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【ラグビーコラム】永遠のテーマ

3/21(木) 16:01配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

■コーチングしないのに選手主導って言うのはコーチングの放棄で、コーチングのできない人がする一番の言い訳ですよ。


 文武両道を掲げる学校方針から、練習は週3回、60~120分ずつのみ。静岡聖光学院高等学校(静岡聖光)ラグビー部は、「時短」というキーワードで話題になることが多い。
 
 監督である星野明宏副校長曰く「61分もできない」ような密度の濃いセッションを意識。スポーツ推薦がなく大柄な選手を集めにくいなか、大阪・東大阪市花園ラグビー場での全国高校ラグビー大会には2009年の初出場以来通算5度参加と実績を残していた。

「時短」以外の際立つ要素には、「選手主導」がある。先の年末年始の全国大会で印象的に映ったのは、ハーフタイムの過ごし方だ。この国の高校シーンではグラウンド上で檄を飛ばす指導者の姿も目立つが、静岡聖光は選手だけで話し合う。佐々木陽平監督は選手交代の責任こそ持つが、後半に向けた修正点の提示などは県予選時から教え子に委ねていた。

 身長175センチでナンバーエイトに入る植田歩は「自分たちで気づいたことを言い合いながら、やること(後半に向けたフォーカスポイント)を少なく絞っていけるようになりました」。試合を重ねるごとに、話し合いの質を高めてこられたようだ。

 静岡聖光の「選手主導」は、相手の得意技も封じた。12月30日、第1グラウンドでの2回戦ではシード校の岩手・黒沢尻工によるモールを何度も崩す。

 立ったボール保持者を軸に複数人が固まって押すモールは、反復練習次第で最も効率的な得点方法になりうる。足場の悪い雪国のチームが好み、スマートに戦いたい静岡聖光にとっては厄介なプレーかもしれなかった。しかし当日、小柄な黒いジャージィは相手の塊を回転させたり、組み始める選手の足元に2人がかりで突き刺さったりしてしのいだ。
 
 終盤には黒沢尻工がモールの組み方を微修正したことでトライを決めるが(ボール保持者と両サイドに立つ選手が相手に背を向けて密着し、静岡聖光の防御の入り込む隙間をなくしていた)、12-17と5点差を追う28分、静岡聖光は自陣22メートル線付近右で黒沢尻工のモール形成を未然に防いだ。

 肉弾戦でのプレーを首尾よく進めるには、当日のレフリーの笛の傾向に対応しなくてはならない。「自分たちがいいと思っていたプレーで反則を取られた」と涙を流すチームは、高校ラグビーでも国際ラグビーでも一定数いる。

 しかし「選手主導」が売りの静岡聖光は試合前、担当レフリーに自軍の防御方法が反則にならないか確認を取っていたという。数日前に他校がおこなった試合のモールディフェンスを映像で見せ、「僕たちもこれ、やっていいでしょうか」と打診していたのだ。

 植田の「今年1年間、コーチたちにアドバイスをいただきながら自分たちで戦術などを作っていた」という言葉の延長線上に、自己責任で試合を進めるための具体的な行動があった。

 ちなみに静岡聖光の試合では、グラウンドに立つ選手が交代で退く選手へ大声で「ありがとう!」と叫ぶシーンも目立った。「花園に来てからいい雰囲気でやっていたのが、そういうところに繋がったんだと思います」とは、スタンドオフでスポーツドクター志望の高成田光主将。結局この日に敗退も、成長は実感できた。

「選手主導」は、男子15人制日本代表でも重視される。ワールドカップ日本大会開催年の今年は2月4日から候補合宿を本格始動させるも、ニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは欧州視察などを経て15日に合流。しばらく経ってからこう発した。

「最初、私が不在だったことも、ある意味、大事だったと思っています。徐々にシーズンへ入っていける環境を作れた。当初からその予定でした。ヘッドコーチ不在のなか、選手たちもやりやすく感じていたと思います。コーチ陣としては、そういうなかで誰がどんなリーダーシップを取れるのかを見極めるいい機会でした」

 遡って2015年のワールドカップイングランド大会では、エディー・ジョーンズヘッドコーチの苛烈な指導で育った面々が自主的にまとまり歴史的3勝。当時のコーチングコーディネーターで前サントリー監督の沢木敬介は、「選手主導」について私見を明かす。

「ぶれちゃいけないのは、選手主導とコーチングの放棄は別ってことなんですよ。コーチングしないのに選手主導って言うのはコーチングの放棄で、コーチングのできない人がする一番の言い訳ですよ。コーチングを入れて、選手にしっかりと考えさせる、という仕方はすごくいいことだと思います。ただ、何もコーチングしないで選手主導と言っていたら、それはただのコーチングの放棄なので。僕は、そこをはき違えているコーチもいるんじゃないかとも思います」

 練習中のかすかなエラーも見逃さず声を張り上げる一方、選手同士による試合分析のミーティングも促す沢木。指導と放任の「バランス」に心を砕く人らしく、何となく流行りそうな甘美な言葉をフラットに捉えていた。

 静岡聖光でも、選手同士のミーティング方法は小寺良二リーダーシップコーチが指導していて、最大の長所だった鋭いキックチェイスとライン防御は里大輔スピードコーチ提唱の「SAT(急加速するのに最適な姿勢を確立すること)」が支えていた。具体的なコーチングと「選手主導」がシンクロしていたのだ。

 沢木が話をしたのは、結果的にサントリーを率いる最後のシーズンとなった2018年度の終盤だ。静岡聖光の事例を聞いたうえで、本当に求められている「選手主導」のチーム作りについて話す。

「選手たちが自分でやっているよ、って言わせる環境を作ることが大事なんじゃないですか。こっち(首脳陣)がコントロールをしているんだけど、選手たちには自分たちでやっていると思わせる」

 言葉を加速させる。問答のうち、いつも対外的には「僕」としている一人称の呼び名を「俺」にする。

「コーチには何も指摘しない、嫌なことを言わないいい人ってたくさんいるんですよ。その人たちは、いいコーチと言われる。けど、俺から言わせたら、それはいい人かもしれないけれどいいコーチじゃない。僕は、何かを言って相手にどう思われようが関係ない。そいつが『クソッ』と思って頑張って成長できればいい話なので。選手主導と言っていた方が楽だし、聞こえもいい。でも、それをはき違えている人がいっぱいいる。もちろん、正しくやっている人もいますけど」

 ジョセフ率いる日本代表では、緻密な攻撃戦術を考えるトニー・ブラウンアタックコーチ、「コア(体幹)の短い」選手の強さを活かしたいとする長谷川慎スクラムコーチが緻密さを示す。ジョン・プラムツリーディフェンスコーチはハリケーンズのヘッドコーチを務めるため当分不在も、3月中旬の沖縄合宿では母国ニュージーランドから新しいメンタルコーチや柔術の専門家が訪れた様子。本番ではアイルランド代表、スコットランド代表などとぶつかり史上初の8強入りを目指す。

 日本代表の主将を2大会連続で務めそうなリーチ マイケルは、昨年末の時点で「いまのチーム内の課題は、お互いにどれだけ厳しくできるかだと思います。お互いにだめなプレー、できていないところをフィードバックし合うチームにしないといけない。コーチに言われないように、指摘し合う」と強調していた。コーチングと「選手主導」の絶妙なブレンドは成立させられるだろうか。

 ちなみに、観戦者もよき「選手主導」と「コーチングの放棄」を見分けることができる。沢木は「(選手が)正しい判断ができているか、チームのストラクチャーを守れているか、自分勝手なプレーをしていないか。そういうところだと思います。試合を観ていたらわかりますよ」と解説した。

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