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ロシアからホッキョクグマがいなくなる 政府の北極圏開発追い打ち

3/20(水) 10:52配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【3月20日 AFP】今年2月、北極圏に位置するロシアの集落で50頭を超えるホッキョググマが食べ物を求めてうろつき、非常事態宣言が発令されたが、あの騒動は、これから起きることの序章にすぎないのかもしれない。温暖化が進む北極圏でロシア政府が活動範囲を広げるほど、ホッキョクグマと人との衝突は増えていくとみられている。

 ホッキョクグマが現れたのは、極北部ノバヤゼムリャ(Novaya Zemlya)列島の村、ベルーシャグバ(Belyushya Guba)だ。地元当局は1週間にわたって非常事態宣言を出し、ロシア政府に救援を求めた。

 徘徊(はいかい)するクマたちの写真がインターネット上で拡散すると、地元当局がごみ捨て場を放置していたせいでクマが生ごみをあさりに来たのだろうと非難する声が一部から上がった。だが専門家らは、ホッキョクグマが人のこれほど近くにまでやって来た主な理由は、海の凍結時期が遅れているからだと説明する。そのためホッキョクグマはアザラシを狩ることができず、別の食料を探しに行かなければならない。

 ロシア政府は、エネルギー事業や軍事戦略の利益を追求する一方で北航路(Northern Passage)を活用するため、北極圏の活動範囲を拡大している。それに伴い、人とホッキョクグマの衝突はさらに増えるだろうと専門家らは予測する。

「ホッキョクグマは複数の地域で生活の足場を失い、陸に上がって来ている」と、生物学者のアナトリー・コチネフ(Anatoly Kochnev)氏は述べた。

 ノバヤゼムリャ列島が面するバレンツ海(Barents Seas)は、ホッキョクグマの生息圏の中では最速で氷の融解が進んでいる。米非営利団体「ポーラー・ベアズ・インターナショナル(Polar Bears International)」によると、海面が凍結する期間は過去数十年で年間20週も減っている。

 ベルーシャグバ村の救援にモスクワから駆け付けたセベルツォフ研究所(Severtsov Institute)のイリヤ・モルドビンツェフ(Ilya Mordvintsev)氏によると、以前はこの近辺の海面は12月には凍結していた。「何千年にもわたって、この時期になるとホッキョクグマはアザラシを狩りに移動していた。ところが今年は浜辺に来ても氷がなかった」。先月、集落をうろついた多数のホッキョクグマはその後、海面が凍結したため、別の場所に移動したが、「今後、数年のうちに同じことが起きる可能性は排除できない」という。

■ホッキョクグマの安全を脅かす軍施設を批判して解雇

 ノバヤゼムリャ列島は旧ソ連時代、核兵器の実験場とされていたため立ち入りが制限されている。だが、最近になってロシア軍が施設や飛行場を建設。近くのパブロフスコエ(Pavlovskoye)では、広大な鉛・亜鉛鉱山の採掘計画も進められている。昨年には、軍警察の新たな部隊がベルーシャグバ村に派遣されたことで、家族など軍関係者を含めた2000人以上がこの地に移り住み、学校や大型スポーツ施設などもできている。


 ロシア政府は2014年、北極圏を軍の戦略的要衝として発表。翌年、生物学者のコチネフ氏はブログに感情的な投稿をした。軍施設の建設現場近くでホッキョクグマが爆発物をのみ込む事件があったからだ。新基地を批判した同氏は、それまで勤めていた国立公園の職を解雇された。

 コチネフ氏は、ホッキョクグマの対処について、現在は、いかに撃退するかばかりに重点が置かれているが、接触自体をなくす方向で施設を整備する方が優先されるべきだと訴える。そして、北極圏の開発者への助言として、「おりの中に自分たちが入るような形を取り、クマたちを自由に移動させるべきだ」と話した。

 コチネフ氏はまた、政府による北航路の開発計画も、ホッキョクグマにとって問題だと指摘した。ホッキョクグマが餌とする「アザラシの繁殖地で砕氷船が常に稼働していると、アザラシの生息数にも影響するから」だ。

■ホッキョクグマが環境変化の少ないカナダ北部に移動する可能性も

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は昨年、アジアへの新たな貿易路とうたっている北航路の輸送量を現在の年間1800万トンから2024年までに8000万トンに増やすよう指示した。

 コチネフ氏によれば、これまでのところホッキョクグマは単独で狩りをするのではなく、集団で食料を探すことを覚え、不利な環境の変化にも適応している。しかし、「海面が凍結しない期間がさらに2~3週間延びれば、環境変化がより少ないカナダ北部へと移動してしまう可能性もある」という。

 そうして、ロシア領土に残されるホッキョクグマは、最終的に人と対立して殺されてしまうだろうと、コチネフ氏は話した。

 映像は、監視カメラが捉えた民家の近くを徘徊するホッキョクグマ。1月29日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:3/24(日) 14:17
AFPBB News

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