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富岡の春彼岸(3月22日)

3/22(金) 9:07配信

福島民報

 JR富岡駅前の小高い丘にある墓地に男性が眠る。富岡町に住んでいた家族の死をきっかけに生前、墓を建てた。そこから眺める駅舎と大海原が好きだった。定年退職から十年後の三月十一日、大津波は墓の近くまで押し寄せた。

 震度6強の揺れは墓石を倒す。さらに原発事故が起き、直後の彼岸に人影はなかった。当時、男性は須賀川市に暮らしていた。実家に一時帰宅した際、防護服を着て墓参りした。二〇一三(平成二十五)年三月、避難区域が再編され、町に入れるようになる。業者の手を借りて、墓石を元の場所に戻した。

 海岸沿いに震災がれき用の巨大な仮設焼却施設ができ、海が見えなくなった。墓を訪れるたびに、町に人が戻る姿を思い描いた。駅舎は二〇一七年に再建され、駅前にはバスターミナルやホテルができた。アパートや家も建ち始める。見慣れた町並みは消えたが、少しずつ、人の流れが生まれた。

 男性が亡くなり四年がたつ。今年の春彼岸、幾筋もの線香の煙が上った。白や黄色の菊が供えられ、多くの人が手を合わせた。焼却施設は解体され、青い海と駅の景色が戻ってきた。遺族は、復興途上にある古里の姿を亡き人に語り掛ける。

最終更新:3/22(金) 9:07
福島民報

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