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イチローが引退会見で語った「左腕先発は変人が多い」は真実か?

3/25(月) 5:00配信

THE PAGE

 400勝投手の金田正一氏は“天皇”と呼ばれるほど唯我独尊を貫いた。片岡氏は国鉄の捕手時代に、金田氏に、「ミットのいい音を出して受ける」と気に入られた。キャンプなどで金田氏がピッチング練習をする際には、必ず片岡氏が指名された。二階から落ちてくるような大きなカーブが武器だったが、ピッチングの終盤では、いきなり予告なしに、そのカーブを投げてきた。だが、それを片岡氏が涼しい顔でキャッチするとたちまち不機嫌になって激怒したという。
「おまえ、なんでオレのカーブをそんなに簡単に受けられるんだ?オレのボールはキレていないのか?」
 球種を伝えるというピッチングでの約束事を勝手に破っておいて、キャッチャーが受けられるか、どうかを調子のバロメーターにしていたというから、やはり「変人」の部類に入るのだろう。
 “優勝請負人”だった伝説の左腕、江夏豊氏も、阪神時代には、わざと捕手だった田淵幸一氏のサインとは違うボールを投げて困らせた。その行動で「頭を使ってリードしろ!」と伝えたという。

「石井一久も変わっていたな。キャンプにスカウトは、ちゃんとできているか、見にいくんだけど、“はい、わかりました、わかりました”と言っておきながら、まったく違うことをやっていた(笑)」
 ヤクルトから、その後、メジャーでも活躍、現在、楽天GMの石井一久氏も「変わっている左腕」の典型だったという。

 プロ野球で過去に200勝以上を記録した投手は24人いるが、左腕は、巨人で活躍した中尾碩志氏、金田氏、江夏氏、元近鉄の317勝をマークしている“草魂”鈴木啓示氏、元阪急の梶本隆夫氏、現ソフトバンク監督の工藤公康氏、50歳までプレーした元中日の山本昌氏の7人しかいない。その顔ぶれを見ると「変わっている」というより「個性的」であり、イチローが言い直した「天才肌」。独自のスタイルを貫いた人物が多い。

「逆にヤクルトで言えば、石川雅規のように、上背がなくどちらかと言えばまとまっているタイプの中継ぎ向きの左腕は、常識型の人間が多かった。石川は先発で成功したが、横浜DeNAの今永昇太、浜口遥大、東克樹なんかもそうだろう。どちらかと言えば、身長はなく、体格的には小さい。スケールの大きい先発型とは、対照的に左投手はコンプレックスを抱いているような小さい方がプロで成功する可能性が高い。性格的にも常識的な投手が多いんだ。まったく理由も根拠もわからないんだけどね」

 片岡氏は、スカウトの晩年には、担当スカウトの評価や、スピードガン表示、映像などのデータ以外にも、そういう経験に基づく独自の左投手評価を加味してリストアップ作業をしていたという。
 30年以上にわたって、それだけを見てきたスカウトの見解と、まったく同じ見解をスカウトの専門家でもないイチローが28年の日米現役生活で感じたのは、やはり、彼の野球センスが“普通ではない”ことを表しているのかもしれない。
 もっとも「変わっている」と指摘された先発左腕の人たちからすれば「そういうイチローこそもっと変わっている」という反論があるのかもしれないが……。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポ―ツタイムズ通信社)

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最終更新:3/25(月) 8:01
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