ここから本文です

【木内前日銀政策委員の経済コラム(38)】 欧州で再燃する日本化(Japanification)懸念

3/28(木) 13:30配信

ニュースソクラ

日本化指数でみると欧州は危険段階

 欧州経済がデフレに沈んだ日本経済と同じ道を歩むのではないか、という「日本化(Japanification)」懸念が、再び高まりを見せている。

 そのきっかけとなったのは、3月7日に開かれたECB(欧州中央銀行)の理事会だ。ECBは2019年の成長率見通しを、前回の1.7%から1.1%へと大幅に下方修正した。また、年内の利上げ見送りと銀行への新たな資金供給策(TLTRO3)の導入を決めている。

 さらに、金融市場ではドイツ10年国債利回りの低下傾向が続いており、マイナス圏入りも視野に入ってきた。早晩、日本の10年国債利回りを下回る逆転現象が起こる、との観測が生じており、これも、「日本化(Japanification)」懸念を高める要因となっている。

 オランダの金融グループINGは、「ユーロ圏の日本化(The Eurozone’s “Japanification”)」と題するレポートを最近発行している。同レポートでは、「日本病(Japanese disease)」に関する伊藤隆敏・コロンビア大学教授の分析をベースに、日本化モデルが紹介されている。

 このモデルに採用されている要素は、(1)需給ギャップ、(2)インフレ率、(3)政策金利(短期)、(4)人口動態変化、の4つであり、それらに基づいて、日本化(Japanification)指数が作成されている。その中立水準は+4~+6であるが、本家の日本では、同指数は1993年から2017年まで、実に4半世紀に渡って一貫してマイナスの領域にある。

 一方で、ユーロ圏の指数は2012年から2017年まで、マイナスの領域に沈んでいる。これが、ユーロ圏も日本で生じた「失われた20年」の入り口にあることを示唆する危険信号、と受け止められている。

▼国によっては日本と類似

 同レポートは、欧州と日本の状況との類似点と相違点をそれぞれ挙げている。その上で、欧州の日本化は、未だ部分的なものにとどまっているとの判断を示している。

 類似しているのは人口動態だ。日本の人口は2010年から2017年の間に135万人減少した。ユーロ圏でも、生産年齢人口は、既に10年前の2009年に2億2,000万人でピークに達し、2018年には2億1,800万人まで200万人も減少している。

 他方、日本と欧州との違いも指摘されている。第1に、日本が90年代末から物価が下落する、いわゆるデフレ局面を経験したのに対して、ユーロ圏では年平均値でマイナスのインフレ率は未だ経験していない。

 第2に、日本の政府債務のGDP比率は2018年に238%に達しているのに対して、ユーロ圏では最新値で86%にとどまっている。

 しかし、ユーロ圏も国ごとに見れば、日本にかなり近い状況も生じており、事態は、それほど楽観できないのではないか。例えば、ギリシャの政府負債GDP比率は、2016年に183%となり、日本に次いで主要国中2位となった。

 また、スペインでは、2014年から2016年の間に継続した物価下落が見られた。イタリアでは、2008年から2013年の間にマイナス成長が続いた、などが挙げられるだろう。

 同レポートでは、ユーロ圏の状況が日本と比べればまだ良好である理由として、金融システム不安に対する当局の対応の違いも挙げている。当局の銀行救済とECBの金融緩和措置が、日本と比べるとより迅速な対応であったとの評価であるが、果たして本当だろうか。

 現在のイタリアの銀行の不良債権問題などをみても、欧州の当局が迅速な対応をとり、またそれが大きな成果を挙げたようには見えない。日本との類似点、相違点に注目しつつ、ユーロ圏の経済、金融情勢については、今後も厳しく見ていく必要があるのではないか。

■木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。

最終更新:3/28(木) 13:30
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事