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トランプ大統領の宇宙軍創設、中国との宇宙戦争ありうる

3/27(水) 11:46配信

ニュースソクラ

狙われる米国の人工衛星、GPS攪乱でミサイル誤射も

 トランプ大統領は「宇宙軍」創設に関する法案を議会に提出した。昨年3月に「宇宙は陸・海・空と同様に戦闘の場である」と言明した。元々、米国は空軍の中に宇宙コマンド(Space Command)を設置して宇宙の安全保障に努めてきた。トランプ大統領はこれでは不充分で、議会の承認を得て来年にも宇宙軍を創設することを狙っている。

 宇宙が戦闘の場であるというのには、19年1月に、無人探査機を世界で初めて月の裏側に飛ばすことに成功した中国の宇宙開発の急速な進歩が念頭にある。昨年末、ワシントンのシンクタンクなどを訪問した際に、「中国製造2025」をトランプ政権が脅威と敵視している中でも、宇宙開発での長足の進歩と軍事面への応用の危険性を指摘する意見が少なからず聞かれた

 ちなみに中国の科学分野への研究開発投資はこのところ年率20%近い伸びを示しており、米国に肉薄する年間5,000億ドルに達している。とくに宇宙開発面をみると、ロケットの打ち上げは米国と並ぶ年間30回以上に達している。従来は宇宙開発と言えば米国とロシアの独壇場であったが、いまや人工衛星の数では中国がロシアを抜いて第2位に躍進している。

 最近では中国が地球の裏側に人工衛星を飛ばしたことが大きな話題となった。月の裏側は地球から電波信号の交信が途絶えるため、人工衛星をコントロールすることは不可能と言われてきた。しかし、中国は、中継用の人工衛星を飛ばして地球と無人探査機の間の連絡を可能にするという高度なテクニックを導入してそれを克服した。

 米国、ロシア中国が月に興味を示しているのは、地球にとどまらず、月でも資源開発に突き進むためである。さらに月面に宇宙基地を設けることも企画しているようだ。月面は低重力であるため、地球から重力の壁を破ってロケットを発射するより効率的であり、ここから宇宙の惑星に資源開発を狙ったロケットを発射することも夢ではない。

 このように中国は、決して平和目的で「月面に人を立たせる」「科学の発展のための平和利用」といったロマンを追求しているわけではない。宇宙を他国に先んじて植民地化してしまおう、と狙っている。

 このように中国が宇宙開発に積極化する中で、とくに身近な脅威として米国が中国を恐れているのは、地球の周りを周回する米国の人工衛星の破壊、機能マヒに陥らせる能力を持ち出したことだ。中国は、すでに10年以上前に対衛星ミサイルを発射して自国の老朽衛星の破壊に成功するなど、人工衛星に対する攻撃能力を向上させてきた。

 いまでは自国の人工衛星からレーザー光線、電磁パルスなどを照射して破壊する兵器も開発している。さらに直接的には破壊せずに運航を不能にするサイバー攻撃、高周波電波を使った攪乱などの開発も進めている。もちろん、最終的な標的は米国の人工衛星である。

 米国は軍事的にも社会生活の上でも人工衛星への依存度が大きい。もし、中国が米国の人工衛星の活動を阻害できれば、莫大な損失も覚悟せざるを得ない地上戦をスキップして米国社会、経済を混乱に貶めることに成功する。中国の得意とするサイバー攻撃と同列である。

 米国は自ら開発した人工衛星上のGPSを利用したミサイル誘導、通信衛星によるドローンの遠隔操作等をイラン、アフガンとの戦争で実戦に導入してきた。91年1月の湾岸戦争における「砂漠の嵐作戦」ではレーザー誘導がミサイル誘導の主流であった。しかし、93年のGPS完成後はGPS誘導弾の使用が飛躍的に高まった。

 2003年3月の「イラクの自由作戦」ではミサイルのGPS誘導比率は約7割に達した。米国は、中国がミサイルのGPS誘導能力を無力化させることに成功すれば、米国の圧倒的な軍事的優位が崩れることを懸念している。

 商業利用の面でも米国は一頭地を抜いている。米国が打ち上げている人口衛星のうち、約2割が軍事衛星、残りの約600個が商業用衛星と言われている。軍が所管している機能で最も有名なのは世界中で利用されているGPS(測位衛星)である。軍が所管しているため、いざとなれば人為的に測位をずらして敵の攻撃から守ることも可能であることは言うまでもない。

 また、商業衛星の機能は、通信・放送衛星、気象衛星など広範な分野に至っており、もしこれらの衛星が機能不全に陥れば、社会・経済活動が麻痺する。今後も米国の民間企業による宇宙ビジネスの一環として、例えば全世界で超高速インターネットを使えるように通信衛星を飛ばすなど、壮大な計画が練られている。これらの商業衛星を攻撃から守ることも米軍の重要な役割である。

 もちろん、米国は人工衛星に搭載する防護システムの開発を進めている。レーザー光線で敵の衛星を破壊することはもちろんであるが、サイバー攻撃を受けても電子系統を直ちに復旧できるプログラミングなどを開発した、と言われている。

 平和ボケの日本にいると、きれいな青空の上にある宇宙空間、毎夜見上げている月でも、世界の二大勢力が相手より優位に立とうと、しのぎを削っている姿は想像しにくい。しかし、宇宙のかなたからレーザー光線で都市攻撃をするような空恐ろしいことすら身近に迫っている。冒頭に述べたように「宇宙は陸・海・空と同様に戦闘の場である」というトランプ大統領の危機意識は正しい。米中の宇宙戦争勃発がありうることは他人事ではない。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:3/27(水) 11:46
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