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タレントの薬物問題に、企業はどう対応すべきか

3/19(火) 8:32配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「おい! ウチのCMタレントは大丈夫だろうな!」なんて心配の声が、日本中の企業に溢れかえったのではないか。

ピエール瀧さんの逮捕を受けて、所属事務所がコメント

 ピーエル瀧こと瀧正則さんがコカイン使用で逮捕されたことを受け、多種多様な企業がその対応に追われ、中には目玉が飛び出るような巨額損失を引き起こしているからだ。

 まず、CMや広告に起用していたところがすべて「お蔵入り」というのはお約束として、今回注目を集めているのは、役者やアーティストとして関わっている作品までその憂き目にあっていることだ。

 例えば、ソニー・ミュージックレーベルズは、瀧さんが所属する「電気グルーヴ」のCD・音源を回収および出荷・配信停止することを発表。NHKも『あまちゃん』や『龍馬伝』など、瀧さんが出演したすべてのドラマを全話配信停止に踏み切っている。

 さらに、セガゲームスは、瀧さんがキャラクターモデルとして登場するPlayStation 4用のゲームソフト「JUDGE EYES:死神の遺言」まで出荷やダウンロード販売、製品Webサイトの掲出を自粛すると決定した。

 当然、これだけの自粛ラッシュとなれば、損害はすさまじい。一部報道では、瀧さん側への損害賠償請求は数十億なんて話もある。

 こういう話を聞けば聞くほど、背筋が冷たくなる企業の人間も多いことだろう。

 大枚をつぎ込んだ広告やエンタメ作品が、ある日を境にパアとなる。社内外から「なんであの人間を起用したんだ!」というお叱りを受けて、詰め腹を切らされる。サラリーマン人生最大の危機だ。

 ただ、そのような心配はもうしなくていい時代が来るかもしれない。

 企業イメージに直結するCMや広告の停止はいたしかたないが、純粋なエンタメ作品に関しては、坂本龍一さんが苦言を呈したように、「作品に罪はない」という機運が高まっているからだ。

忌野清志郎さんの言葉

 今、SNSで話題になっているのは、歌手の槇原敬之さんが薬物所持で逮捕された際に、CDが自主回収されたことに対して、歌手の忌野清志郎さんが述べた以下の言葉だ。

 「槇原のを回収しているのなら、ビートルズやジミヘンも回収しろって」

 ご存じのように、世界ではアーティストの作品と薬物は分けて考えられる。平和を愛する人たちが教祖のようにあがめているジョン・レノンは、薬物使用の過去を公言していた。2010年にコカイン所持で逮捕されたブルーノ・マーズのときも自主回収などされず、逮捕後も普通に作品は評価され、18年にはグラミー賞で最優秀レコード作品賞を受賞している。

 「それはホラ、海外はドラッグに甘いから」という人がいるが、そういうカルチャーギャップ的な話ではなく、あちらの社会では、薬物依存を明確に「病気」と捉えていることが大きい。

 薬物依存は本人が向き合う私的問題であって、社会全体でこん棒を振り上げて追いかけ回して、仕事や過去の実績を奪って、破滅へ追い込むような類の話ではない。むしろ、社会としては、薬物依存患者がその誘惑を断ち切って、社会に復帰することを手助けすべきだというわけだ。

 この根底には、創作活動と人間性を分けるという考えがある。人類の歴史を振り返れば、芸術、演劇、音楽、映画などは、必ずしも道徳的な人間たちだけが生み出してきたわけではない。よく日本で言われる「薬物を使っている人間の音楽や映像はドーピングで認めない」とはならないのだ。

 このような「作品」に対する考えが広まれば、企業のタレント不祥事に対する「責任の取り方」も今とだいぶ変わっていく。おそらく、こんな対応がオーソドックになっていくはずだ。

A:全面自粛(企業イメージ向上のためのテレビCMや広告)

B:一部自粛(公共電波で放映されるドラマやバラエティ)

C: 継続(映画、音楽コンテンツ、ゲームなど有料コンテンツ)

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最終更新:3/19(火) 8:32
ITmedia ビジネスオンライン

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