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「破産者マップ」、プライバシーや著作権の問題は? 弁護士に聞いた

3/19(火) 17:13配信

ねとらぼ

 破産者の住所・氏名を公開して物議を醸したサイト「破産者マップ」。サイトは閉鎖されたものの、集団訴訟に向けた動きも見られ、問題が決着するのはまだ先となりそうです。破産者マップの問題点について、弁護士に見解を聞きました。

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 同サイトは官報に掲載された破産者情報(名前や住所、事件番号など)をGoogleマップで見られるようにしたもの。「プライバシーの侵害ではないのか」「いじめや自殺を招きかねない」との批判が寄せられ、3月19日に閉鎖となりました。

 著作権、プライバシーなどの点でどんな問題があったのか、グラディアトル法律事務所の森脇慎也弁護士にうかがいました。

―― 官報に掲載されている内容を転載することは何らかの権利を侵害することになりますか

森脇弁護士 自己破産をすると、2回官報に掲載されることになります。1回目は破産手続きの開始決定を受けたとき(破産法32条1項、10条1項)、2回目は免責許可を受けたときです(破産法252条3項参照)。

 破産手続きを進めて免責許可の決定が確定すると、破産者が負っていた借金などについてその支払義務を免れることになります(破産法253条1項)。債権者は免責許可の決定に対して不服申立てをすることができます(破産法252条5項)。

 多数の利害関係人が絡む破産手続では、免責の効力が発生する日が画一的に決定される必要があり、その不服申立ての期間が官報に掲載されてから2週間と定められているので官報に掲載されることになっています(破産法9条参照、最高裁平成12年7月26日決定(事件番号平成12(許)1)参照)。

 官報の編集・発行業務は、現在は独立行政法人国立印刷局が行っています。しかし、上で述べた通り、官報に破産者の情報を載せるのは破産手続において必要だからであり、著作権は発生しないと考えられています(著作権法13条3号)。そのため、運営者が官報の記事をもとに破産者マップを作っていても、印刷局や裁判所の著作者としての権利を侵害するとはならないでしょう。

―― 官報以外のサイトに破産者が掲載されることは、破産者本人のどんな権利を侵害することになりますか

森脇弁護士 プライバシー権侵害、名誉権侵害になると考えます。

 プライバシー権の侵害にあたるとする基準は以下の通りです。(1)一般にはまだ知られておらず、公開されることを望んでいない私生活上の事実もしくは事実のように受け止められるおそれのある情報(プライバシー情報)が存在すること、(2)誰にでも見られる形で公開・公表すること、(3)公開・公表されることによってその情報を公開・公表された人が不快・不安を感じること。地図上で破産者の情報を公開することは、明らかにプライバシー権の侵害に当たると考えます。

 法律上の名誉とは、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価」とされています。人に対する社会的な客観的評価を下げる言動をすれば、名誉毀損に当たります。破産の制度は、債務者について経済生活の再生の機会を確保するためのものですが、債務を完済できなかったという事実は、一般的にみて社会的評価を下げる可能性のあるものと扱われると考えます。従って、地図上で破産者の情報を公開することは名誉権侵害になると考えます。

 特定の事実が公共性を有する事項である場合、プライバシー権侵害や名誉権侵害にならないこともあります。しかし、個人破産の情報は、上述の通り、債権者に不服申立の機会を与える限度で知らせればよいのであって、半永久的に一般的にアクセス容易なWeb上で公開され続けるべき性格のものとも思えません。従って、公共性のある事実とはいえないと考えます。

―― 破産者マップに個人情報保護法上の問題はありますか

森脇弁護士 破産者マップには「氏名」「住所」が記載されており、特定の個人を識別できるものといえるので「個人情報」ということができるでしょう(個人情報保護法2条1項1号参照)。しかし、破産に関する情報は同法2条3項の「要配慮個人情報」とはならないようです。

 同法2条5項の「個人情報取扱事業者」とは、「個人情報データベース等」を「事業」の用に供している者をいいます。「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物をいうので、破産者マップはこれに当たることは明らかと考えます。また「事業」とは、一定の目的を持って反復継続して遂行される同種の行為であり、営利事業のみを対象とせず、法人格のない任意団体や個人であっても個人情報取扱事業者に該当しえます。そのため、破産マップ運営者は、「個人情報取扱業者」であるということができます。

 同法15条以下では個人情報取扱事業者の義務が定められています。まず同法15条では、個人情報の「利用目的」を特定しなければならないのですが、破産者マップでは、個人情報の「利用目的」が定められているか疑問です。

 また同法23条2項では、本人の同意を得ない場合の第三者提供の際の手続きが定められています。この際の要件として「個人情報保護委員会」への届出があげられており、破産者マップの運営者がこの届出をしていれば同条違反とはなりません。この届出があるかの確認方法として、個人情報保護委員会のWebサイトで「オプトアウト届出書検索」を行うことができます。しかし破産者マップの運営主体が分からないので、必要な届出をしているかは不明です。

 同法15条違反や23条違反による罰則を直接定めた規定はありません。しかし個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者の義務違反について、是正措置の勧告・命令を行うことができます(同法42条)。是正命令に従わない場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります(同法84条)。

 破産者マップが明らかに個人情報保護法違反となる行為をしているとは今のところいえません。しかし違法な行為がある場合には、今後、個人情報保護委員会による勧告・命令等がなされることも十分に考えられるところだと思います。

―― 破産者本人が破産者マップ側に掲載停止を申し入れることや、民事訴訟を起こすことは可能でしょうか

森脇弁護士 破産者としての情報を公開された人たちは、運営者に対して、プライバシー権侵害および名誉権侵害に基づく損害賠償請求をすることができると考えます。

 また判例では、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、または将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるとしています(北方ジャーナル事件)。そのため、掲載停止の主張も行うことができると考えます。

―― 破産者マップの運営者を調べることはできますか

森脇弁護士 破産者マップは、3月18日時点では、日本国外のコンテンツ配信サービスを使用して運営されているようです。破産者マップの運営者を調べるためには、この会社に対して開示請求をする必要があります。

 またTwitterでも破産者マップの運営者と思しき人物が発言しています。Twitterの運営元に対し開示請求を行うことも考えられると思います。開示請求を行う際には、裁判所が決定する暫定的処置である仮処分を行うのですが、今回の場合、直接的にはTwitterを用いて破産者の権利侵害をしているわけではないので、権利侵害の明白性をどのように基礎づけるか、保全の必要性をどのように説明するかが問題となってくると思います。

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 破産者マップは閉鎖されましたが、破産者マップ被害対策弁護団の団長である望月宣武弁護士は「発信者の特定や、再発防止など、やるべきことは続けます」とTwitterで述べています。弁護団は、米国サーバ会社に対する発信者情報開示、損害賠償の手続きなどにあたる費用をクラウドファンディングで募っています。

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最終更新:3/19(火) 17:13
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