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阿部純子、日露戦争時代のロミジュリ映画『ソローキンの見た桜』に懸けた想い

3/25(月) 6:30配信

Movie Walker

『孤狼の血』(18)でヒロインを演じたことも記憶に新しい阿部純子の最新主演映画は、日露戦争時代を舞台に国境を越えた愛を描いた日露合作映画『ソローキンの見た桜』(3月22日公開)。史実に基づくラジオドラマが原作ということで、阿部は当時の時代背景を徹底的にリサーチし、戦火のヒロインゆい役と、現代を生きる桜子役の一人二役にトライした。

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新人テレビディレクターの高宮桜子(阿部純子)は、先輩の倉田史郎(斎藤工)と共に、ロシア人墓地の取材をする。その後、桜子は祖母の菊枝(山本陽子)から、自身のルーツがロシアにあると聞かされ、日露戦争時代に看護師をしていた先祖である武田ゆい(阿部純子)の日記を見せられる。日記によると、日露戦争時代にゆいは、ロシア兵将校ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)と運命的に出会い、互いに惹かれ合っていったようだ。

阿部は本作の主演が決まった当初、大きなプレッシャーを感じたという。「主演で一人二役、しかも日本とロシアの合作ということで、そんな大役が自分に務まるのかというプレッシャーと、頑張るしかないという強い責任感がありました。でも、あまり一人で考えすぎずに共演者の方々やスタッフさんを信頼し、皆さんに助けていただこうと気持ちを切り替えました。おかげで楽しく撮影できたと思います」。

脚本を書き、メガホンをとったのは、イッセー尾形が昭和天皇を演じて話題を呼んだ『太陽』(05)のメイキングを務めた新鋭、井上雅貴監督。初の長編映画『レミニセンティア』(16)でもロシア人俳優を起用し、ロシアで撮影を敢行した井上監督が、今回もその経験を活かし、日露のキャストやスタッフをまとめ上げた。

阿部は今回の現場について「演者とスタッフさん含め、みなさんが流動的に動いていて、みんなで映画作りをしていくというスタイルがとても新鮮でした」と振り返る。ソローキン役のロデオン・ガリュチェンコとの共演シーンについては、井上監督も交えて密にディスカッションし、撮影していったそうだ。

「井上監督がおっしゃっていたのは、『日本人とロシア人の考え方や価値観は違うけど、どれも正しくて、間違いではないから、現場で話し合って良いものを作っていきたい』ということでした。私はそういうスタイルの撮影が初めてだったので、最初は戸惑いましたが、確かに『自分はこう思う』ということをきちんと言葉で伝えることは、とても大事だなと思いました」。

例えば、ゆいがソローキンに、雨の中で抱きしめられるシーンも、同じ脚本なのに阿部とロデオンの間で、解釈の違いがあったよう。「お国柄によって愛情の示し方が違うんだなと感じました。ロデオンさんは、ゆいがもっと素直になって、男性の優しさや女性を敬う気持ちを素直に受け入れるんじゃないかと思われたそうです。でも、私は日本人だし、当時の女性としては、男性に対してはじらいをもっていたんじゃないかと考えました。文化の違いがあるので、現場ですり合わせないとわからないことがたくさんありましたが、だからこそお互いのお芝居を尊重し合い、良いシーンが作れたのではないかと。今回、本当に勉強になりました」。

阿部が女優として注目を浴びたのは河瀬直美監督作『2つ目の窓』(14)で、第4回サハリン国際映画祭主演女優賞や、第29回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞した。彼女はそこでより広い世界に視野を向けるため、アメリカ留学を決意。本作でも流暢な英語を披露している。

「英語はいまも勉強中です。留学したきっかけは、世界中のすばらしい作家やクリエイターの方々と一緒に仕事がしたい、そういうチャンスがほしいと思ったことでした。『ソローキンの見た桜』でご一緒した方々は、まさにそういったクリエイティブな精神を持った方々ばかりで、本当にありがたい現場でした」。

阿部は、そういった充実感を感じつつ「自分としてはまだまだダメだと思うことが多いです。留学したのも、自分の芝居に自信をつけたいからでしたが、求めているレベルには届いていないと感じています。もっと見てくれている方と自分を納得させられるように、自分の芝居に自信を持ちたいです」と胸の内を吐露する。

近年、女優として目覚ましい活躍を見せる阿部だが「いまの仕事の状況もすべてが上手くいっているというわけではなく、悩んだり考えたりしているし、心の余裕もまだまだコントロールできていないな、と反省することもあります」と言う。「でも、周りの方々が助けてくださるし、なによりも映画が好きだという気持ちをずっと持ち続けて、頑張っていくことが大事なのかなと」。

戦争に翻弄され、後半で怒涛の展開を見せるゆいとソローキンのロマンス。阿部は今回の役柄を通して、どういうものを受け取ったのか。「愛情にはいろんな優しさがあるんだなと思いました。戦争という背景や、家の問題、時代性などいろいろなしがらみがあったなかでも、ゆいたちの恋はとても純粋だったと思います。そして、時代と国境を超えて、その思いが伝わっていく。私自身は、愛というものを改めて信じてみたくなりました」。(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

最終更新:3/25(月) 6:30
Movie Walker

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