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西郷隆盛を「理想の上司」にした三つの素養

3/21(木) 19:45配信

LIMO

戦争では人間の「本性」がむき出しになる

 上司の力量が明らかになるのは、仕事を任せた部下が追い込まれた場面です。

 普段の言動は、いくらでも取り繕えます。人は誰しも「追い詰められたとき」こそ、本性が露わになるものです。ましてや自分の責任ではなく、部下が不祥事を引き起こしたとき──そこで慌てふためいたり、怒鳴り散らしたり、部下にすべての責任を転嫁したりする人物では、「一流」とはいえません。

 土壇場では、今までの人生で培ってきたすべてが出てしまいます。歴史上には、戦争という人間の本性がむき出しにならざるを得ない場面があります。予想外の奇襲を受けたり、敗色濃厚になったりしても、毅然とした態度を取れるかどうか。上司は常に試されるのです。

東郷平八郎が落ち込む部下にかけた言葉

 こうした土壇場で見事なリーダーシップを発揮したのが、薩摩士道でした。西郷隆盛だけではなく、大山巌、東郷平八郎といった薩摩隼人が、明治維新、日清戦争、日露戦争で見せたリーダーシップは本当に見事なものでした。

 たとえば日露戦争において、東郷平八郎率いる連合艦隊は、「無敵」と恐れられたロシアのバルチック艦隊を打ち破りました。しかし、開戦以来、連戦連勝だったわけではありません。旅順港閉塞作戦では、機雷で軍艦の三分の一を失いました。非常事態です。その際に、沈められた軍艦の責任者が二人、東郷平八郎の部屋へ謝罪に訪れます。読者の皆さんなら、どう対処するでしょうか。

 東郷には二つの選択肢があったでしょう。感情を押し殺して「気にするな。次に奮戦せよ」と言うか。「とんでもないバカをやってくれたな」と激怒するか。でも、東郷はどちらの態度も取りませんでした。

 彼は運ばれてきた紅茶が二人の前に並ぶと、「紅茶が冷める。さあ飲みたまえ」と、ただそれだけを言ったのです。これだけ、でした。二人は涙を流して、次の戦いでの命懸けの雪辱を誓いました。

 これこそが、将帥学の極みです。たったひと言で、決められるのです。

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最終更新:3/31(日) 10:45
LIMO

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