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有識者が見た『ディビジョン2』のリアリティとは? そして開発者が描きたかった“希望”とは? 識者に訊いた! - ディビジョン2 ファミ通特設サイト

3/19(火) 22:02配信

ファミ通.com

 未曽有の災害に遭ったワシントンD.C.をリアルに描く『ディビジョン2』。その描写を、有識者はどう見たのか? ふたりの識者に話を訊くことができました。

 ひとりめは歴史学者にして作家であり、ユートピアとディストピアをテーマにした著作を数多く輩出するグレゴリー・クレイズ氏。1992年からロイヤル・ホロウェイで政治思想史の教授を務めており、ユートピア主義と過激主義の歴史から、約50巻の一次資料を編集した方です。

 ふたりめのトリシア・ワックテンドルフ氏は、デラウェア大学の社会学教授でありながら、世界でもっとも有名な災害研究センターでディレクターを務めており、災害の社会科学的側面に焦点を当てた活動を、世界中を舞台に展開している方。

 それぞれの分野におけるプロフェッショナルは、本作で描かれる世界をどのように見たのでしょうか? そして、本作の開発者はこのゲームで何を描きたかったのか? 開発スタッフも交えたインタビューをふたり連続でお届けします!


――グレゴリーさんは作家として、『ディビジョン2』の世界をどう見ましたか?

グレゴリー 初めてこのゲームを見たとき、いちばんおもしろいと思ったのは、アイコン的な意味を持つ建造物を上手に選択して登場させていることです。アメリカの文化に何らかの関係を持つ人なら誰もが目にする議会議事堂、ホワイトハウス、ナショナル・モールにある有名な建物が、ゲームの設定に沿って出てきます。これらの建造物は権力のシンボルであり、世界でもっとも権力のある政権のシンボルです。


 これらの建造物が崩壊し、破壊されているのを見るのは衝撃的でした。覚えている人も多いと思いますが、このような状況の映像化に初めて成功したもののひとつに『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)という映画があります。この映画には、自由の女神が水浸しになるシーンがありました。このゲームでは、あのシーンから受けた衝撃を増幅した効果を発揮しています。視覚的にも、とても衝撃的ですね。いわば究極とも言える政治的、社会的な権力のシンボルが破壊されてしまったら、ほかに何を破壊すればいいと言うのでしょうか?(笑)


――グレゴリーさんは多くのディストピアをテーマにした作品を描かれています。

グレゴリー ディストピアというテーマは19世紀の終わりからありましたが、第二次世界大戦後から人気を博すようになりました。これには、核戦争への脅威が重要な意味を持っています。20世紀初頭のディストピアは非常に政治的なもので、資本主義や国民社会主義への風刺、スターリン主義への風刺などが含まれていました。


 その後、20世紀後半には新しい脅威が現れるとともに、ディストピアも新しい形に変わりました。19世紀から続く巨大企業の脅威がさらに信憑性を増し、『ディビジョン』でも取り上げられたように、生物学的な発展がウイルスのパンデミックにつながる可能性も、説得力を持つようになりました。

 20世紀から21世紀に変わるころには、人口増加による気候の変化も加わりました。1960年代から近代環境主義者が訴えてきて、いまも重要視すべきことのひとつに、殺虫剤による被害もディストピアのテーマになるような時代です。多くの人、特に若い年代は地球温暖化、気候変動、壊滅的環境破壊を思い浮かべるでしょう。対処しなければ将来どうなるのか大きな不安を抱えていますから。

――ジュリアンさんはいまの話を受けて、『ディビジョン2』では何をプレイヤーに感じ取ってほしいと思いますか?

ジュリアン とてもいい質問ですね。前作は最初から明るい物語ではなく、暗さに満ちていました。しかし、私たちが『ディビジョン2』で伝えたいと思ったのは、市民の結束、調和の価値から生まれる希望……ともに何かを構築するという希望です。本作における社会の再生は、今日の私たちが考えるものとは違うかもしれませんが、必ずしもそれ以下のものではありません。まったく新しい“日常”に向かって再生を進めていく姿を描きました。そこを皆さんに感じ取ってもらえると、うれしいです。



――トリシアさんは災害リサーチャーとして、東日本大震災の後に東北へ行かれたそうですね。

トリシア 私は災害が社会と人間に与える影響に注目しています。日本のリサーチャーと協力して、宮城県と岩手県のコミュニティを訪問しました。特に興味を持ったのは、高齢者や障害者が直面する問題でした。さらに、海沿いのコミュニティは甚大な被害に対処しつつ復興プロセスを考えなければなりませんでしたよね。

 復興が何を意味するのかは、被害を受けたコミュニティやそれぞれの家庭によって異なります。その中で何をすべきなのか、意見を出させていただきました。

――クロエさんは未曽有の被害を受けたD.C.を表現するために、どのようなリサーチをされたのでしょうか?

クロエ さまざまな文書に目を通し、専門家や地元の人たちにも話を聞きました。地元の人たちがこの街をどう思っているのか、それを知ることはとても重要です。地元の人は街をよく知っていますから。

 ゲームの開発段階に応じて、異なる文書に目を通す必要がありました。建物についてはGISを使いました。皆さんのスマホに入っているGPSもこのデータを使っています。これで、最初の層を作りました。すべてが現実と同じ場所に設置されているマップです。そして、ウイルスが7ヵ月前にニューヨークを襲ったという設定から、この街の変化を描いていきました。

 災害後には、建物は異なる目的に使われることが多いので、この建物を敵勢力や市民はどう使うだろうかと想像しました。さまざまなアングルで街を眺めて、プレイヤーの経験に一貫性を持たせるように努力しました。

トリシア 実際の災害でも同じことが言えます。被害を受けたエリアは大きく変わってしまいます。ランドマークや目印になっていたものも変わるかもしれません。9.11の同時多発テロの後にニューヨークでリサーチを行いましたが、慣れ親しんだ場所でも東西南北がわからないという事態が発生しました。物理的に様子が変わってしまったからです。

 東日本大震災でも、学校の校舎がシェルターとして活用されたりしましたよね。それ以外にも、社会的な環境が変わります。多くの人がボランティアで入ってくることで、お互いに誰が何をしているのかを把握するまでに時間がかかりました。災害時こそ、各人が物理的環境、社会的環境を把握しながら先に進まなくてはいけません。

 ゲームではワシントンD.C.がこのような状況にあります。知っている街にも関わらず変わってしまっているので、その中から知っているものと変わっているものを同時に把握して、市民たちは辻褄を合わせなくてはならないのです。

――ゲームでは屋上で作物を育てるなど、限られたリソースを使って社会を復活させていきますが、これは現実的なのでしょうか?

トリシア 災害に遭った人たちはとてもクリエイティブに、いろいろな行動を即興で取ります。必要なツールを作ったり、輸送用のリソースを違う目的に使ったり、手元にある物を工夫して家に使ったりします。医療設備が本来とは違う役割を果たすこともありますよ。畑を作り、魚を捕ってコミュニティを助け、他人にその方法を教える人たちもいます。

 東北でも、漁村で貯蔵していた食物を避難所のコミュニティに分けていました。ゴミの移動だけでなく、援助に手続きが必要な人たちの子どもを周囲の人たちが世話するといったように、互いに助け合い、自分だけではなくコミュニティ全体を前進させていました。これと同じことをゲーム内の市民たちはくり広げていると思います。


――ゲーム内で描かれる、復活が進んでいく様はとてもリアルでした。

クロエ 実際にあった例を参考にしています。歴史は素晴らしい教師ですから(笑)。戦争だけでなく、近年のハリケーンや地震などで災害に遭遇した人たちがどのようにそれを克服していったのかを見てきました。ワシントンD.C.は、職を求めてよその州から多くの人が入ってくる土地です。その中には、ハンティングやフィッシングが盛んな州の出身で、スキルを持った人もいるでしょう。
 
 本作での住民も、つながって、お互いのスキルを活かせるようになることが重要となります。ジョージ・ワシントン大学の学生は電気工学を学んでいるので、ラジオ局のオーナーになります。このラジオを使ってほかの仲間とコミュニケーションを取ったり、音楽を流したりしています。スキルと知識を災害後にうまく活かしている市民がたくさん登場するのです。


――本作のようなことが実際に起きたら、私たちはどうすべきなのでしょう?

トリシア 災害時に何をしたらいいのか、それは災害が実際に起きる前に行うことに依存しています。近隣やコミュニティの人たちと人間関係を構築するだけでなく、政府機関やコミュニティ・ベースの組織、非営利団体について知っておくことが大事です。

 コミュニティの中には、助けが必要な人もいます。移動手段だけでなく、食料など物資の入手手段を持たない人、身体的理由で手助けが必要な人など、さまざまです。このような人たちが取り残されたままの社会は、うまく動きません。あらかじめ、助けが必要な場合はどうしたらいいのか、どのような助けができるのかを把握しておけば、どんな環境に置かれても一丸となって動けます。災害の前の投資こそ、災害後に活かされるのです。

最終更新:3/19(火) 22:02
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