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スガシカオの異変「労働なんかしないで光合成だけで生きたい」

3/20(水) 6:50配信

BuzzFeed Japan

『おれだってギター1本抱えて 田舎から上京したかった』

アルバムにはこんな楽曲も挿入される。夢のために故郷を離れる”上京”は苦労を伴う分、人が成長するための転機とも言える。

『東京』というタイトルの曲を、スガは書けない。

すぐに街並みの変わる東京で生まれ育ったからだ。

「昔から地方出身のミュージシャンがすごく羨ましかった。一度捨てても、いつか戻れる聖地が欲しかった。自分が生まれ育った場所は、もう違う建物が建っちゃってるし……」


スガが羨ましいと思うのは、単なる成長物語ではない。思い切りの良さだ。

「この歌の後半は、尾崎の小説に憧れて書いたんですよ」

クリープハイプのボーカル尾崎世界観の小説『祐介』への羨望が歌詞になった。東京出身の尾崎が描く物語に、胸を打たれて何度も読み返して言葉を綴った。
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水商売の女に食わしてもらって 好きでもないのにキスしたかった
4日間履いた下着裏ではいて アパートの電気止められたかった

何かに打ち込むあまり、ギリギリの状態になっていく。『祐介』には、そんなバンドマンの半生が描かれる。

羨ましい。素直にそう思った。しかし、同時に「じゃあお前にできるのか?」と自問すると「ちょっとできないな」と躊躇する。

「覚悟も根性もない。本当に煮え切らない。ヘタレなんです、俺は」

人生のネタ切れ

自身ではそう言いながらも、決してヘタレには見えない。実際、2011年には「このまま安全地帯でぬくぬくしてる環境に居続けたくない」との理由から独立。インディーズに活動フィールドを移した。

これまで当たり前にいたスタッフは離れ、バックアップもなくなった。そうしたギリギリの状態で制作し、メジャー復帰の一発目として掲げたアルバムが、先述の『THE LAST』だった。

サラリーマンからアーティストになり、成功を収めた。それでも築いた環境を一度捨て、自らの半生も作品に注ぎ込む。文字通り「ラスト」に相応しい作品を生み出してしまった。

「ネタ切れ」

冒頭の言葉には、こんな背景がある。やり尽くした先に、芽吹いたのが『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』だった。

これまで『イジメテミタイ』や『19歳』など、妖艶な歌詞や攻撃的なシチュエーションを描く楽曲が多くあった。今回はこれまで蓄積してきた色をなるべく排除し、逆の道を歩んだ。「とにかく前作から離れたかった」と語る。

ひとつのやり方が終わったのかもしれない。その予兆は少しずつあった。40歳を過ぎたころから、性格が寛容になったのだという。本人は茶目っ気たっぷりに話す。

「40歳までは、俺は手のつけられないぐらいドS体質だったんです(笑)。怒りの沸点が低いっていうのかな……ツッコまれるとすぐにカチンと来ちゃうタイプで。飲んでいても喧嘩になるくらいだった。でもドSが過ぎたのか、段々とヘタレな自分が愛おしくなってくるんですよね」

「老いのよさがMっ気なのかもしれない(笑)。ツッコミもボケもできるようになった。丸くなったというより、手数が増えたかな。交友関係も表現の幅も広がった」

失ったものは、あったのだろうか? そんな意地悪な質問をすると、笑いながら「思い浮かばない」と答える。そもそも「あの頃はよかった」と振り返るのが嫌いなのだ。

「みんな、高校生の時は『中学の時、よかったな』って思ってるんだよね。今、きみが20代で駆け出し故に仕事がうまく行かなくとも、10年後に今を振り返ったら『あの時よかったな』と思うんです」

「きっと、一生そう。10年後から見たら、今が一番いいんだよ。だから振り返っちゃいけない。良いことしか覚えてないからね(笑)」

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最終更新:3/22(金) 15:27
BuzzFeed Japan

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