ここから本文です

「男脳」と「女脳」の真実

4/6(土) 10:05配信

The Telegraph

【記者:Gina Rippon】
 性別による脳の違いは生まれつきのもので、母親の胎内にいる赤ちゃんでも確認できるとした、ニューヨーク大学医学部発表の研究結果は、「ついに証拠が見つかった」との反応とともに歓迎された──。研究は、成長の過程における胎児の脳内ネットワークの変化を確認することができたと報告する内容だった。

 この証拠が本当に「男脳」と「女脳」の存在を示すものなら、それは大注目の発見となっただろう。しかし、そのようなものは存在しないと私は声を大にして主張したい。この「証拠」の発見に興奮を覚えたすべての人を落胆させてしまうであろうことも重々承知している。

 この分野に長く携わっている神経科学者として、今回発見されたデータセットが興奮に値するものだという点には同意できる。胎児の脳は、社会的・文化的な影響にさらされていない。そこがはっきりしていることから、それは最善の研究対象となり得る。ただ残念だが、今回のケースはこれには当てはまらない。

 それはなぜか? 今回の研究で対象となったのが妊娠25~39週の胎児の脳で、その期間に幅が設けられていたためだ。25週の胎児の脳と39週の胎児の脳では大きな違いがある。研究では、この期間の幅についても考慮してはいるが、それでも比較対象として適正だったのか疑問は残る。

 1800年代初期、女性は金銭的・政治的・社会的に男性より劣ると信じられていた。これを真実と捉え、その理由を探るための研究が行われた。その結果として導き出されたのが、「男性と女性の脳には何かしらの差異があるに違いない」という考えだった。

 そこで、始まったのが男女間の違いを見つけることだった。私はこれを「違い狩り」と呼んでいる。男性群と女性群のタスク処理を比較する調査がいくつも行われ、見つけた違いを報告する形で研究が続けられてきたのだ。しかしそのような研究が明確にしてこなかったのは、社会環境の中で他人と交流し、微調整を経て、脳が変化するという事実だった。研究が前提としていたのは、男女の違いは目に見えるもので、またその違いは生まれつきのものである、ということだったのだ。

 当然、男女には生物学上の違いがあるが、環境が担う付加的な部分(たとえその環境で過ごした最初の数時間であれ)についても私たちは理解しなくてはいけない。

 男女の脳を比較して見つかる違いは、生物学的な違いと経験的な違いのどちらにも関係していると私は考えている。

 私たちが目指すべきは、性別は全く関係ないということなのかもしれない。脳が最初から女性または男性と関連付けられているといった考えや、スキルや才能、社会における役割はあらかじめ決まっているという考えからは距離を置こう。脳は、その持ち主の性別だけでなく、生きてきた人生も反映している。この現実を受け入れるのが早ければ早いほど、私たちはその可能性にさらに気づくことができるようになるだろう。

【翻訳編集】AFPBB News
「テレグラフ」とは:
1855年に創刊された「デーリー・テレグラフ」は英国を代表する朝刊紙で、1994年にはそのオンライン版「テレグラフ」を立ち上げました。 「UK Consumer Website of the Year」、「Digital Publisher of the Year」、「National Newspaper of the Year」、「Columnist of the Year」など、多くの受賞歴があります。

最終更新:4/6(土) 10:05
The Telegraph

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事