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最近聞かないソマリア海賊 海自哨戒機パイロットに聞く、その対処の「現場」とは?

3/24(日) 6:03配信

乗りものニュース

スエズ運河へと続く海上交通の要衝にて

 近年(2019年1月現在)、東アフリカのソマリア沖・アデン湾における、海賊事件に関する報道を目にすることがほとんどなくなりました。報道されなくなった理由は、単純に海賊行為自体がほとんど発生しなくなっているためです。

【地図】ジブチってどこ?

 海賊発生件数がピークだった2010(平成22)年には、219件の襲撃があり、49隻が乗っ取られ、1181人が人質となる最悪の状況でした。ところが、ここ数年の年間海賊発生件数はひと桁(けた)に抑えられており、毎週のように大きくニュースで取り上げられていたころに比べると、状況は劇的に改善されたといえるでしょう。

 この「平和」は、決してタダで手に入れたものではありませんでした。世界各国が利害を超えて手を携え、海軍などを派遣し根気強く洋上の監視を行い、海賊という共通の脅威に対抗した結果、もたらされたものでした。

 日本は、ソマリア沖・アデン湾の海賊行為に対処するために海上警備行動(のち、海賊対処法に基づく海賊対処行動)を発令し、海上自衛隊の2機のP-3C「オライオン」哨戒機と、その搭乗員を中核とする「第1次派遣海賊対処行動航空隊」を、2009(平成21)年にジブチへ派遣しました。また、平成26年からは海賊対処を目的とした多国籍部隊「第151連合任務部隊(CTF151)」に参加し、2019年現在もなおこれを継続しており、派遣海賊対処行動航空隊は「第34次」を数えるに至っています(ほか、海上自衛隊の水上部隊や、活動拠点を警護する陸上自衛隊を中心とした支援隊も展開中)。

 かつて、P-3Cパイロットとしてジブチへ派遣された経験を持ち、現在は厚木基地(神奈川県)の第4航空群第3航空隊にてP-1哨戒機のパイロットを務める小笠原 拓1等海尉に、「派遣海賊対処行動航空隊」とは具体的にどのような活動を行っているのか聞きました。

海賊発見、でも緊張感は「ちょっと」

 小笠原1尉は2013年から2014年にかけての約4か月間、「第14次派遣海賊対処行動航空隊」として、ジブチへ派遣されました。

「我々の主要任務は、ソマリア沖・アデン湾にて海上の警戒監視を実施しまして、不審な船などがありましたら、関係各国と情報共有することにありました。約10か国程度で活動していますから、英語が共通語であり、司令部を通じて情報の伝達を行っていました」(小笠原1尉)

 小笠原1尉は続けて警戒監視任務中、実際に「海賊らしい船を発見した」時の状況について語ってくれました。それは2014年1月18日のことだったと言います。

「海上自衛隊の護衛艦(『さみだれ』)が、航行中のタンカーへの襲撃に関する情報を得たので、まずその艦載ヘリが先行して現場へ向かいました。この情報は私たちに引き継がれ、足の速いP-3Cで現場に急行したところ、海賊船の疑いがあるダウ船(木造帆船)を発見し、付近にいたフランス海軍艦艇(ソマリア派遣EU海軍に参加していた、フランス海軍フードル級揚陸艦『シロッコ』)へ情報共有を行いました」(小笠原1尉)

 実際に海賊に遭遇して緊張感は無かったのでしょうか。「実の任務に対応しますので、それはちょっと緊張感が出てくるところはあります」と小笠原1尉は答えましたが、筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は、思ったよりもあっさりした返答だな、という印象を受けました。そしてすぐに、日々積み重ねた訓練があるからこそ、海賊船への遭遇も、普段どおりにこなしたに過ぎなかったのだろうと理解しました。

 なお、小笠原1尉が搭乗するP-3Cから情報を引き継いだ「シロッコ」は、このダウを、海賊船の疑いが強いとして急襲部隊を送り制圧。ソマリア海賊5人を拘束することに成功し、タンカー乗っ取りは未遂に終わりました。

 ソマリア派遣EU海軍のブレージン提督は、この件に関し「偉大な国際協調の成果だ。我々、海賊対処部隊が任務に全力を尽くしている限り、海賊どもに安全な場所はないだろう」と述べ、海上自衛隊とフランス海軍の連携によって達成された成果に、最大限の賛辞を送っています。

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