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【舛添要一の僭越ですが】”強制”される 「令和祝賀ムード」 空気が支配する国

4/8(月) 14:01配信

ニュースソクラ

新元号の慶事に、あえて物申す

 新元号が「令和」に決まり、日本中がお祭り騒ぎである。慶事であるし、個人的にはよい元号だと思うので嬉しいかぎりであるが、あえて問題点を指摘しておきたい。

 まず、元号制定に関しては安倍内閣の方針が既定のものとなり、いささかの異論も差し挟めないような空気が醸成されたことである。

 たとえば、出典を和書にするということである。6つの原案は、令和(万葉集)、英弘(古事記)、広至(日本書紀、詩経)、久化(中国古典)、万和(文選)、万保(中国古典)と、国書と中国古典が半々である。

 結局は、万葉集が出典の令和に決まり、巻5、梅花の歌32首の序、「初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」から、「令」と「和」の「文字が採用されたと説明された。

 「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわ)らぎ」と、春のよい季節に、風も和らいでいるという意味である。災害の多かった平成の時代の後、平和で穏やかな時代を迎えたいという思いがこめられているようである。

 中国ではなく、日本の古典からは初めてということが大きなセールスポイントとなり、日本人の愛国心を満足させたし、海外からはナショナリズムの宣揚だという批判も寄せられた。安倍首相も日本の国書だということを強調した。

 その点に関連して、「政治から離れた立場」を堅持されている天皇陛下は、新元号決定についても自らの意思を一切外部に示されなかったが、政治の側は興奮気味で露出過剰な印象である。

 平成の元号発表のときと違い、今回は官房長官の説明のみならず、安倍首相自らが談話を発表した。さらに、首相は様々なテレビ番組などのメディアに数多く出演して、新元号の意義について説明している。統一地方選挙中でもあり、天皇の政治利用という批判が出てきても不思議ではない。

 ところが、セールスポイントの日本古典からの引用について、漢文学者から、8世紀に作られた「万葉集」よりも先の6世紀に編まれた中国の詩文集「文選(もんぜん)」にも「仲春令月、時和気清」の句があると指摘された。

 「仲春令月、時和し気清らかなり」と読み下すが、後漢・張衡「帰田賦」・文選巻十五が出典である。このことは、新日本文学大系『萬葉集(一)』の補注にも記されている。

 私も事前に元号の専門家らと議論をしたが、「漢字で書けば、元々は中国から渡来したものなので、必ず源が出てくる」という結論であり、和書か漢籍かに重きを置く必要はないのではないかと考えている。

 どうしても日本の古典からというなら、平仮名で探すしかなくなる。しかし、日本人が漢文や漢詩で書いた作品も数多くあり、西郷隆盛が愛読したという佐藤一斎の「言志録」もそうである。日本語は、漢字、カタカナ、平仮名から成っており、漢字は日本文化の重要な構成要素である。

 その意味で、漢字に拘るのなら、漢籍も和書の区別など意味をなさなくなる。余りに国書を強調するのは、安っぽいナショナリズムである。

 幕末明治維新のとき、西周ら日本人が、科学用語などの欧米の言葉を漢字にしたが、それを中国も輸入して使っている。たとえば、人民、共和国、共産主義、社会主義、革命、科学、哲学、思想、文明などで、実に多数であるが、中国人が自らの国名すらも和製漢字で構成されていることを意識することもなければ、それを批判することもない。

 日本も漢字文明圏の一角を占めているのであり、それは、イギリスもフランスもドイツも、その言語、文化の淵源がラテン語やギリシャ語であることと同じである。

 しかし、このような指摘や批判は、日本のマスコミにはほとんど登場しない。何か言論統制が効いているようで気味が悪い。過度のナショナリズムは意味がない。

 30年前の昭和天皇崩御の前後には、日本国中で歌舞音曲を自粛し、それに従わない者は非国民扱いされ、失業した芸人も出た。今度は、その裏返しで、初の日本古典でめでたいという祝賀ムードに水を差すのは顰蹙を買うことになる。

 書店では万葉集が売り切れになり、九州の太宰府が脚光を浴び、新元号を冠した商品が飛ぶように売れている。マスコミ報道も新元号一色である。しかし、慶事すら強制されるようなムードは、どうして醸成されるのだろうか。

 政府の情報操作の巧みさもあるかもしれないし、日本のマスコミの横並び体質もあるだろうが、これは大衆の自発的意思だとされるだけに、国民にマスゲームを強制する北朝鮮よりも厄介かもしれない。

 日本は、お祭りごとですら異論を許さない「空気の支配」の国であり続けている。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:4/8(月) 14:01
ニュースソクラ

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