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ダウン症のある兄の妹に、母親が遺した「言葉」家族を縛っていたもの 「そうだよね」の一言で救われる心

4/2(火) 7:00配信

withnews

 障害のある人の兄弟姉妹が「きょうだい(きょうだい児)」と呼ばれることがあります。彼ら、彼女らの生きづらさの背景には、障害に対する親の特定の価値観に縛られるケースが少なくありません。一方で、こうした親への心理的な支援は乏しいとの指摘もあります。母との葛藤を乗り越え、「きょうだい」だけでなく、親への支援の輪を広げる活動に踏み出した女性がいます。(朝日新聞文化くらし報道部・森本美紀)

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亡き母がつづったメッセージ

 東京都の持田恭子さん(52)は、「きょうだい」たちが語り合い、悩みなどの解決策のヒントを共に考える団体「ケアラーアクションネットワーク」(東京)の代表です。

 合宿やバーベキューなどのイベントも開き、これまでに延べ500人が参加。「きょうだい」自身が納得できる人生を送れる社会をめざし、「あなたは1人じゃない」というメッセージを届けています。

 しかし、こうした活動ができるようになるまでの道のりは平坦ではありませんでした。恭子さんは、ダウン症の兄(54)を巡って、特に母とよく衝突しました。

 家族全員が兄の世話に当たってほしいと考える母と、兄にもできることはしてもらい、家族でもそれぞれが自立して暮らしたいと考える恭子さんの溝は、なかなか埋まりませんでした。

 でも昨年12月、84歳の母が亡くなった後に見つかった1冊のノートには、「恭子へ」と題して、こんなメッセージがしたためられていました。

     ◇
恭子へ

ママをたすけてくれてありがとう
心より御礼をい々ます
命を大切にマー君とター君と
に見守られて幸せな時をすごして
下さいネ。
今朝は桜吹雪です。きれい

     ◇

 マーくんは恭子さんの夫、ター君は兄の愛称です。

 「私がずっと言ってほしかった言葉をママは最期に遺してくれました。今は『ありがとう』と言いたい」。恭子さんは涙を流し、声を詰まらせました。

存在が認められた日

 幼少の頃、母は家事で忙しい時などに口癖のように言いました。「ター君のこと、みておいてね」。

 妹の自分だってお母さんに面倒をみて欲しいのに……。でも、母の思いにこたえようと、自分のそんな気持ちにフタをしました。

 社会人になってからは「(親が亡くなった後を)よろしくね」という言葉がとても重く、「妹というより、姉のように扱われている」と思っていたそうです。

 でも、母が遺したメッセージを読み、恭子さんが周りの人に「見守られる」存在でいていいのだ、という「承認」を初めてもらえたように思えました。

 やっと自分を肯定してくれた――。長年のわだかまりが解けたといいます。

 恭子さんは「子どもへの接し方に悩む親たちに、私の経験や母の言葉を伝えていきたい」と話します。

 1月、障害のある子をもつ親が開いた「きょうだい児の子育て」と題した講演会で、母の写真や母のメッセージを紹介すると、会場からすすり泣く声がもれました。

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最終更新:4/2(火) 7:00
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