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玉流館冷麺もアプリで注文…スマホに魅了された北朝鮮

3/20(水) 20:52配信

ハンギョレ新聞

私たちが知らなかった北朝鮮 急速に広がっていくスマートフォン

 北朝鮮で「知能型手電話機」と呼ばれるスマートフォン(スマホ)は、北朝鮮住民の日常になくてはならない存在となった。スマホが体から離れると、警報音が鳴るアプリ「金の鈴1.0」がその証拠だ。北朝鮮の住民たちは生活必需品となったスマホを、いかなる用途で使っているだろうか。スマホは北朝鮮社会にどのような変化を引き起こしているだろうか。

■スマホ、市場を動かす

「平壌(ピョンヤン)で事業をする時、スマホ3台を使っていた。スマホで(販売する)品物を購入し、(送った)代金が正確に届いたかを確認する。(商品を配達する)『サービ車』(サービス車=service-car)運転手と連絡し、約束の時間に合わせて(待ち合わせの場所に)出て、車が着いたら品物を下ろす。運転手が(スマホで)ショートメールや電話をして、リアルタイムで位置や到着時間を知らせてくれる。商売は時間の勝負だ。スマホは必須で不可欠だ」(平壌出身で2017年に韓国にきたCさん)

 「お金を稼ぎたいなら、貧しくてもスマホを買わなければならない。皆スマホでつながっている」(2017年に韓国にきた40代女性)

 スマホは北朝鮮の商人やビジネスマンの必需品だ。北朝鮮で生産した品物を中国で販売し、国外で品物を購入して費用を支払い、商品を受け取った後、市場に売り出す一連の過程に、スマホが中心的な役割を果たすためだ。例えば、ある北朝鮮の卸売業者が中朝国境地帯から中国の品物を持ち込む状況を想定してみよう。品物が近隣地域に到着すると、銀行の役割をする「送金責」は商人に電話でメッセージを送るか電話をして品物が届いたことを知らせる。業者は連絡責に連絡して「代金を支払ってほしい」と要請する。スマホのおかげで、リアルタイムで価格が形成され、商品が運送され、資金が支払われるようになった。一昨年韓国にきた40代の女性は「平壌では、他のものはなくても、スマホはみな持っている」とし、「市場で(商売をする)在庫がなくなった場合、それに合わせて注文を入れなければならないため」だと説明した。ホン・ミン統一研究院北朝鮮研究室長は「2000年代初めまではスマホが広く普及しておらず、地域別にコメやとうもろこしの価格が異なった。ところが、2000年代半ばにスマホの普及に伴い、商品の全国価格が形成され、国境と内陸地域の価格の差もほとんどなくなった。スマホが市場ネットワークを作り出した」と話した。ヤン・ムンス北韓大学院大学教授は「地域別の価格差が消えると、市場が質的に成熟する」とし、「モノを作る側にとっても規模の経済が可能になり、生産性と効率性が高まる」と指摘した。

 スマホは「サービ車」と結合し、相乗効果をもたらす。サービ車は、個人が機関や当局に登録し、送事業などに活用するトラックやワゴン車を指す。個人は当局に登録費や月収の一部を支払う条件でサービ車を運営する。平壌で販売業を行っていたCさんは「(商売に)サービ車が使われているが、運転手や北朝鮮の言葉で『話主』という人がサービ車に同乗する。その人と電話で連絡を取りながら、配送情報を共有する」と話した。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)は昨年5月、米国の韓米研究所を引用し、「北朝鮮の商人たちは、スマホを通じて市場のトレンドを把握し、仕入れ量と価格を策定している」とし、特に「スマホとサービ車は『座って商業する時代』を開く相乗革新効果を創出した」と評価した。

■欲望となったスマホ、暮らしに浸透する

 「昔は友達に会って一杯飲んだりしたが、スマホが出てからは(スマホで)ゲームをしたり、映画を見たり、歌を聴いたりする。家財を売ってでもスマホを手に入れたがる人たちもいる」。平壌出身の脱北者Cさんは、スマホの人気が高いあまり、数台を持っている人も少なくないと話す。北朝鮮では移動通信網(高麗リンク、剛性ネット)別に一人当たり1台ずつ登録することができるが、必要に応じて他の人の名義を借りてスマホを開通することもあるという。
電話が作り上げた「市場ネットワーク」 
品物の購買や価格策定、運送まで  
スマホを通じてリアルタイムで処理  
配達アプリ・ネットショッピングも活発  
「お金稼ぐためには貧しくてもスマホは必須」 
 
日常になくてはならない存在  
スマホでゲームし、音楽聞き、映画見る  
スマホモデルが人気のバロメーターになることも  
雑誌でスマホ依存への警戒呼びかける  
「家財売ってでもスマホを手に入れたがる」
 どんなモデルを持っているのか、何台持っているかが人気のバロメーターになることもある。2016年に韓国に脱北した20代の女性は「軍隊に行った友達が、スマホが欲しいと家に電話してきたり、スマホを買ってくれないと学校に行かないと駄々をこねる子どもたちも見た」とし、「韓国では分割払いで買うこともできるが、北朝鮮では一括で払わなければならない。大金なので、(スマホを)持っていない友達も少なくなかったが、それが大きなストレスになっている。スマホの機種によって生活水準を評価することもある」と話した。ホン・ミン室長は「どんなスマホを持っているかが、その人の財力や家庭環境などを示す」とし、「ディスタンクシオン(卓越化)の道具でもある」と指摘した。

 スマホは北朝鮮住民の生活方式や遊び文化も変えた。スマホで「自撮り」をし、「ブルートゥース」機能を活用して友達と一緒にゲームを楽しんでいる。ハンギョレが入手した北朝鮮の最新型スマホ「平壌2423」(2018年10月発売)には、ブルートゥース機能を利用して4人が一緒に楽しめるカードゲームアプリが搭載されている。北朝鮮内部のイントラネットに接続して費用を支払えば、数百余りのゲームはもちろん、様々な歌や動画、図書などをダウンロードして楽しむことができる。血圧や心拍数など健康状態を測定できるアプリや、畑を管理するためのアプリもある。インターネットを基盤に、スマホと物をつなぐモノのインターネットも登場している。2017年北朝鮮の教育新聞社が発行した「高等教育」には、「スマホでコントロールする照明」という文が掲載されたが、「使用者の求めに応じてスマホを利用して(照明の)形と色を変えることができ、明るさも調節」できると紹介された。

■北朝鮮の親も「スマホ依存」に悩んでいる

 「北朝鮮でも、親たちが3歳の時から子どもに児童映画、アニメを見せている。甥たちは幼稚園から帰ると、親のスマホでゲームをしており、取り上げると怒り出すこともある」(脱北者Cさん)

 脱北者の証言と北朝鮮の文献によると、北朝鮮社会がスマホによる様々な悪影響や社会的問題に悩まされていることもうかがえる。北朝鮮の無線通信の加入者数は、2010年の50万人から2012年に100万人を超えたが、この時期を前後に北朝鮮の雑誌などにスマホの使い過ぎを警戒する趣旨の文が掲載された。2014年に2・16芸術教育出版社が発行した雑誌「芸術教育」は、「スマホの使い方に注意すべき点」という記事で「最近、若者の中で網膜剥離の症状が増えているという」とし、「その原因はまさに夜にスマホを使いすぎるため」だと指摘した。同年、勤労団体出版社の雑誌「朝鮮女性」は「眠る前にスマホを見ると、不眠症や頭痛、集中力の低下を招く恐れがある」と警鐘を鳴らした。

■玉流館の冷麺もスマホで注文

 北朝鮮にもスマホで食べ物を注文するための「配達アプリ」があり、仕事を持つ母親たちがスマホのアプリで買い物をするネットショッピングが盛んだという。2015年4月、在日朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」は「玉流」というアプリを紹介し、同年2月から北朝鮮のイントラ網に接続して加入すれば、商品を検索して購入できると紹介した。同アプリを通じて、さまざまな料理を注文するのはもとより、食料品や化粧品、医薬品、靴、カバンなど、北朝鮮の製品が購入できるという話だ。同紙は特に、玉流館の代表的なメニューである平壌冷麺も「玉流」アプリで注文できると報じた。「朝鮮新報」は「特に仕事を持つ主婦に、商店に行かなくても必要な商品を購入できて便利だという反響が多い」と報じた。

ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:3/20(水) 20:52
ハンギョレ新聞

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