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英国、総選挙か、合意なきEU離脱か 首相案の再採決や国民投票も

4/2(火) 13:01配信

ニュースソクラ

【経済着眼】漂流を続けるブレクジット

 本来であれば、英国がEUを離脱する日であった3月29日(金)、メイ首相が提出したEUとの離脱合意案に関する第三回目の投票が行われた。開票結果は賛成286票、反対344票と反対が58票を上回り、三回連続での否決となった。

 ただ賛否の票数差は第一回の230票、第二回の149票、そして今回と着実に縮小した。メイ政権と連立を組むアイルランド民主統一党(10名)が一貫して反対に回ったものの、保守党の強硬派が徐々に離脱合意案の賛成に回ってきたからだ。

 今回も二回目投票まで一貫して反対してきた欧州調査派(ERG)のリーダーであるリースモグ議員やラーブ元離脱担当相らが賛成に回った。ここにきての強硬派の態度軟化は腰砕けのように見える。しかし、実はここでメイ首相の提案を葬り去ると、離脱が長期間にわたって延期されて、その間に総選挙や第二回の国民投票などに進んで離脱自体が困難になりかねないことを恐れたものである。

 またメイ首相は、三度目の採決で離脱合意案が通れば引き換えに首相を辞任する、と申し出ている。保守党党首選になればボリス・ジョンソン元外相ともどもリースモグ、ラーブ氏ともに最有力候補であり、そういった計算もあったようだ。

 メイ首相の提案が否決されたため、メイ首相はEUに対して4月12日までに新たなかつ具体的な方針を示さなければならない。現在の情勢ではそれはかなり難しく、欧州委員会は合意なき離脱に至る可能性が高まったと断じている。トゥスクEU大統領は4月10日に英国のEU離脱を協議する臨時首脳会議を開催することを決定した。

 4月12日にEU離脱、という日程を前提に今後の英国の対応を考えるとそれほど選択肢は多くない。第一にはメイ首相が、次第に反対票が少なくなってきている中で、四回目の投票を行って、この可決を目指すことだ。その鍵は過去三回の投票で否決を続けてきた連立を組むアイルランド民主統一党(DUP)の10名を賛成に回らせることができるかどうかにある。

 メイ首相は「議会で出来ることにはもう限りがある」(Commons was reaching the limits)との言い回しで、こうなったら総選挙実施も辞さないという姿勢を示している。下院の2/3の賛成を得れば解散総選挙は可能で、政権奪取を狙う野党労働党が解散に賛成することは間違いないので実施の公算は高い。労働党コービン党首は、北アイルランドも共和国に統合すべきという共和制支持者の味方で、DUPのような英国の帰属を主張するユニオリストを敵視してきた。

 このため、DUPとしては総選挙を回避するために4回目の土壇場ではメイ首相の離脱合意案に賛成するという読みもある。DUPが賛成に回れば、残った保守党の造反派のかなりの部分もそれに同調して離脱合意案に可決のチャンスはある、との「勝手読み」だが、そう甘くはあるまい。

 第二の可能性は長期にわたるブレクシットの延期である。EU27か国はメイ首相がEU協定第50条の離脱期限延期を申請すれば認めることを決めている。しかし、条件としては、4月12日以降もさらに延期する合理的理由を説明する必要がある。4月1日にメイ首相の離脱合意案に代わる議会案(indicative vote)を検討する。

 3月27日に議会で8つの代替案を検討してすべて否決されている。その中で過半数に最も近かったのは「関税同盟に永久に加盟し続ける」というソフトブレクシットである。ただ、これだとメイ首相が言明しているように70か国あまりとの個別に貿易協定を結ぶことが不可能になる。おそらく議会で再び過半数を取ることはできないとみられている。

 となると、ブレクシットの長期延期と引き換えに総選挙を実施する、という可能性が高くなってきた。しかし、保守党の党首は辞任を口にしてレームダック化したテリーザ・メイに代わる強硬派であるジョンソン前外相、ラーブ前離脱担当相あたりになるであろう。

 第三の可能性は「合意なき離脱」である。4月12日までのデッドラインを考えると、欧州委員会が声明を出したように、急速にその可能性は高まってきたといえよう。EUの方は、英国の政界の混乱が続くのを眺めてもう1年以上前から「合意なき離脱」に備えてきた国が多い。とはいえ、EUにとっても経済的混乱は避けたいと思っているのも事実で出来れば避けたいのは英国と同じである。

 第四にはEU離脱をキャンセルするために第二回目の国民投票をセットすることである。第一回目の国民投票では、EU離脱に伴う貿易・サービス取引の損失が大きいということが意識されず、移民問題やEU拠出金に対する忌避意識が圧倒的であった。

 EUの関税同盟と単一市場の重要性がかなり明らかになってきたいま、第二回目の国民投票をして離脱そのものを見直すべき、という議論だ。しかし、メイ首相が拒否してきたほか、英国民の間でももう英国社会の分裂をきたすような国民投票はしたくないという思いは強い。

 もう一度整理すると、4月12日までに離脱合意案の再採決が受け入られれば(メイ提案ないし議会のソフトブレクシット案)、5月22日までの延長が認められることになる。再度、否決されれば、長期延長を申請する。その場合、5月の欧州議会選挙に参加することになる。EUから新しい方針を示すことを求められている。この場合、メイ首相の「議会で出来ることにはもう限りがある」(Commons was reaching the limits)との発言から透けて見えるのは解散総選挙を検討し始めている、との観測が高まっている。

最終更新:4/2(火) 13:01
ニュースソクラ

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