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人では避けられないのか…藤井聡太七段がひねり出した大逆転への巧妙な罠 将棋史に残る一手が誕生

3/29(金) 7:02配信

AbemaTIMES

 3月27日に、今年度の最終対局となる竜王戦4組ランキング戦を勝利で終えた将棋の藤井聡太七段(16)。年度の成績を53局で45勝8敗(未放映のテレビ対局を含む)とし、勝率は歴代3位となる.849で、2年連続での勝率1位に輝いた。この日の藤井七段は、終盤まで大劣勢。持ち時間を使いきり、1手60秒以内で指し続けていたが、ここで対戦相手の中田宏樹八段(54)を惑わす一手を放った。これにより藤井七段は大逆転勝利。後々まで語り継がれそうな一手に、午後10時15分ごろから棋士や関係者、ファンがネット上で騒然となった。

 「人間対AI」という勝負に、ある程度の“決着”がついた将棋界において、藤井七段の指す一手が、時として「AI超え」と称されることがある。ただ、この夜に指した一手は、おそらく対人間用とも言うべきか、残り時間が少なくなった中で読み切るのが困難な、非常に巧妙な罠、といったものだった。対局を見守っていた棋士やファンが、藤井七段の敗戦を覚悟していた中、ふいに藤井陣に置かれていた銀が、まるで想定外の方向へと進んでいった。

 この銀、駒損などを無視して相手に渡す「ただ捨て」に見える。苦しんでいるのは藤井玉の方。初級者~中級者ぐらいであれば、意味がわからないだろう。ただ、実力上位の人になるほど、この手の恐ろしさが分かってくる。この銀を取った途端、中田八段の攻撃が逸れ、逆に藤井七段が一気に中田玉を即詰みに討ち取るというものだった。ネット上では、この手を境に、驚きの声が激増。「恐ろしすぎる」「マジック炸裂!」「めまいがする」という声とともに、食べる(取る)と危険なことから「毒まんじゅう」と例える者も多かった。

 結果、この銀を取ってしまったことで、中田八段からすれば大逆転負けを喫することになるわけだが、ただで捨ててきた銀を取るべきか、取らないべきか。残された時間は、わずか3分しかなかった。ドラマなどでよくある、赤と青、どちらかのコードを切ればセーフ、間違えればアウトといった爆弾処理のシーンを想像させる、そんな状況だった。時間さえあれば、これは取ってはいけない銀だったことは分かったはず。ただ今はとにかく時間がない。自分が優勢、さらには勝勢であることも間違いない。この状況下で、別の一手を探し出せる棋士がどれだけいるのかと、対局を見ていた人々はそう思った。

 大逆転勝利した藤井七段、さらにはタイトル通算99期を誇る第一人者・羽生善治九段(48)も、過去にAIに関して問われた際、より人間同士の戦いに価値を作ることの意義を答えたことがある。人と人とのぶつかり合いだからこそ起こるもの。午前中から長時間に渡り戦い続けた結果、ほんの数分で起きたことで、すべてがひっくり返る。これぞ将棋という勝負、一手が16歳と54歳の2人によって生み出された。

最終更新:3/29(金) 7:02
AbemaTIMES

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