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MotoGP開幕戦で4メーカーがドゥカティに抗議した理由。デスモセディチGPに付けられた新パーツの目的

3/26(火) 22:02配信

オートスポーツweb

 イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。開幕戦カタールGPでアプリリア、ホンダ、KTM、スズキの4メーカーがドゥカティ・デスモセディチGPのスイングアーム下部につけられたパーツについて抗議した。その抗議の理由とはなんだったのか。

【画像】MotoGP開幕戦カタールGPを制したアンドレア・ドヴィツィオーゾ

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 開幕戦カタールGPでのアンドレア・ドヴィツィオーゾの優勝は、MotoGPでの13回目の勝利だった。この数字には意味があるとも言えるし、ないとも言える。レース中、ファクトリー4チームが、FIM MotoGPスチュワード委員会に抗議した。

 抗議の対象は、ドゥカティの“スイングアーム下部のデバイス”で、デスモセディチGP19に乗るドヴィツィオーゾ、ダニロ・ペトルッチ、ジャック・ミラーが使用していた。

 抗議を行ったのはアプリリア、ホンダ、KTM、スズキだが、伝えられるところによると、抗議はドゥカティと同じイタリアのファクトリーであるアプリリアが主導したという。

 唯一、ヤマハは抗議を見送った。なぜならヤマハは雨の影響があるレースにおいてリヤタイヤの水はけを良くするための、似たようなスイングアームのパーツを使用しているからだ。そして、ファクトリー4チームの抗議は却下された。

 なぜ4つのファクトリーチームが抗議を行ったのか? 本当の疑問は、デスモセディチGP19のスイングアーム下部につけられた穴の空いたスコップ状のパーツが何を目的とされたものなのかということだろう。それは空力デバイスなのだろうか。それなら空力レギュレーションに準拠することになる。それともタイヤの冷却デバイスなのか?

 ドゥカティが使用するスコップ状のパーツは、2019年2月のセパンオフィシャルテスト開始時に初めて登場したが、その時は3Dプリンターで出力された状態のものだった。開幕戦カタールGPでは、3台のデスモセディチGP19すべてにカーボンファイバーで作られたスコップ状のパーツが装着されていた。そのデバイスはフェアリング下部の空気の流れを捕らえ、リヤタイヤに向かって上方にそらしていた。

 スコップ状のパーツはタイヤを冷却するか、ダウンフォースを生み出すか、もしくはその両方を行うのだろう。ドヴィツィオーゾはレースウイークのほとんどをスコップ状のパーツをつけずに走行していたが、ペトルッチとミラーのバイクから収集されたデータを見た彼とクルーは、レースにそれが必要だと確信したのだろう。

■ドゥカティ新パーツは「タイヤの冷却」が目的のため承認
「現在のルールブックには、スイングアームのアタッチメントを規制する規定はない」とMotoGPテクニカルディレクターのダニー・アルドリッジは次のように語っている。

「しかしながら、すべてのマニュファクチャラーが準拠すべき空力ボディのガイドライン文書はある。最近になってガイドラインは他の点を規定するために更新された。そのなかでスイングアームのアタッチメントの用途については、冷却、水はけ、デブリからの保護である場合のみ許可される」

「ドゥカティによるデバイスに関する申告では、アタッチメントはタイヤの冷却のためだとされている。したがってこの使用用途のみということで承認された。しかしながら、他のマニュファクチャラーはこのアタッチメントの主要な目的は、空力を生み出すためだと考えている。これはガイドラインでは許可されていない。このような理由で彼らは抗議しているのだ」

 ルイジ・ダリーニャによる数々の仕掛けについて覚えておくべき重要なことは、そのほとんどが共通ソフトウェアとミシュランタイヤという、2016年のルール改定に対処するために設計されたということだ。

 ダリーニャの先進的な空力パーツは、主に電子制御面ではなく、メカニカル面でウィリーを減らすために設計されたものだ。それにより、より速い加速のために、エンジンはリヤタイヤのトルクをさらに生み出すことができる。

 ホールショットデバイスも同様に、グリッド上でのウィリーの可能性を減らす。そしてエンジンはリヤタイヤのトルクを増大させることができる。そのためにドヴィツィオーゾがカタールGP決勝でホールショットデバイスを使用したことは間違いないだろう。

 スイングアーム下部に付けられたパーツも同じ考え方から生まれたものだろう。ミシュランタイヤはブリヂストンタイヤとは正反対だ。ブリヂストンのフロントタイヤがリヤタイヤよりも優れていた一方で、ミシュランのリヤタイヤはフロントタイヤよりも優れている。だからライダーはバイクを止めるためにリヤブレーキを多用し、バイクでコーナーを曲がるためにリヤタイヤを活用する。したがってリヤにダウンフォースがあるほど、様々な状況で役立つのだ。

 タイヤの冷却システムも助けになるだろう。レース距離でのパフォーマンスを改善するために、ミシュランタイヤの温度を妥当なレベルに保つことは不可欠だ。過去2シーズンの大半において、ドヴィツィオーゾはタイヤ温度とライフのマネージメントにおける名手だった。

 ドヴィツィオーゾが、リヤタイヤからグリップを得られるようにダリーニャが助けることができたら、良いことづくめだろう。おそらく違いは小さいだろうが、レースにおいて100分の1秒単位で勝利が争われている状況では、小さなことも大きな意味を持つ。

 ドヴィツィオーゾは抗議についてのコメントは避けたが、チームメイトのペトルッチは話をした。

「パドックでは、ドゥカティがルールの限度を超えているという声が常にあるのは確かだ」とペトルッチ。

「でも僕たちはルールを読み、尊重している。それなのに他の多くのチームは、ウイングレットからサラダボックスに到るまで、僕たちの解決策をすべてコピーするんだ。彼らは僕たちを阻もうとし、それができないと真似をする」

 ドゥカティの“スイングアーム下部のデバイス”に関する抗議は却下されたが、関係する4つのファクトリーはその決定を不服として控訴した。

 この件がMotoGPにおいて、バイクとライダーの代わりに弁護士とルールブックが記事のトップを飾るような、新たな時代の幕開けとならないことを願おう。

[オートスポーツweb ]

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