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フィアットのバッヂを付けたフェラーリ?驚異的なコストパフォーマンスをもつ1台

3/20(水) 12:02配信

octane.jp

フェラーリに流れるレーシングカーの血脈を最も手頃な価格で手に入れられるのがフィアット・ディーノ・クーペだ。その誕生の裏には、フェラーリの傑作V6エンジンでF2レース参加資格を得るという野心があった。

アルミ合金製V6エンジンはヴィットーリオ・ヤーノの設計であり、エンツォの息子アルフレディーノが開発に関わったと言われている。このエンジンはフェラーリ・ディーノ206、246GTにも搭載され、また不朽の名作ランチア・ストラトスにも載せられていた。

そしてベルトーネによる小気味よいデザインのフィアット・ディーノ・クーペならば、そのエンジンを、他の名車と呼ばれるフェラーリの、」わずか10分の1の値段で手に入れられるのである。

さらにディーノ・クーペは実に独特の存在だ。発表は1967年。同時代にどのような2+2モデルがあるか考えてみると、まずアストンマーティンDBSとフェラーリ330GT 2+2が思い浮かぶが、それはあまりのも高価過ぎる。ジャガーEタイプ2+2ならイギリスにおける新車時の発売価格は相当安かったものの、フィアットとジャガーのどちらを買うべきか、それを天秤にかけるエンスージアストはいないだろう。

また同じことはポルシェ911にも言える。ディーノ・クーペはとても911のような“ビースト(野獣)”とはとても呼べない。かといって例えばフォード・カプリ、MGC GT、アルファロメオ1750GTVのような、同時代のモデルと比較しては、これもディーノ・クーペに対して失礼だろう。ディーノ・クーペには、まぁそれだけの価値はある。フィアットブランドが嫌いでなければ、ハードの評価自体はアストンやフェラーリのスリップストリームにぎりぎり食らいついていけるほどポテンシャルは高い。

事実、それはまったく誇張ではない。有名な自動車評論家L. J. K. セトライトが、2.4ℓのディーノ・クーペについて、世界最高クラスと評しているくらいだ。また、『Autosport』誌の試乗記事で知られるジョン・ボルスターも、「ずば抜けて優秀なドライバーズカー。と同時に目に心地良いラグジュアリークーペでもある。…高度なレーシングデザインを誇るこれまでのスポーツカーと違い、ディーノには世界的大企業のフィアットがついている。従って、甘やかされたステータスシンボルではなく、極めて実用的な移動手段になり得る」と語っている。

なるほど、それは一理ある。先ほどは911と比較してみたが、911は間違っても「ラグジュアリークーペ」ではない。
 
フィアット・ディーノ・クーペの最初の仕様は、アルミニウム製DOHC 2.0ℓV6エンジンで、出力160bhp、0-60mph加速8秒、最高速120mphであった。その後1969年に仕様を変更し、以後はフェラーリが生産している。エンジンは2.4ℓ鋳鉄製ブロックとなり、出力180bhpに向上。より頑強なZF製5段ギアボックスを採用し、サスペンションはフィアット130サルーンの独立懸架式コイルスプリングへと改良された。

では短所を挙げよう。まずボディがイタリア製品特有の錆びやすいスチールであること(ただし今残存しているものはほとんどが対策済みだ)。そしてもちろんエンジンの維持費だけはフェラーリ並みに高い。また、すべてが左ハンドルであり右がないこと。

だが、これほどのコストパフォーマンスを発揮するクーペは、この時代ではおそらくほかに見当たらない。同じフィアット・ディーノでもピニンファリーナがデザインしたスパイダーの場合、典型的なもので価格は3倍かそれ以上もする。無茶を承知でフェラーリ330GT 2+2や、さらに365GTC/4と比較したらどうなるか。それも最早言うまでもない。


発売当時
1967年、フィアット・ディーノ・クーペの英国での発売価格は3737ポンド(約55万3076円)で、独特のマーケットに位置していた。当時アルファロメオ1750GTVは2248ポンド(約33万2704円)、ジャガーEタイプFHC 2+2が2458ポンド(約36万3784円)、ポルシェ911Lが2996ポンド(約44万3408円)である。もっと高価格帯には、フェラーリ330GT 2+2の6516ポンド(約96万4368円)、アストンマーティンDBSの5718ポンド(約84万6264円)があった。

好不況の波
1980年代後半のバブル期、ディーノ・クーペの相場は通常1万ポンド代前半。たまに1万ポンドを下回ることもあったが、最高では2万ポンド近くにも上った。ディーノ・スパイダーはその2倍、フェラーリ330GT 2+2は最低でも8万5000ポンド(約1258万円)と4倍以上もした。ただ面白いことに、アストンマーティンDBSはディーノ・クーペの2倍まではいかなかった。そして市場が落ち込んだ1990年代には、イギリス国内のオークションでディーノ・クーペが1万ポンドを超えたことはない。

現在
生産台数約6000台程度。購入するチャンスはそれほど多くはない。マーケットでは後期の2.4ℓモデルが好まれる。2.0ℓモデルは少々手が掛かるものの、フェラーリ・ディーノ206とのつながりで“純血主義者”には人気がある。つい最近、エンジンのオーバーホールと再塗装で1万2000ポンド(約177万6000円)ほどかかる2.0ℓ クーペが2万1150ポンドで(約313万円)落札されている。個人取引やオークションの大半が2万~3万ポンドだが、現在出ている中には1967年2.0ℓクーペで4万4995ポンド(約665万9260円)のものもあった。何の手も入れる必要がないからだろう。ただ、その値段だとしてもディーノ・スパイダーのわずか3分の1以下である。そしてうれしいことに、高価なフェラーリと並んだとしても、この粋なフィアットなら何も恥ずかしいことはないのだ。

Octane Japan 編集部

最終更新:3/20(水) 12:02
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