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コンビニ閉店の裏側…ドミナントで家庭崩壊、オーナー失踪騒動

3/29(金) 20:53配信

弁護士ドットコム

3月31日で閉店が決まっている都内のセブンイレブン店主が、2月末に本部から閉店1カ月前を通知された後、失踪していたことが分かった。

【図説】東日本橋エリア・半径200m中にセブンが5店舗

この店舗は、東京都内にあるセブンイレブン東日本橋1丁目店。2010年にオープンしたが、ドミナント戦略(特定地域への集中出店)などの影響により経営が悪化していた。

現在、同店を中心とした半径200m前後には、他のコンビニが6店舗あり、うち4つはセブンとなっている。

オーナーの齋藤敏雄さん(60)は自殺をほのめかしていたため、訪れていた北海道で警察に一時的に保護された。支援者の助けで3月28日、東京に戻り、今後の身の振り方について関係者と相談している。

●他チェーンを追い出したら、別のセブンが入ってきた

妻の齋藤政代さん(52)によると、同店は2010年のオープン後、徐々に売り上げを伸ばし、近隣のファミリーマートやローソンが撤退。1日の売上(日販)が100万円前後になることもあったという(セブンの平均日販は65万円ほど)。

しかし、店から100mほど離れたローソン跡地に別のセブンが出店、売上が激減した。その後も500m圏内に新しくセブンができ、2019年3月には200m圏内にまたセブンが増えた。

ドミナントされれば、当然売上は落ちる。取材に対し、本部は「オーナーに丁寧に説明する」と回答するが、オーナーが拒否できるわけではないだろうし、手当も出ない。

「共食いさせておいて、(ほかの店と)仲良くしろと言っても無理です」(政代さん)

加盟店が本部に払うチャージは、売上から仕入れ代を引いた、純粋粗利で考えられる。加盟店の人件費や廃棄(セブンは本部が15%持ち)はほとんど考慮されない。

本部からすれば、ドミナントで客が増え、「全体の売上高」が少しでも上がれば、利益が増える。一方、加盟店にとっては、客を各店舗で奪い合うことになる。

一定期間たてば、売上が回復する傾向にはあるものの、本部とオーナーが向いている方向が必ずしも同じではないから、脱落するオーナーが生まれている。

●ドミナントで人手不足、長男の死

近所にできた新店舗は、コンビニ経営者の身内の店で、客だけでなく、スタッフの取り合いにもなったようだ。

周辺のコンビニ店員の多くは外国人留学生。時間をかけて日本語の接客を教えても、他店が時給を上げて、引き抜いてしまうことがあったという。

2014年9月には、深夜シフトに入っていた長男の栄治さん(当時19)が夜勤後に自宅で自殺した。

遺書や正確な労働時間は残っておらず、理由は定かではないが、政代さんは「店のために息子を失った」と後悔を口にする。

●生活苦

長男の死のしわ寄せは、高校生だった次男にも来た。日勤だけでなく、夜勤に入ることもあったという。当然、授業のほとんどは寝て過ごした。

政代さんは、子どもを犠牲にするくらいならやめたいと、本部の経営相談員(OFC)に話したこともあったそうだ。しかし、違約金がかかると言われ、渋々続けることになったという。

本部も売上の減少を気の毒に思ったのか、店の移転を提案してきたこともあったが、いつの間にか話は立ち消えになっていたという。

一方でOFCからの経営アドバイスは、家族がシフトに入って人件費を削る、というものだった。当然ながら、食事はいつも店の廃棄食材だ。

なお、本部は、移転や違約金については「個店のことなので」と回答を控えている。

●崩壊していく家族

もちろん、店側に落ち度がなかったわけではない。人件費が払えず、店の自己資本金を割ってしまうため、オーナーの敏雄さんは借金を重ね、ついには消費税にも手を出してしまったという。

コンビニでは、基本的に毎日の売上をすべて本部に送金することになっており、本部の取り分を引いた上で、オーナーのお金や消費税が毎月戻ってくる。

消費税の滞納は、現在までにおよそ900万円。あくまで店の運営のためだというが、次男の大学の授業料にも手をつけざるを得なくなり、家族関係が悪化。2018年2月に別居することになった。

妻と次男は「もうコンビニはできない」と店の仕事からも手を引いた。2人の協力が得られなくなった敏雄さんは、独りで立て直しを目指していたようだが、勤務中に救急車で搬送されるなど体調は思わしくない。

そして、今年2月末にOFCから急に閉店を告げられたと主張している。3月1日には、店から直線距離で150mのところに別のセブンのオープンが決まっていた。

ただし、セブン-イレブン・ジャパンは取材に対し、「合意解約になっており、オーナーがサインした書面がある」と返答。敏雄さんは身に覚えがないといい、納得していない。

●「何一つ楽しいことをしてあげられなかった」

敏雄さんが北海道に行ったのは、寒いところに行けば、持病の心筋梗塞で、家族にいくばくかのお金を残して死ねるのではないか、と考えたからだという。そこまで追い詰められていたのだ。

なお、敏雄さんの保護には、セブンの協力もあったようだ。

敏雄さんは、オーナーでつくるコンビニ加盟店ユニオンと接触していた。3月25日、同団体がセブン本部に申し入れを行った際、敏雄さんに自殺の危険性があるとして、セブンに対応を要求。セブン側も了承したという。その日のうちに、敏雄さんは地元警察に保護された。

敏雄さんは「天下のセブンなんで、大きな金儲けはできなくても、普通の生活はできるだろうと思っていた」と語る。十分な休みも取らず仕事してきたのに、家庭や貯金、店もなくなろうとしている。

弁護士ドットコムニュース編集部

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