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米中摩擦、最前線は欧州での5G市場争奪

3/26(火) 14:03配信

ニュースソクラ

【中国ウォッチ(10)】ファーウェイ副会長「うちの5Gは米の5倍速い」

 スイスのジュネーブに本部を置き、世界191ヵ国が加盟しているWIPO(世界知的所有権機関)が、現地時間の3月19日、2018年の国際特許申請件数を発表した。

 これに改めて驚愕したのが、ホワイトハウスだったことは、想像に難くない。なぜなら、ホワイトハウスが最も忌み嫌うファーウェイ(華為技術)が、5405件と圧倒的首位に立ったからだ。2位の三菱電機は2812件で、ファーウェイの52%に過ぎず、ほぼダブルスコアをつけた。

 以下、3位がインテルで2499件、4位がクアルコムで2404件、5位がZTE(中興通訊)で2080件だ。国別で見ても、1位アメリカの5万6142件と、2位中国の5万3345件は、ほぼ拮抗している。昨年と同ペースで、中国が9%伸びてアメリカが1%下がれば、今年は米中が逆転することになる。

 詳細は発表されていないが、ファーウェイの5405件中、相当数が「5G」(第5世代無線通信規格)に関連する申請と見込まれる。すなわち、今年「元年」を迎える5G時代を牽引するのは、日米欧の先進国企業ではなく、中国のファーウェイなのだ。

 ファーウェイは、先月25日から28日までバルセロナで開かれた世界最大のスマホの展示会である「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2019」で、今夏から発売する予定の折り畳み式5Gスマホ「Mate X」を発表した。それと同時に、2月26日、MWCの会場で、ファーウェイの郭平副会長兼輪番会長が、「5Gをより安全に、より早く、よりスマートにもたらす」と題した基調講演を行っている。郭副会長は自信に満ちた流暢な英語で、時にブラック・ジョークも交えながら、次のように述べた。

 「最近、ファーウェイに、かつてないほどの関心が集まっていますね。これは多分、われわれが何か正しいことをやっているからなのでしょう(笑)。

 ファーウェイは昨年、150億ドル以上を、研究開発費として投資しました。これはEUの委員会の調査では、世界5位です。

 ファーウェイは、5Gネットワークを大規模に展開していく世界で最初の企業です。さらに重要なことは、より優れた性能を、可能な限り最もシンプルに実現できるということです。すでに通信事業者に対して、5Gの大規模展開への支援を始めています。

 1月に中国のウェブサイト『ZEALER』が発表した実地検査の結果によれば、ファーウェイの5Gは、アメリカが5Gと呼んでいるシステムよりも20倍速い。そのため、先週トランプ大統領が言ったことは、十分理解できます。すなわち、『アメリカは強力で高速かつスマートな5Gを必要としている』(笑)

 ファーウェイは5Gアンテナに、新しい素材を使用しています。コンポーネント数を99%も削減し、カバーも軽量化することによって、重量を40%軽くしました。そうしてリュックサック程度のサイズにしたにもかかわらず、非常に強力で、レベル15の台風が来ても飛ばされることはありません。実際に昨年、深せんを襲った台風でそのことが証明されました。

 ファーウェイはまた、昨年10月に、世界で最も強力なAIチップ『Ascend 910』と『Ascend 310』を発表しました。これによって通信事業者は、ネットワークのコンピューティング費用を削減できます。

 このように、ファーウェイは5Gのリーディング・カンパニーですが、安全性が確保されていないと意味がないことも分かっています。

 プリズムよ、プリズム。この世で一番信頼できる国はどこ?

 これは重要な質問です。この質問の意味が分からない方は、エドワード・スノーデン氏にお尋ねください(笑)。

 サーバーセキュリティは、プリズムや水晶玉、政治によって管理するものではないのです。

 私が約束できるのは、ファーウェイは悪事を働かないということです。ここで明確にしておきますが、ファーウェイはこれまでも、そしてこれからも、バックドアを埋め込むことはありません。また、何者かがファーウェイの機器でそのような行為を行うことも、決して容認しません。

 ファーウェイは過去30年間、安全性において確固たる実績があり、世界の30億人にサービスを提供してきました。ファーウェイの5Gの安全性に対するアメリカの疑念には、まったく根拠がないのです。そして皮肉なことに、アメリカのCLOUD法は、アメリカの政府機関が国境を越えてデータにアクセスすることを許可しているのです(笑)

 結論は、最高のテクノロジーとセキュリティを望むなら、ファーウェイを選ぶべきだということです」

 アメリカという世界最大の国家を相手にして、なかなか堂々としたものである。穿った見方をすれば、それだけ追い詰められているということかもしれない。

 プリズムというのは、アメリカ国家安全保障局が2007年から極秘で運用している監視システムで、マイクロソフト、グーグル、ヤフー、フェイスブック、アップル、AOL、スカイプ、ユーチューブ、パルトークの9社の世界中の通信情報をキャッチしてきた。2013年にNSA職員だったスノーデン氏(現在はロシアに亡命中)によって、その違法行為が暴露された。ファーウェイの郭副会長は、「アメリカこそが、世界中の通信を違法に盗聴している」と言いたかったわけだ。

 郭副会長が、わざわざバルセロナでこのような挑発的な講演を行ったのには訳がある。5Gの世界3大市場のうち、アメリカ市場は、昨年8月に成立した国防権限法によって、ファーウェイは今年8月から排除される。逆に中国市場は、今年9月の上海虹橋駅を皮切りに、ファーウェイがほぼ独占的に5G化を進めていく。

 そうなると、ファーウェイを巡る米中の最大の「戦場」は、3番目の市場であるヨーロッパなのである。

 3月21日と22日に開かれるEU首脳会議では、中国に対する10の新たな具体的行動を提案する共同コミュニケを決議する。これを読むと、EUの思惑は交錯していることが分かる。すなわち、パリ協定から離脱し保護貿易を強化するトランプ政権に対抗するため、中国との連携を深めたいと思う一方で、トランプ政権と二人三脚で中国の社会主義市場をこじ開けたいとも考えているのだ。

 そんな「悩めるEU」を尻目に、ファーウェイを巡るアメリカと中国の「世界大戦」は、EUで激化する一方である。21日からは、習近平主席がイタリア、フランス、モナコに乗り込む。

■右田 早希(ジャーナリスト)
25年以上にわたって中国・朝鮮半島を取材し、中国・韓国の政官財に知己多い。中国・東アジアの政治・経済・外交に精通。著書に『AIIB不参加の代償』(ベスト新書、2015年)

最終更新:3/26(火) 14:03
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