ここから本文です

吉田亜沙美ラストインタビュー「ファンの方がバスケットをまた好きになってくれたらうれしい」

3/25(月) 18:00配信

バスケットボールキング

 Wリーグ新記録となる11連覇を達成したJX-ENEOSサンフラワーズ。そのチームを強いリーダーシップを発揮してけん引したのがキャプテンの吉田亜沙美だ。

 言わずと知れた日本女子バスケット界の顔ともいえる司令塔。これまでJX-ENEOSのみならず、リオデジャネイロオリンピックをはじめ、日本代表としても国際大会で活躍を見せてきた。その吉田は今シーズン、後継者と指名する藤岡麻菜美に正ガードの座を託し、バックアップメンバーとして戦うことを決意。新たな挑戦と位置付けたシーズンをどのように戦い抜いたのか、喜びの声とともにシーズンを振り返ってもらった。

※なおこのインタビューは吉田亜沙美選手が現役引退を発表をする前に収録された

取材・文=田島早苗
写真=兼子慎一郎

「今シーズンは楽しかったという言葉しか見当たらないです」

――改めて優勝の感想をお願いします。
吉田 無事に“2冠”をして、目標を達成できたので安心したのが一番です。(昨シーズンから)スタートが2人変わったからこそ優勝したいというのは私自身も強く感じていたので、今までで一番うれしい優勝でした。

――優勝後は泣いていました。
吉田 やり切った感があったし、スタートの2人変わって、最初の方はなかなかフィットしなくて、(新司令塔の)麻菜美が苦しんでいるのも見ていまいた。その中で皇后杯を優勝したことがチームとして一つの自信になり、そしてWリーグの後半戦に入って今シーズンからスタートのジュナ(梅沢カディシャ樹奈)と麻菜美が本当に頑張った。後から試合に出るユラ(宮崎早織)やアコ(石原愛子)がチームを救ってくれたし、今年はこのメンバーで優勝したい、勝ちたいという思いがすごく強かったので、やり切ったという感情も含めて………(涙が)出ちゃいました(笑)。優勝するといつもはホッとして笑顔。泣いたのは昨シーズンと今シーズンだけですね。

――ここ2シーズンは、それまでとは少し違った感情だったのですね。
吉田 はい、今年は特に。「このメンバーで」という思いが強かったです。麻菜美がスタートになったことも私の中では大きかったし、ジュナが日に日に上手くなっているのを間近で見れたし、他にも選手みんなが自主練を頑張っているのを見ていたから、なおさらでした。

――今シーズンは、控えとして試合に出ていましたが、心がけていたことは?
吉田 流れを変えることだったり、本来のJX-ENEOSサンフラワーズのバスケットを引き出すこと。速い展開に持っていくというのが自分の役割だと思っていました。それと、何より私が出た時にみんなが安心してプレーができる、精神的にも「リュウさんが出てきたからもう大丈夫だ、自分のプレーができる」と、思ってもらえるようなサポートを常に心がけていました。その中で周りから「流れが変わったね」と言ってもらったことは自分の評価だと思うし、控えに回って良かったなとも感じています。今シーズンは、新しいことにチャレンジしてすごく楽しかったので、やりがいを感じたシーズンでした。

――控えから試合に出たというと、いつ以来ですか?
吉田 うーん、初めてに近いぐらいですよね。

――試合の最初をベンチから見ていたわけですが、どんな景色でしたか?
吉田 新鮮だったかな。ベンチから試合を見るのはケガをした時以来だったし(2013‐14シーズン)。今、何が足りなくて、何をすべきなのかを客観的に見れる時間は私にとって必要なことでもありましたね。試合に出たらこうしようとか、この選手が調子がいいからここにボールを集めようとか考えながら見ていたので、毎試合、景色は違って見えましたし、自分自身の経験値を上げる意味でもとても良い時間だったと思います。

 でも、一番見ていたことは麻菜美が本来のプレーができているか。悩みながらやっているとそれが他の選手にも伝わって、みんなが迷うので、思いっきりやってほしいと思っていました。それに、私が出る時間が減る、減ってくれという思いは常に持っていたかな(笑)。

――ベンチにいて、試合に出たいとウズウズはしなかったのですか?
吉田 全然。それは選手としてはダメなことかもしれないけど、私の中では麻菜美とユラでゲームが作れるのであればそれがベストだと思っていたし、それでうまくいかなかったらバックアップするよ、フォローするよという感覚でいました。

――吉田選手はコート上ではいつもギラギラしている選手。昨シーズンまではスタートでティップオフの時からギラギラしていたのが、今シーズンから控えに回ったことで、どうなるのかな?と。でも、一度コートに立ったらやっぱりギラギラしていました。
吉田 (笑)。オンとオフの切り替えがしっかりできたとは思います。ベンチではみんなと応援しながら笑ったり、喜んだりして。そんな時間をベンチメンバーと共有できたことは楽しかったし、うれしかった。だからこそ、私が試合に出た時は、ベンチメンバーの分まで頑張ろうという思いもありましたね。

――“ギラギラスイッチ”はどのタイミングで入れていたのですか?
吉田 (交代で)呼ばれた時かな。呼ばれて、ユニフォーム姿になってコートに入った時ですかね。

――その気持ちの切り替えは難しいと思うのですが。
吉田 難しいとは思いますよ。だから私がすごく思ったのは、アコやユラ、リト(大沼美琴)たちは毎シーズンこれをしている。その大変さをより知れたし、パッと試合に出て仕事をするという難しさは、もしかしたら後から出ていく方が大変なのかなと。もちろんスタートには大きな責任があるので、それもそれで大変だけど、ベンチから試合に出て流れを変えないといけない選手の大変さも計り知れない。それを改めて知ることができました。

――ある意味、吉田選手が新境地を切り開いたようにも感じました。
吉田 自分が出て、流れを変えられたらそれは楽しいし、やりがいありますよ。もちろん、期待されて試合に出るわけだからプレッシャーもあるけれど、新しいことに挑戦するという意味では今シーズンは充実していました。

 今シーズンは、ユラとツーガードで出ることが多かったのですが、その時は本当に楽しかった。ユラはボールを持ったらプッシュするし、彼女自身も速い。そして必ず私を見てくれているので、走ればパスが来ましたね。

――吉田選手自身もプレーヤーとしての幅が広がったのでは。
吉田 ポジションも2番や3番をやれたし、ここ何年かで一番幅は広がったと思います。1番ポジションが中心でしたけど、バックアップに回って何を求められていて、何が自分の仕事なのかというのを考えることができて、本当に考えながら戦ったシーズンでした。

――ただ、ベテランの域に入っての新たな挑戦ということに抵抗はなかったですか?
吉田 近年毎シーズン同じことの繰り返しになっていたところもありました。私は何か頑張るためのモチベーションが必要なタイプ。何かに挑戦し続けたいという気持ちは常に持っていたかったので、今の自分自身に必要なものは何か、挑戦したことのないことは何かと考えたら、スタートを預けて、若手を育てることに徹するということでした。

 もちろん、スタートにこだわっていた時代もありましたけど、ユラや麻菜美は、私がいることによってスタートで出られない、出場時間も限られるというのは…。それこそ、町田(瑠唯/富士通レッドウェーブ)や本橋(菜子/東京羽田ヴィッキーズ)は、自チームではスタートで、スタートの大変さを経験しています。でも同じ日本代表でも麻菜美はその経験をしていないとなると、その差ってすごく大きいと思うんです。今後、麻菜美が日本代表で引っ張っていく立場になったとしたら、スタートを経験しないまま東京オリンピックに向かうのかと。そう考えた時に、私は日本代表を何年も経験して、スタートやキャプテンもやらせてもらって、オリンピック予選で自力で切符を取った経験もしたので、もういいと。経験が必要な選手に経験させてあげたい、育てたいと思いました。

 ガードとしてガードを育てるのはベテランの役目だと思っています。今シーズンはガードのみんなでこういう時はこうだね、こうした方が良かったねという話が多くできました。それはみんなが試合に出ていたからこそ。ガード同士がコミュニケーションを取り、刺激し合い、サポートし合えたのは昨シーズンにはなかったことで、私が控えに回ったことによってそういう環境が生まれたと思うので、そこも良かったです。

――後継者の藤岡選手に一番アドバイスしたことは
吉田 迷わずシュートを打つようにと常に言っていました。私も経験したことありますが、(外角シュートを捨てられて)ディフェンスに離されることがあったので、離されたら打てばいい、ドライブ行けるんだったら行けばいいと言っていました。悩んでジャンプシュート打っているのは分かっていたし、周りに点が取れる選手たちがいるからなおのこと迷ったとは思います。私も1、2年目は周りの選手が点を取るから私は点を取らなくていいという考えでした。でも、日本代表で国際大会に出た時に他のポイントガードとの差はシュート力だと思ったことで、積極的に打つ、それもゲーム中に打たないと感覚やタイミングが分からないということを経験しました。シュートが入らなくてもリバウンド取ってくれるし、それがパスにつながる。シュート打って落としたらそれもアシストだよとは伝えてはいましたね。

――吉田選手は今シーズン、本当に楽しそうにプレーしていました。
吉田 楽しかったですね~。本当に楽しかった。ポイントガードにこだわってやっていた時代もあったけど、2、3番ポジションで出た時は、自分の好き勝手攻めることができて、点にもより絡めたので、やっぱり楽しいなと思っちゃっいました(笑)。

 1番ポジションになるとチームのこと、周りの選手を生かすゲームを作ることに徹するけれど、2番だとそこまで考えなくて済むというか、周りというよりは自分がガンガン攻めるので、とても楽しかったですね。

――東京成徳大高校時代のような感じが少しありましたよね。
吉田 そうですね。高校の時は自分が点を取らないといけないという状況だったから。今シーズンもユラと一緒に出た時は、ユラも私にボールを集めてくれたし、もう今シーズンは何度も言うように、楽しかったという言葉しか見当たらないです。

――どのポジションでも役割をこなし、控えで出ても高いパフォーマンスを発揮。神々しささえ感じました。今シーズンは新しい吉田亜沙美だったかなと。
吉田 ありがとうございます(笑)。でも、新しいポジションだったり、新しい居場所を見つけられたというのは大きかったのですね。

1/2ページ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事