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闇から闇に葬られる生きもの 動物実験に葛藤はあるか 森映子著「犬が殺される」を読む

3/29(金) 12:22配信

47NEWS

 

 「ヤコブ病抑制成功 治療薬実用化目指す」という見出しに目が吸い寄せられた。3月24日の東京新聞朝刊である。

 「人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や、牛海綿状脳症(BSE)などの難病『プリオン病』の進行を食い止める物質を、岐阜大を中心とする研究グループが開発した。人に近いサルへの初めての投与実験で効果が確認された」

 方法も記されている。

 「研究では、異常型プリオンに感染し、プリオン病特有の認知症に似た症状が出た複数のサルのうち、MCを毎週投与したグループは、半年間の投与期間中は症状が進行しなかった。一方、投与しなかったグループは運動機能が低下するなどし、3カ月後に死んだ」(筆者注・文中の「MC」は病気の進行を食い止めるために開発された有機化合物)

 記事は「異常型プリオンに感染し」と自動詞を用いるが、人間がそうしたのだから「感染させ」という他動詞にするべきだろう。他の資料も調べると、サルの種名はカニクイザル。ニホンザルと同じマカク属のサルだ。画像を見ると、外見も似ている。

 いったい何匹のカニクイザルがこの研究で死んだのだろう。死んだサルたちは、人間がプリオン病と闘うための尊い犠牲となった。そう思って通り過ぎていいのだろうか。

 そんなことを考えたのは、日本における実験動物の悲惨な状況を追った「犬が殺される」(同時代社)を読んだからだ。時事通信記者・森映子さんの徹底した取材に基づく労作である。実験動物の状況は「悲惨」というより「凄惨」という形容の方が適切かもしれない。

 「実験動物」とは、なじみのない言葉かもしれない。彼らのことはほとんど報じられないし、普通に暮らしていれば接する機会もない。だが、実験動物なくしては成り立たないほどに、私たちの日常は彼らの命に依存している。

 ▽3Rの原則はあるが…

 同書の第1章は「獣医大学の実習」。獣医大・獣医学部では昔から、犬、牛、ニワトリ、ウサギ、マウス、カエルなどを使って実習が行われてきた。

 4年前まである大学で行われていた犬の実習例。1日目に避妊または去勢手術、2日目に脾臓(ひぞう)の摘出、3日目に腸管吻合(ふんごう)、4日目に骨盤を大腿骨から外す、5日目に肺を切除する。ビーグル犬を使い、麻酔から覚めたら再び麻酔をかけて体を切る。犬は痛がってキューンと泣き叫ぶ。水はやるが、5日間絶食。

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最終更新:3/30(土) 13:41
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