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麻倉怜士の新デジタル時評--DSDで聞くクラシック、初心者にもファンにも聴き応えのある1枚とは

3/21(木) 9:00配信

CNET Japan

 オーディオ&ビジュアル評論家麻倉怜士氏が、注目機器やジャンルについて語る連載「麻士の新デジタル時評」。今回は、2月にe-onkyo musicで配信された独自コンピレーション「DSDで聴くドイツ・グラモフォン&デッカ selected by 麻倉怜士」(DSDで聴くドイツ・グラモフォン&デッカ)を紹介しよう。超高音質フォーマットDSDを配信フォーマットに選んだ理由や、「レコードレーベルの違いがわかる」とされる録音状態まで、最新のクラシック事情に切り込む。

レコードレーベルごとに違う音を再現したコンピレーションアルバム

 DSDで聴くドイツ・グラモフォン&デッカは、麻倉怜士×ユニバーサル ミュージック×e-onkyo musicによる独自のコンピレーションアルバム。ユニバーサル ミュージックから2018年末に発売されたSACD選集「麻倉怜士セレクションSA-CD~SHM名盤50」から、20曲(トラック)を厳選した。

 この企画のスタートにあたり考えたのは、クラシックレコード全盛期に感じたレコードレーベルごとの特徴を現代によみがえらせること、そしてDSD音源の素晴らしさを伝えることだ。そのため、楽章単位で20曲を選び、コンピレーションすることでクラシック音楽へのアクセスのしやすさにこだわったほか、録音クオリティはまさに「松クラス」の、正真正銘の高音質作品だけを選りすぐることで、クラシック初心者にも、オーディオファンにも聴き応えのあるアルバムに仕上げた。

 そもそも、DSDで聴くドイツ・グラモフォン&デッカは、ユニバーサル ミュージックから発売された「麻倉怜士セレクションSA-CD~SHM名盤50」が母体になっている。このアルバムは、2018年11、12月に25タイトルずつ発売。クラシックレコードレーベルとして1960~1970年代に人気を博した、グラモフォン、デッカ、フィリップスの名演奏を50枚分選曲し、各盤共通のライナーを執筆した。

 使用フォーマットはシングルレイヤーのSACD+SHM-CDのため、元の音源はDSDファイル。そのDSDファイルを使い、50タイトルの中から20曲を選んでできたのが、今回のコンピレーションアルバムだ。

 現在、世界におけるクラシックの3大メジャーレーベルは、ユニバーサル ミュージック、ワーナーミュージック、ソニー・ミュージック。今は、3強状態になっているが、以前はさらにフィリップス・レコード、デッカ・レコード、ドイツ・グラモフォン、EMI Recordsなどがあり、それぞれ個性的な素晴らしい音を持っていた。

 その後、デッカ・レコード、フィリップスレコード、ドイツ・グラモフォンはユニバーサル ミュージックに、EMIのクラシック部門はワーナー・ミュージックに吸収されるなど、再編が進んだが、以前ほど、レーベルごとの色合いは濃く出ていない。

 DSDで聴くドイツ・グラモフォン&デッカでは、ドイツ・グラモフォンとデッカ・レコード、フィリップスレコードの60~70年代のアナログ録音からセレクト。「交響曲 第40番 ト短調 K.550: 第1楽章: Molto allegro」(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)、「交響曲 第41番 ハ長調 K.551 《ジュピター》: 第1楽章: Allegro vivace」(ボストン交響楽団)など、世界遺産的名演奏を集めた。

 音源は、当時のアナログ録音したマスターテープから直接DSDに変換。DSDは臨場感が高く、オーケストラの演奏をその場で聞いているような体験感を表現できるので、マスターテープのクオリティが仕上がりを左右する。数ある音源の中でもとびきり素晴らしいものを選んだ。

 レコードレーベルごとの特徴を紹介しよう。ドイツ・グラモフォンは、低音がしっかりとしており、中高域は雄大。ピラミッド構造的な周波数バランスを持つ。そのため盤石感、安定感があり、音の力強さがしっかりと伝わってくる。1曲目の「交響曲 第40番 ト短調 K.550: 第1楽章: Molto allegro」(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)は、音楽そのものの造形がしっかりとしており、骨太。大地を踏みしめて音を出している感覚。堂々とした雄大なサウンドが聞けるのは、ドイツ・グラモフォンならではの特徴と言えるだろう。

 一方、デッカ・レコードは、きらびやかで豪華絢爛な音。真面目でしっかりとした印象のあるドイツ・グラモフォンとは対極的だ。18曲目の「バレエ《三角帽子》: 序奏」(テレサ・ベルガンサ)は、1961年の録音時から何度もリリースを重ねてきた名録音。ティンパニの躍動感ある音が響く心地良さとカスタネットの連打によるブリリアントな雰囲気を見事にとらえている。まさに輝かしい油彩だ。

 フィリップスレコードは、この2つとは全く異なり、穏当でヒューマンな印象。控えめな音だが、バランスがたいへん良く、緻密な音作りで、絵に例えると水彩画という印象。たおやかかつクリアで繊細な音を奏でる。19曲目の「バレエ《くるみ割り人形》組曲 作品71a: 第8曲:花のワルツ」(小澤征爾/パリ管弦楽団)は、単なる豪華絢爛さだけではなく、しっとりとした味わいも感じられる素敵なサウンドだ。

 20曲が収録されているので、多彩な指揮者とオーケストラ、ピアノ、歌曲の演奏が楽しめるだけでなく、世界のレコードレーベルの違いも味わえる内容だ。

最終更新:3/21(木) 9:00
CNET Japan

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