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75歳のおじいさんが廃品回収リヤカーを引いて大統領府に向かった理由とは

3/27(水) 7:51配信

ハンギョレ新聞

基礎生活受給高齢者など100人、大統領府に向かって行進 基礎年金と同額を生計給付から削減…「あげたふりして取り上げる基礎年金の解決を」  「高齢者の貧困が深刻なのに『包容的福祉国家』掲げるなら、放置してはならない」 昨年、国会福祉委4102億の予算に合意したにもかかわらず国会議決ならず 

 「リヤカーに段ボール箱や廃紙をいくらいっぱいに積んで行っても、古物商から1万ウォン(約970円)ももらえません」

 10年余り廃品回収で生計を立てているチョ・イニョンさん(75)さんは「廃紙」ではなく、「古鉄」だけを回収する。毎日、潰れた鍋やフライパン、アルミ缶を手当たり次第に拾い集めても、手に入るのは多くても月10万ウォン(約9700円)前後。若い頃、建設現場の日当だった10万ウォンを、今は1カ月かけて稼ぎ、日々を暮らしている。

 古鉄よりお金にならない廃紙を回収する高齢者の境遇は、チョさんよりも深刻だ。最近、古物商は廃紙1キロ当たり30~50ウォンを支払う。「廃紙老人福祉連帯」は、このように廃紙の回収で生計を立てている高齢者が全国に約175万人いると推算している。全国の古物商7万カ所を調査し、取引する高齢者が平均25人と推定して計算した数値だ。全国古物商団体の「社団法人資源リサイクル連帯」のチョン・ビョンウン共同議長は「(1997年の)アジア通貨危機(IMF経済危機)前は1キロ当たり約150ウォンだったが、価格が暴落し、廃紙を回収する高齢者たちの状況がさらに難しくなった」と話した。韓国の高齢者貧困率は46%(2015年基準)で、経済協力開発機構(OECD)加盟国(平均12.5%)の中で最も高い。

 25日午前11時、ソウル鍾路区(チョンノグ)の地下鉄3号線の景福宮(キョンボククン)駅の近くで、チョ・イニョンさんが厚手のジャンパーをしっかりと着込でいた。花冷えが和らいだとしても、まだ風が冷たかった。チョさんが廃品をいっぱい積んだリヤカーをゆっくり引き始めた。リヤカー2台がその後ろを続いた。高齢者約10人は段ボール箱を紐に結んで引きずりながら歩いた。数人は空き缶の入ったビニール袋を肩に担いだ。90歳のパク・チョンヒョクさんは90度に曲がった腰で、杖をつきながらチョさんより先を歩いた。

 そうして高齢者約100人が長蛇の列をなして歩きだした。この日彼らが向かったのは古物商ではなく、大統領府だった。景福宮駅から大統領府前までは1キロメートルを少し上回る距離だ。大人の足で約20分あれば着くような距離だが、廃品回収の高齢者たちは周囲の人々に助けられながら、1時間ほど行進した。高齢者の行進の戦闘には「あげたふりして取り上げる基礎年金を解決せよ!」というスローガンが書かれた横断幕が広がっていた。

 リヤカー行進の先頭に立っていたチョ・イニョンさんは、ソウル龍山区東子洞(トンジャドン)の安宿で生活する基礎生活(生活保護)受給者だ。生計給付や住居給付を合わせて約70万ウォン(約6万8千円)を毎月受け取っている。このうち20万ウォン(約1万9千円)は家賃に消えていく。基礎老齢年金が導入された時、チョさんはうれしかったという。「タバコ代1ウォンでも稼ごうと」あくせくしていた廃品回収を少し減らせるかもしれないと、内心期待していた。しかし、期待はすぐに失望に変わった。毎月25日、基礎年金が通帳に振り込まれた嬉しさに浸るのも束の間、来月20日に生計給付が入金される際には、基礎年金金額が差し引かれた生計給付額が振り込まれるからだ。障害手当や国家有功者生活調整手当などと異なり、基礎年金は基礎生活保障制度において「所得認定額」に含まれる。国民基礎生活保障法のいわゆる「補充性の原則」のためだ。生計給付は他の所得や財産、労働能力を活用することを前提に、これを補充・発展させることを基本原則とするという理由からだ。

 来月から所得下位20%の高齢者に基礎年金が月30万ウォン(約2万9千円)に引き上げられるというが、チョさんは少しも嬉しくない。「あげたふりして取り上げる基礎年金」は、基礎生活を受給している高齢者にとっては「絵に描いた餅」と同じだ。一方、次上位階層の高齢者は基礎年金を受け取ることができるため、基礎生活受給高齢者たちとの間に「逆進的所得格差」があらわれる場合もある。統計庁の昨年第4四半期の家計動向調査の結果によると、所得下位20%の1分位の世帯主の平均年齢は63.4歳だった。高齢者の貧困問題がそれだけ深刻だという意味だ。

 保健福祉部は、来月から基礎年金月30万ウォンが支給されている所得下位20%の高齢者が154万人に達すると推算している。ただし、このうち生計給付を受ける基礎受給者約37万人の大半は、今回も「あげたふりして取り上げる基礎年金」問題のため、実質的な恩恵は受けられないものとみられる。ソウル龍山区厚岩洞(フアムドン)に住んでいる基礎生活受給高齢者のキム・ホテさん(86)は「来月には基礎年金を30万ウォンに引き上げるというが、これまでは25万ウォンをあげて取り上げ、来月からは30万ウォンをあげたふりして取り上げていくだけだ」と話した。

 ソウル銅雀区大方洞(テバンドン)の賃貸アパートに住むキム・ミョンホさん(73)も「基礎年金が初めて導入されたときは、基礎生活受給老人たちも『生活が少しは楽になるだろう』と興奮した。しかし、基礎年金制度ができたからといって、暮らしが良くなったのは一つもない」とため息をついた。一人暮らしをしているキムさんは、生計給付50万ウォン(約4万9千円)と住居給付5万ウォン(約4900円)をもらって生活する。「基礎生活受給費が通帳に振り込まれても、光熱費や家賃が引き落とされるまでは手をつけられません。残りのお金で何とか持ちこたえるしかないです」

 この日の行進を主催した「貧困老人基礎年金保障連帯」は、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は韓国社会の最下位にある貧困老人の基礎年金の剥奪をいつまで放置するのか」とし、政府と大統領府に対策作りを求めた。「あげたふりして取り上げる基礎年金」問題の解決は、共に民主党が2016年、総選挙の公約として掲げた事項でもあった。昨年、国会保健福祉委員会が基礎生活受給高齢者に付加給付の形で月10万ウォンを追加支給する案に合意したが、国会本会議の敷居を越えることができなかった。このような補完策を施行するには、今年4102億ウォン(約398億6千万円)の追加予算が必要だった。

 「私が作っていく福祉国家」のオ・ホノ運営委員長は「国会議員らが自分の選挙区の予算として数千億を要求するのに、貧しい高齢者たちにたった月10万ウォンずつ支給する予算には賛成しなかった」とし、「文在寅政権が包容的福祉国家を掲げながら、あげたふりして取り上げる基礎年金を放置するなんて、あり得ないことだ」と指摘した。大統領が国民基礎生活保障法の施行令を改正すれば、基礎生活受給高齢者の基礎年金受給権を完全に保障できるということだ。

 保健福祉部の関係者は、「国会が昨年議論したように、付加給付を上乗せする案など、さまざまな案について検討している」と述べた。今月11日、保健福祉部の今年の業務計画を発表する際、パク・ヌンフ保健福祉部長官は「(あげたふりして取り上げる基礎年金問題と関連して)当然、全額ではなくても、基礎年金を(生計給付の)所得認定額から一部削減することで、実質的に基礎年金と生計給付がどちらも高齢者の貧困に役立つ方向で問題を解決するつもりだ」と発言した。同日、「貧困老人基礎年金保障連帯」は大統領府に「あげたふりして取り上げる基礎年金」問題の解決を求める書簡を渡した。

ファン・イェラン、パク・ヒョンジョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:3/27(水) 7:51
ハンギョレ新聞

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