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Game*Sparkレビュー:『メトロ エクソダス』

3/21(木) 18:00配信

Game Spark

『メトロ エクソダス』はドミトリー・グルホフスキー氏の原作小説をもとにしたFPSシリーズの最新作です。核戦争により地上が滅んでしまった近未来、モスクワの地下鉄で数少ない人類が必死に生き残っているという世界観が綴られます。

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過去作『メトロ 2033』『メトロ ラストライト』では、主人公アルチョムがメトロ内部を冒険し、様々な政治的イデオロギーによる闘争や、何らかの汚染等によって変異してしまった怪物たち、原因不明の現象で発生する幽霊のような存在に巻き込まれていきます。

『メトロ』シリーズは、小説をバックボーンにした重厚な筆致と、地下鉄での生活、怪しく危険な暗いトンネルといったメリハリある表現で、自分が活路を切り開いている体験を得られる、と評価されたタイトルです。

本稿では、2019年2月に発売されたシリーズ最新作『メトロ エクソダス』をレビュー。未プレイの人にはシステム面、クリアした人には物語面を含めてお届けします。後半はネタバレを含むので、ページを分けて構成しています。主にPC版を対象としているため、一部の動作・挙動については他のエディションと異なる場合があります。

また、発売に伴い筆者はGame*Spark掲載のPR記事執筆を担当しました。そのため本レビューの執筆にあたっては、本作を自費で購入・プレイし、全ての感想・レビューを筆者の発案として行っており、自筆ながら批判的な内容が含まれますことを予めご了承ください。

『メトロ』の実態はアドベンチャー

『メトロ』シリーズはストーリードリブンな構成です。終始一人称視点を取り、アクションはシューティングがメインの体裁となるものの、その実態はアドベンチャーと言えます。

文字通り一人称視点の体験に没入するため用意された、数々のギミックが功を奏しました。これはシリーズに共通しており、主人公アルチョムの視点を重視したものです。実際のところ、物語に選択の自由は少なく、一人称で綴られた小説を読んでいくような構成です。

そのため、映画的な進行とは異なり、じっくりと読み込むようなゲームプレイとなります。イベントは強制力が高めで、後戻りできないパターンが続きます。今作で「半オープンワールド」なマップとなり、比較的自由にアプローチできるイベントも配置されていますが、ほとんどの場合は非常に長いセリフによって構成されており、腰を据えたプレイングを要求されることになります。

実はかなり割り切られたシステム
種々のプロモイメージから、未体験の方にとってはリアルなサバイバル系ジャンルの印象を受けるかもしれません。しかし『メトロ』はあくまでもFPS・アドベンチャーです。


例えば、道中では弾薬や回復薬をクラフトできますが、そのために必要な資源の積載量に制限はありません(左上に表示されている二種の数字が資源)。主人公はバックパックを背負っており、運べる弾薬などの数に限りがあるものの、戦闘中でなければ大抵は常に補充できてしまいます。

画面の明るさではなく、あくまでもセンサーの判定による
ステルスの光源判定は雑とも言えます。腕時計に装備された「光センサー」が光っているかどうかが全てです。ステージによっては、どう見ても明るい場所なのに隠れていられたり、全体が暗いはずなのに明るい判定になったりするので、必ずしもリアルに描かれた環境に沿って戦略を立てられる訳ではありません。ガスマスクのフィルター残量も、高難易度でなければそれほどシビアではありません。

飲むことにシステム的な意味は存在しない
また、睡眠不足や栄養失調、ケガといったリスクがありません。フィールド上に存在するセーフハウスで寝泊まりして時間を進められますが、特に食事をする必要はないので、そうしたサバイバル要素はスポイルされています。

殺害しても気絶させても、敵が目覚めないことに変わりはない
ステルスで敵を排除する場合、気絶を選択しても特にリスクがありません。気絶させた敵が発見されてもそれほど警戒度はあがらず、時間経過で敵が目覚めてしまうこともありません。エンディング分岐に必要なカルマ上昇の為にも、とりあえず気絶させれば全く問題ないという部分は、シリーズを通して同様です。

以上のように戦闘・サバイバル両面は、シンプルでさっぱりした実装となっています。ギリギリのサバイバルを求める方にとっては肩透かしとなるかもしれません。クラフト資源の残量とにらめっこできるような、自分に合う難易度設定なら楽しめると思います。

メトロのリアルさは舞台装置的
ならば一体『メトロ』の何が没入感を高めているのでしょうか?その答えは、舞台装置的に用意された様々なアクションです。他のFPSに無い「そんなものまで!?」というアクションひとつひとつに操作が割り当てられています(以下はPC版での操作キーです)。


Lキーでライターを点火。蜘蛛の巣で歩行が鈍った場合に焼き払うこともできます。


Fでフラッシュライトを点灯。長押しで充電。地下探索、夜間の室内はライトがなければほとんど視認できないので、電池残量は油断できません。


Mキーで地図の確認。メイン・サブクエストの位置が確認できるものの、自分でマーカーを付けられないので、何度も地図を開くことになるでしょう。


G長押しでガスマスクの装着。装着後にGでマスク面を拭けます。ガスマスクは特に視界が大きく悪くなる訳でもなく、拭かなくても問題はありません。


武器のひとつ「ティハールライフル」は空気圧で射出するものです。R長押しで充填モードに切り替え、クリックでエアを充填できます。弾が簡易的なのでどこでもクラフトでき、単発の威力が強いという魅力のある武器ですが、連射は遅めで、エアが無ければ豆鉄砲になる弱みもあります。序盤から、リスクを承知で戦えるという秀逸なアイテムです。


Yキーで腕時計を見る、なんていうアクションもあります。実は頻繁に利用します。コンパスで進むべき道を、時刻は昼夜のサイクルにしっかり連動しています。一番手前に写っているのは放射線量計です。


Hキー長押しで武器を下げることもできます。一部のNPCはこの状態でなければまともに話をしてくれないことも。仲間と話すときに、銃口を向けたままではモヤモヤしてしまうのはFPSあるあるですが、これで安心ですね。

煙を吹き付けても怒られたりはしません
幕間や重要NPCとの会話では、酒を飲み、ラジオを付け、タバコを吸い(そして相手に向かって吐く)、ギターを鳴らす……と、その場に応じた様々なアクションを行えたりします。

これらのアクションは、決してゲームプレイに大きな影響を与える訳ではありません。ライターで蜘蛛の巣を燃やさなくても、通行できてしまいます。しかしながら、こうした所作をプレイヤーの意思で行うことで、主人公との不思議な一体感を演出しています。

反対に、弾丸や回復薬を作成する時はクリック一発で完了するなど、どこにリアルさを置いてデザインされたのかは明確になっています。どの面を取ってみても、物語を進める時にプレイ全体を止めなければならないような要素は排除されています。このバランス感覚は優秀と評価してよいでしょう。

『メトロ』シリーズは、アルチョムの視点にとってのリアルさを追及してデザインされており、一見して地味ながらもシリーズのオリジナリティとして大きな魅力を作り上げました。

求める者に応える環境と仲間達
幕間の会話に付き合わなくてもいい(ここではAキーで退出できる)
「半オープンワールド化」により、メインクエストで通過する必要がある場所以外は大半が無視できるようになっています。カットインムービーは皆無に近く、キャラクターに近づけば話がはじまりますが、その場を離れてしまうこともできます。

サブクエストや、幕間での仲間の話はほとんどの場合、かなり長いセリフが用意されており、その中で彼らの個性が段々と分かっていきます。なぜアルチョムを助けてくれるのか、どんな関係だったのか、そうしたものをプレイヤーの方から聞きに行くという構成が貫かれています。

プレイヤーが関わろうとするほど、『メトロ』はその設定をプレイヤーに返してくるのです。全てを求めようと思えばそれなりに時間はかかりますが、それは小説を読み進めるのと同じようなものです。少なくとも、旅を共にする仲間達はもれなく誠実であり、求めるだけのものはあると断言できます。

バグとスタック、操作性の悪さ
『メトロ』の持つオリジナリティは、求めるゲームプレイが合致すれば、以上のように大きくオススメできるものの、荒い部分が目立ってしまってもいます。

それほど多くはないとはいえ、チャプターをやり直すハメになるバグが発生することがあります。隅々まで資材を探したくなる設計の割に、プレイヤーがスタックしたり、一部の操作が不可になってしまい、セーブしたポイントによっては大きく戻されるリスクがあります。特にCS版では、進行不能となるバグも一部ユーザーの間で報告されているようです。筆者のPCによる環境では、スタックによる移動不可の問題が一度だけ起こる程度でした。

PC版では問題ありませんが、CS版コントローラーではエイミングが重すぎます。エイムアシストもかなり弱く、設定を最大にしても不足を感じることになります。このことから、それほど戦闘に比重がない割に、進行の足を引っ張る要因になっています。

声優さん達による日本語吹き替えは素晴らしい演技が当てられています。しかしながら、発声時間の配分の調整が悪く、キャラクター自身がかぶせ気味にセリフを話してしまう場面があり、せっかくの雰囲気を壊してしまいかねません。


以上のように、『メトロ エクソダス』は雰囲気を重視したアドベンチャー色の強いFPSだと言えます。シューティングやサバイバルを楽しもうとするにはオススメし難い部分もあり、人を選ぶ作品と言えるでしょう。

しかしながら、主人公アルチョムは王道的な旅を歩み、その物語は捻くれた作風ではありません。真っすぐに生きようとする青年の姿を追いかけるならば、報いのある結末を見届けられるでしょう。

※次のページからは、シリーズを通した物語の構成をレビューします。ネタバレを含みますので、以後の閲覧はご注意ください。


※このページは多くのネタバレを含みます、以後の閲覧はご注意ください。

種明かしと滑稽さの中に

今作は、過去作におけるメトロの不思議が早々に種明かしされてしまいます。

電撃の玉であるアノマリーはモスクワメトロの中では恐るべき存在として忌避されていましたが、遠く離れた地上では、鉄骨に囲まれた場所であれば回避できることがわかります(地元住民は神の力だとしているようですが……)。

地上は滅んだ訳ではなく、生き残った人々が様々な環境の中で必死に生きていました。ミラーが信じていた中央司令部もなく、攻め込んでいると思われた「敵軍」もいません。モスクワメトロも、結局は限られた環境の中にうごめく、井の中の蛙にすぎなかったのです。

シリーズを遊んだ方は、ある種の寂しさ・滑稽さを感じたことでしょう。ある意味で「メトロの魅力を楽しみにしていた」部分を裏切られたとも言えます。

『メトロ』は何の物語なのか?

なぜ、そのようにタネ明かしをしたのでしょうか?結論から言えば、『メトロ』はアルチョムが報われるかどうかの物語なのです。

『エクソダス』の設定から、『2033』のバッドエンド、『ラストライト』のグッドエンドを正史とすることがわかります。

『2033』のアルチョムは、ハンターやカーンといった大人たちから半ば利用される形で動かざるを得ませんでした。若く、実力も未熟だったアルチョムは、ただ必死にメトロを突き進みます。バッドエンドということは、アルチョムはダークワンを滅ぼす選択を取ったことになりますが、それでもアルチョムにとっては決死の正義でした。

『ラストライト』では、アルチョムはグッドエンドを迎えています(そうでなければメトロもろとも爆死していたはずです)。幼い頃にダークワンと接触していたアルチョムだけは、彼らと交流する副作用を受けずに済む体質を獲得していました。

その中で献身的な青年であった彼の姿から、生き残ったダークワン達はやさしさを学び、遂にはアルチョムとメトロの崩壊を防ぐために手助けをしてくれるまでになりました。オーダーとして訓練されたアルチョムは心も体も強くなり、貫いた正義は種族を超えて未来を繋げたのです。

仲間であるイディオットは哲学的な話を好む
『エクソダス』でアルチョム達は結果的に「環境に捉われてしまった人々を解放する」という旅を巡ることになります。それは彼らが真実を知り、自分たちの手で追い求める者達となったことを意味しています。

何も知らず未熟だったアルチョムが成長し、それでも勇気と誠実さを失わなかったことで、最後は真実を追い求める旅に出る。筆者は『エクソダス』で、そうしたアルチョムの人生が真に報われたことを意味するのだと信じたく思います。

現実と虚構は隣り合わせ

アルチョム達だけではその時点で解決しきれない問題が残されてしまう……これが本作の特徴でもあります。リアルさという意味ではむしろ、これこそ真に迫るものと言えます。ヴォルガ川の巨大ナマズを信仰しているカルト集団は、まだ分かりやすい例かもしれません。

そうした本質的な問題は、広いマップの中でプレイヤーが求め、探索して初めて浮き出てくるようになっています。特徴的な一例を示しましょう。

カスピ海ではバロンという人物が奴隷を使って燃料や水の独占をしており、ギウルという女性がこの解放を目指して戦っています。普通にクリアすれば、バロンを打ち倒し、ギウルがその後を担うという話で一件落着です。

しかし、カスピ海の中央部分には不思議な人物が一人で佇んでいます。

彼は自らを「本物のバロン」だと名乗り、うるさく指示しているバロンこそが影武者だというのです。面白いことに、彼自体はメインストーリーの中に配置されておらず、存在に気付かなければ話すこともありません。

彼は、仮にギウルが勝ったとしても、この地で生き抜く以上はまた同じような構造になるだけだと語り、アルチョムを前にしてさえ、うろたえる様子を見せません。

奴隷を解放したところで彼らは自活できない、水や燃料を確保する労働力として彼らを活用することで誰もが生きていける、そして全体の指針をまとめるために「聖火」という信仰の形が必要なのだと説明を続けます。

自称「本物のバロン」が語る話の是非については置くにしても、この時のアルチョム達には、確かにその形を崩してまで、この地の人々を救う力はありません。


もしプレイヤーであるあなたがこの「本物のバロン」に出会った時、怒りを持ったなら倒してしまうこともできます。しかし、それでカスピ海の何かが解決する訳でもなく、彼自身もそのように発言してくるのです。

彼は正しいのでしょうか?本当に彼が本物なのでしょうか?

「本物のバロン」は常に、一人でタールの海を崖から眺めています。横に置かれたマネキンに向かって指示を叫びながら、いつまでも。

丁寧に進めるプレイヤーへの報い

本作のクエストは、明確な報酬が設定されていません。

誰かの大切なものを取り返してきたりといったサブクエストは、その思いがにじむ一瞬の表情と、感謝の言葉とで締めくくられます。人形やギター……例え小さな舞台装置であっても、それらは物語の最後まで旅路を共にし、仲間たちの違った側面を輝かせてくれます。

アルチョムとして動き、アルチョムの正義に重ね、丁寧に進めていったプレイヤーならば、物語が終わろうとするその時、仲間たちが駆け寄る一瞬のシーンに大きな価値を感じたことでしょう。

正しくあろうとしたことが、すべて自分の未来へと報われていきます。ご都合主義かもしれませんが、筆者はこの点が貫かれて本当によかったと感じました。(グッド)エンディングの読後感の良さは、小説を読み終えたあの清々しさに近いものだったと思います。


アルチョムがアンナを助けるために研究所へ突入しようとする時、屋上に見える小さな影に気付かれたでしょうか?筆者はこれをただのイースターエッグだと捉えたくはありませんでした。アルチョムが挑んだ決死の戦いに、ダークワンがほんの少し助けてくれたのではないかと考えています。

シリーズを通して、アルチョムが重ねてきた誠実さが誰かを救い、そして彼が命を懸けて戦うとき、これまでのすべての縁が彼を救ったのだと思いたいのです。

今作のバッドエンドでは、過去作のキーキャラクター達が登場します。『エクソダス』では名前すら登場しない者達です。アルチョムの迷いや後悔が、最後まで断ち切れなかったことを表現するのに、これ以上の場面はないだろうと思います。ただし、過去作をプレイしていない方にとっては意味の分からない演出であることは残念としか言いようがありません。

もし、まだグッドエンドを観ていなければ、是非とも挑んでほしいと思います。三部作を通したアルチョムの生き様が報われてこそ、本作の魅力はシベリアの真珠のように輝いて見えるからです。


総合評価: ★★★
良い点
・絶妙な配分のロールプレイ要素
・ティハールライフルという優秀な調整役
・上手に割り切られたシステム
・仲間達の会話量とその愛おしさ
・オープンワールドと一本道のメリハリ
・調度品や小物、室内の内装の作りこみ
・物語を報酬とするサブクエストの質の良さ
・様々なバリエーションのステージ
・報われるシナリオ
・読後感の良い小説のようなグッドエンディング

悪い点
・変わり映えしない戦闘システム
・古典的なバグやスタックの存在
・ステルスの光源判定が不明瞭
・(CS版)操作が重く、爽快感を阻害する
・スキップ可能な場所が少なく、進行テンポが遅い
・移動が遅すぎる箇所がある
・セーブデータ管理の幅が少ない
・人を選ぶジャンルとシステム
・過去作未プレイでは理解できないバッドエンディング


「Game*Sparkレビュー」ではハードコアゲーマーなライターから読者に向けて、オリジナルレビューをお届けします。対象となるタイトルはAAAからインディーまで、ジャンルやプラットフォームを問わず「ハードコアゲーマーのアンテナが反応するゲーム」です。

このレビューでは、3段階評価をベースに「良い点」「悪い点」を挙げながら総評を下します。最低評価は「難アリ/オススメできない」、中評価は「ふつう/そこそこオススメ」、最高評価は「とても面白い/とてもオススメできる」に当ります。「プレイレポート」として公開している記事では、本企画と同様の評価を付けません。また、記事の性質上、ストーリーなどの「ネタバレ」を含む場合がありますので、閲覧の際はご留意ください。

レビュー記事に使ったゲームは「編集部およびライターが購入した物」であり、デベロッパー/パブリッシャーから提供されるゲームソフトは利用しません。また、「Game*Sparkレビュー」は「PR記事」と一切の関係を結ばず、すべての評価内容がライターの価値観に基づきます。特定の企業やプロモーション、ユーザーコミュニティにも影響を受けません。

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Game*Spark Trasque

最終更新:3/21(木) 18:00
Game Spark

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