない」と多忙な日を話した。

 リピーターも多く、毎週来店する人も。ただ、駅から遠く、高速道路のインターチェンジ(IC)から約1時間かかるため、荒天時の客足はまばら。過疎化した地区に若手は少なく、高齢化するスタッフの後継者不足も課題だ。

 佐藤さんは分校周辺に粟又の滝や内浦山など自然豊かな名所が点在することをPRし、「分校は周遊観光の中心になれる」と強調。「おいしい一杯を提供し続けて魅力を発信し、移住者が増えて後を継いでもらえれば」と地道な活動が実ることに期待を込めた。

◇土日祝日のみ営業

 そば店「もみの木庵」は土日祝日の午前10時~午後3時まで営業している。もりそばやかけそば、かも南蛮にそばがきなどメニューは19種類。殻ごと粉にした田舎そばと殻を外してひいた白そばから選べる。料金は400~1500円。そば打ち体験もあり、スタッフの指導の下、約2時間かけて5食分を打つ。最寄り駅のいすみ鉄道と小湊鉄道の上総中野駅まで約10キロ。圏央道市原鶴舞ICまで約27キロ、同木更津東ICは約30キロ。問い合わせは同店(電話)0470(85)0255。

◇文・写真 勝浦支局 廣田和広

最終更新:3/18(月) 11:25
千葉日報オンライン

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