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「V」と「F」の音が生まれたのは農耕の出現がきっかけ? 食生活と言語発展に関連性 研究

3/23(土) 9:03配信

The Telegraph

【記者:Sarah Knapton】
 旧石器時代の人類の食生活については、何十年もの間、激しい議論が戦わされてきた。だが今、一つはっきりしたことがある。当時、菜食主義(vegetarian)の人がいたとしても、自分がそうであるとは発音できなかった、ということだ。

 石器時代の人類のそしゃく力と音声能力に関する新たな研究では、約1万年前に農耕が始まるまで、人は「V」と「F」を発音できなかったことが分かった。研究は、スイス・チューリヒ大学のバルタザール・ビッケル教授の主導で行われ、米科学誌サイエンスに発表された。チューリヒ大学の他、ドイツのマックス・プランク研究所、フランスのリヨン大学、シンガポールの南洋理工大学の専門家らが参加した

 農耕が出現する前は、それを意味する単語「farming」を作り出すことも、言語的に不可能だったことになる。さらに、先史時代の人々が悪態をつきたくなったとしても、「Fワード」を使うことは間違いなくできなかったはずだ。

「摩擦音」や「唇歯音」として知られる「V」や「F」の音は、下唇を上歯に押し当てて弱いシューっという音を出すことでのみ発音できる。だが、狩猟採集生活を送っていた当時の人々の食事は肉や繊維が豊富だったため、その歯は上下の前歯が同じ位置でかみ合う切端咬合(せったんこうごう)で、「V」と「F」を発音できない状態だった。

 農耕によってコメやパンなどの軟らかい食べ物がもたらされるようになり、それまで若年期だけに見られていた上下の歯のかみ合わせが深い状態が、成長後も残るようになった。

 だが、新しい「V」と「F」の音をきちんと発音し、今日の言語に見られる多様な語彙(ごい)を生み出せるよう顎が変化するのには、さらに数千年を要した。

 研究チームのチューリヒ大学の言語学専門家のスティーブン・モラン博士は、「我々のデータによると、欧州で唇歯音の使用が急増したのはここ2000年ほどのこと。これは、製粉などの食品加工技術の発展と一致している」と話し、「生物学的な状況が発音の発展に与える影響については、これまで過小評価されてきた」と指摘した。

 今回の研究は、言語学者の故チャールズ・ホケット氏が1985年に提唱した説をヒントに実施された。ホケット氏は「F」や「V」などの唇歯音が、軟らかい食品を食べる社会でよく見られることに気づいた。

 今回の研究では、食生活の変化が新たな音の創出を可能にしたのかどうかを調べるため、さまざまな分野の科学者たちが協力し、古代人の頭蓋骨とその言語的・音声的可能性について調べた。

 研究チームは数千年にわたる人類の顔の骨格の変化をコンピューターで再現し、それぞれの骨格がどのような音を出せたのかを調べた。結果はまさにホケット氏が予測した通り、食べ物が軟らかくなるに従い、唇歯音を作る能力が現れた。

 研究チームは、文化的に誘発された人類の生物学的変化によって言語が形作られる可能性があることが分かったと述べ、今回の調査結果が、人類が出す音は30万年前に現生人類ホモ・サピエンスが出現して以来変わっていないとする説に矛盾するとも指摘した。

 研究を主導したビッケル教授は、「唇歯音が現れたのは、人類の歴史の中ではかなり最近のこと」「今回の調査結果は、文化的慣行、人体の生物学、言語の間にある複雑な因果関係の解明に役立つだろう」と話している。 【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:3/23(土) 9:03
The Telegraph

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