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地震発生直後「真偽不明の注意喚起」 あなたは拡散する? 熊本地震で起きた「ジレンマ」、防災ゲームに

4/12(金) 7:02配信

withnews

答えがゴールではない

 くまもとクロスロードの会代表の徳永伸介さんは「答えを出すのがゴールじゃない」と言います。

 「どの問題も、年齢、立場、経験によって見方が違います。答えを出してすっきりするんじゃなくて、色んな意見に触れてモヤモヤしながら帰ってもらうのが理想です」

 徳永さんは消防職員でありながら、防災士や救急救命士の資格も持っています。クロスロードは「ゲーム感覚で楽しく、自分とは違う立場に立って学べる。僕がはじめてクロスロードを体験した時も、年配の人から子どもまで、職業も色んな人が集まって笑顔で参加していました。また、熊本地震後は、経験を吐き出す機会にもなっています」。

「熊本編」にした意味

 今回の33問は、「熊本地震編」ではなく「熊本編」。地震をきっかけに作られましたが、地震だけに限定したものではなく、むしろ被災体験を通して別の問題にもスポットを当てる仕組みになっている問題がいくつもあります。

 「あなたは72歳の農家。中山間地でお米と野菜を作っていたが、地震で緩んだ地盤が崩れ、田植えしたばかりの田んぼに土砂が入ってしまい、今年は稲作をあきらめざるをえない。都心に住む息子が『こっちで同居しないか?』と言ってくれている。あなたは農家をやめますか?」

 この問題を作ったのは研究会のメンバー、熊本大学の田中尚人准教授。これも県内のある集落で実際に起きたことでした。「ジレンマのきっかけは地震だけど、以前からあった農村部の課題が本質にある」と話します。

 「高齢の農家の跡継ぎ問題は地震と関係なく、前からあったこと。それ自体は直接的には災害時のジレンマとは言えないかもしれないが、地震は元々地域にあった課題を加速化させ、深刻化させます。熊本地震は都市部だけでなく農村にも被害をもたらしたので、こうしたジレンマを取り上げたかったんです」

 また、仕事と家庭の両立、子育てを取り巻く環境について考えさせられる問題も加わりました。

 「あなたは自治体職員の夫婦。震度5弱の地震が発生!職員は自主参集しなければならないが、子どもを保育園に預けようにも、登園中止のメールが届いた。パートナーは先に出勤し、両親も遠方で頼れる人も近くにいない……子どもと出勤しますか?」

 これも、実際に自治体職員が経験したこと。子どもを連れたまま出勤し災害対応にあたった人もいれば、同僚に断られてしまった人もいたようです。子どもの安全面も考えると、どちらが正しいか簡単には答えが出ません。

 田中准教授は、この問題があぶりだす別の視点にも触れました。「問題文には当事者の性別が書いていないのに、多くの人が、先に出勤したのが夫で、残ったのが妻だという前提で話し始めることがわかってきました。防災はこれまで男性目線でつくられてきた面もある。無意識の思い込みにも気づかされる仕掛けも隠れているんです」。

 「くまもとクロスロード研究会」では、熊本編をつくるにあたり、「小さな声に耳を傾けること」にこだわり、時間をかけてきました。防災の主役は、意識が高くて発言力の強い人が中心になってきましたが、今回つくられた問題には、普通の人たちの小さなつぶやき、悩みがたくさん含まれています。

 一方で、「被災自治体の町長」のような特殊なポジションのジレンマも登場し、多様な視点に立ってみることができるようになっています。

 「あなたはアフリカからの留学生。日本で初めて地震を経験した。家族とともに大学のグラウンドに避難し、アパートは半壊で引っ越すなど、初めての経験で妻と子どもは疲れてしまっている。妻から『もう帰国したい』と相談された。あなたは帰国しますか?」

 「あなたは保護者。子どもが2泊3日の宿泊研修に行く。学校は携帯電話の所持を認めていないが、本人は持参したいという。緊急連絡用に持たせようか悩んでいる。あなたは携帯電話を持たせますか?」

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最終更新:4/12(金) 7:02
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