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受けた相談1000件以上 慶応野球部出身の「イップス研究家」が語る人生最悪の試合と立ち直り術

4/17(水) 7:00配信

withnews

 「イップス」という言葉をご存じでしょうか。スポーツなどで「今まで何の気なしにできていたことが、何らかの重圧などで、思い通りにできなくなる」状態を指します。野球では、特にキャッチボールで起きることが多いです。当時はつらくても、現在は乗り越えた経験を生かし、「LINE」などでは計千件以上も相談に乗っている谷口智哉さん(24)にイップス体験談を聞きました。(朝日新聞スポーツ部記者・井上翔太)

【動画】イップスになりやすい人の特徴……それって長所じゃね? 谷口さんがYouTubeで解説

「飛んでくるな…」

 神奈川の名門・慶応高校野球部だった谷口さんが、イップスに陥った決定的な「事件」は、高校2年の秋でした。

 神奈川県大会の3回戦。控えの外野手だった谷口さんは、七回の守備からレフトの位置に入りました。

 このときすでに「常に重圧があって、野球をつまらなく感じていた時期」。投げる感覚に「あれっ?」と思うことが多かったようです。守備位置について感じたのは、後ろ向きな思いでした。

 「飛んでくるな……」

 なぜか、そういうときに限って、打球が飛んでくるもの。1死一塁から、相手がフライを打ち上げて、びっくりしたそうです。

 後方への飛球だと思って、背走。しかし振り返ると、思ったほど飛んできていませんでした。
 
 「やばい!」
 
 慌てて前進して、頭から飛び込みましたが、間に合わず、打球は後ろを転々。内野手への返球も暴投となり、ピンチを広げてしまいました。

「サイン見逃したんじゃ…」

 守備が終わり、ベンチに戻ると「準備しとけよ」「切り替えろ」と発破をかけられた谷口さん。すると打席で信頼を取り戻すチャンスが、やってきました。

 1死一塁、サインは「送りバント」。
 チーム内での谷口さんの立場からすると、「成功させて当たり前」と思われる作戦です。

 1球目、ファウル。
 2球目、ファウル。

 追い込まれ、サインが「打て」に変わりました。
 3球目。変化球にバットを合わせ、レフト前ヒット!
 
 一、二塁にチャンスを広げましたが、一塁ベース上の谷口さんは「まだ体が浮いている」と頭が真っ白。
 ぼーっとした感覚だったそうです。ここにまた落とし穴がありました……。

 「ん、サインを見逃したんじゃないか……?」

 走者は塁上にいるとき、ベンチから出されるサインを確認します。まだ緊張がほぐれていない谷口さんは、ベンチを見ていなかったことに、焦りを感じてしまったようです。

 でも、少し冷静に考えると分かりますが、リードしている展開の1死一、二塁で、作戦が繰り出されることは、まずありません。
 ただ、このときの谷口さんに、そこまでの余裕もありませんでした。

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最終更新:4/17(水) 7:00
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